コレステロールの真実 -1

抹殺された真実

この新たな健診の基準範囲は上記の報告書に示されていますが、多数のデータがあり判読しにくいので、私はコレステロール関連だけを取り出し、さらに、女性ついてはシニア世代(65~80歳)のみを記載して、以下のような表を作ってみました。

表の右端にある「学会基準値*」は、従来の人間ドック学会の正常範囲(A判定)のもので、日本動脈硬化学会の基準と同じです。

この「新たな基準」は、従来の学会基準を大幅に緩和するものでした。特に著しいのがLDLで、男性の上限が178、女性の上限が190になっています。一方で、学会基準は一律119なので極端に差があります。

また、中性脂肪(TG:トリグリセライド)の男女差を見て私は驚きました。男性の上限が198に対して、女性の上限は134と低いです。男女ともに年齢差はありません。女性は中性脂肪を皮下脂肪として蓄えるので血液中のTGは少ないのでしょう。一方で、学会基準では男女一律に149です。

もし、この「新たな健診の基準範囲」が「正常範囲」として適用されれば、コレステロールや中性脂肪による患者数が激減します。

実は血圧の基準範囲も大幅に変わっており、従来の人間ドック学会の正常範囲(A判定)の上限が、次のように緩和されました。

収縮期血圧:130mmHg未満→下限88、上限147mmHg
拡張期血圧:85 mmHg未満→下限51、上限94mmHg

この血圧の新基準も、正常範囲として一般に認知されたら高血圧症の患者は激減します。

私自身、もし新基準に従えば30年以上に及ぶ高LDL-Cの数値はすべて基準範囲に入り、血圧もぎりぎりセーフになります。

ワオ~、Great! この新基準によって従来の脂質異常症と高血圧症の患者は激減し多くの日本人は幸せになります。よかった、よかった。

しかし、現実はそんなに甘くはありませんでした。

以下の展開はまるでドラマを見ているようです。皆さんもぜひご一緒にお楽しみください。

2014年4月、「日本人間ドック学会と健保連による150万人のメガスタディー」の中間報告が厚生労働省の記者会見で行われました。多くのマスコミ関係者は一様に驚き、その翌日「日本人間ドック学会、基準範囲を緩和」「健康基準を広げます」などと、新聞・テレビ報道がされました。そして、この話題は瞬く間に全国レベルで広がりました。

この「新たな健診基準」が国民に定着すると、今までのコレステロール・高血圧治療が崩壊します。日本医師会と日本医学会は黙っていられず、2014年5月22日に合同記者会見を行いました。そして上記の研究に対して全否定の見解を述べ、以下の資料のように、政治的な圧力をかけました。

(資料)「新たな健診の基本検査の基準範囲」に対する日本医師会・日本医学会の見解 - 日本医学会

上記資料の最後の部分のみ、以下に引用します(太線筆者)。

今回人間ドック学会が個々の基準値について関係専門学会と事前の十分な検討・協議もないままに唐突に新たな値を公表したことは、多くの国民に誤解を与え、医療現場の混乱を招いている実態に鑑みても、「拙速」と言わざるを得ない。(略)

言うまでもなく、健診の意義は、疾病やそのリスクの早期発見であり、適切な医療等の早期介入により、個々人の健康の維持・増進を図ることにある。

各メディアにおかれては、このことを十分に理解したうえで適切な報道をお願いするとともに、人間ドック学会と健保連におかれては、早急に日本医学会、関係専門学会等との十分かつ慎重な検討を行うなどの対応を求めたい。

まるで圧力団体の声明です。

日本で圧倒的な力を持っている日本医師会と日本医学会から全面否定されては、日本人間ドック学会は生きていけません。結局、以下のようなチラシを同学会は作成して配布することとなりました。

その後の両者のバトルはどうなったのか知りませんが、2016年、日本人間ドック学会から次のような見解が出されました。興味のある方はご覧になってみてください。

日本人間ドック学会の健診基本項目の基準範囲(人間ドック (Ningen Dock) / 31巻 (2016) 4号)

参考までに、この「新たな健診の基準範囲」は、私がコレステロールについて深く学ぶ中で「発見」したものです。一般的には全く認知されておらず、闇に葬られていたように感じます。このように、健康な日本人の健診データ(=真実)は、上位団体によって抹殺されたのです。

2 comments

  1. 吹田スコア1で直近の健診結果のデータで計算したら合計得点は「53」でした。
    健康管理に努力されているfunasanの合計得点「61」より下回っており、同じ年齢の私は嬉しくなりました。
    今後も暴飲暴食はしないようにして適度な有酸素運動、規則正しい生活を心がけて、出来るだけお医者さんのお世話にならなくても良いようにしたいと思います。

  2. Mr.Sさん、吹田スコア53ということは、10年間の冠動脈発症リスク5%なので、少なくとも80歳まで突然の冠動脈の発作は避けられますね。どんどん好きな旅(特にクルーズ)に出かけシニア人生を楽しんで下さい。

    私はちょっと高めの高血圧と、ぶっちぎり高値の悪玉LDLのためスコアを悪くしています。しかし、動脈硬化の真犯人を見つけたことにより、私のLDLは悪玉ではないことが分かりました。その理論によると、私の冠動脈発症リスクは、ほぼゼロになります。

    これが本当に正しいのか分かりませんが、コレステロール関係の病気は何を根拠にするかで診断と治療が大幅に違ってきます。次回のfunasan日記(最終回)の予告でした。

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