人生を変えたコスメル島への旅

会員権に願いを込めて

カリブ海に沈むキリスト像・マリア像との偶然の出会い。これは天の啓示なのか?

この時、私の心に大きな変化がありました。

来年、またここに来るか? ここに来てキリスト様・マリア様に手を合わせて祈るか?

少し未来が見えてきたのです。

宿泊したサボーアホテルはウインダム傘下のタイムシェアリゾートで、ホテル内でリゾート会員権の激しい売り込みがなされていました。私も誘われました。

当時の私は日本のリゾート会員権を複数購入し、早期退職後のリゾートライフを開始したばかりでした。この時も海外リゾート交換RCIを使ってコスメルに来たので、海外リゾートの会員権には興味深々でした。

説明会に参加し、セールス担当からいろいろ資料を見せてもらい、値段の交渉となりました。予想した通り、会員権は高額でした。1週間のタイムシェアの権利ながら、数百万円もします。

価格に驚き拒否し続けていると、セールス担当が年配の上司に変わり、特殊な会員権を出してきました。サボーアホテルしか使えない「VIP Corporate Certificate」という名の会員権です。

その内容は、「10週間の無料宿泊、有効期限10年、年会費なし、価格約20万円(当時のレート)」でした。ツインルームを2人で利用して1週間(7泊)の宿泊代金が、およそ2万円になります。これは安い。特に、年会費なしというのが気に入りました。

これにオールインクルーシブ(飲食フリー)の追加費用が1人1日あたり約55ドル(2人宿泊の1人代金)かかります。1人で泊まる場合はそこが約5割増だといいます。

寒い日本の冬の時期、ここ亜熱帯のコスメルは暖かく、いつもTシャツに短パンで過ごせます。ハイビスカスやブーゲンビリアが咲き乱れ、熱帯の鳥たちがいつも楽しそうに鳴いています。生命の躍動感にあふれ、ここは地上の楽園、まるで天国のようです。

「また、ここに来たいな~」と心から思いました。

がんの再発・転移におびえていた私は、販売員の説明を聞きながら必死に考えました。コスメルは日本から遠い。シュノーケルを楽しむには気力・体力が必要だ。がんで弱った心身では、到底無理だろう。

でも、もし、頑張ってコスメルまで来て「キリスト像・マリア像」に再会出来たら? もし、これを毎年毎年繰り返し、10枚の会員権を使い切ったら?

それは10年間、自分の命をつないだことになる。私にとって有効期限の10年には特別な意味がある!

そう思った私は、その場で販売員にOKを出し、クレジットカードで決済しました。そして、10枚のサイン入り宿泊証明書を手にしたのです。

その夜、カリブ海に沈む夕日を眺めながら、私の心は落ち着いていました。未来が見えてきたのです。

この旅から帰国した私は、3日後にがんセンターに入院し、翌日手術を受けました。2008年3月4日のことでした。

(続き)第8回・がん難民の私が希望を見出せた理由
(前回)第6回・私も、がん患者でした

2 comments

  1. 生きる希望を捨てた時に死が待っていると聞きます。
    旅行先で…体験し、更にご自身で覚悟を決められての手術だから今のfunasanさんがいらっしゃるのですね。生きるという事を考えるきっかけをありがとうございました。

  2. 「人は夢をなくすごとに歳をとる」
    私の好きな言葉です。
    夢を希望に置き換えれば、希望を捨てた先は???

    兄は抗がん剤治療をやりながらも「こんなことやって治るのか?」と常に疑問を持っていました。確信なき治療!希望を未来に託せなかったのですね。そして、生きる希望を捨てて自らホスピスに入りました。

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