人生を変えたコスメル島への旅 – 3

「がん患者よ、旅に出よう!」は、トラベルライターの舟橋栄二さんによる連載です。早期退職でリゾートライフを満喫する日々の裏には、2度の手術を含めた「がん」との闘いがありました。「旅は生きる喜び。その喜びをがんに奪われたくない」
本連載は「旅を通して転移がんを克服した全記録」です。(編集担当:resortboy)

コスメルでの滞在中、私はホテルから近いチャンカナブ海洋公園に遊びに行きました。サンゴ礁に囲まれたコスメル島にあって、ここは急に深くなる岩場。透明度は高く、魚影も濃い。シュノーケルをするには最適の場所です。

シュノーケルを着けて海に入ると、そこはまさに竜宮城でした。大小さまざまな熱帯魚が、まるでパレードのように悠然と泳いでいます。私は嬉しくなって夢中で魚を追いかけました。これは私がその時に撮った水中写真です。

少し沖に移動するだけで海は急に深くなり、海底には白砂が広がっていました。水深5~6メートルくらいになると、ところどころに大きな岩礁(サンゴ礁)があり、魚が群れています。

その時、私は前方に何か人間の形をした物体が見えることに気づきました。

海中のキリスト

近づいてみると、両手を広げた人間の像でした。しかも3メートルはあるかと思える巨体です。それが海に沈んでいる。

不思議に思った私は、海から上がってショップのスタッフに聞いてみました。

私:「海の中に何か人間のような物体を見つけたのですが、あれは何ですか?」
スタッフ:「ジーザス・クライスト(イエス・キリスト)だよ。マリアもいるよ」

私はこの言葉に衝撃を受けました。何と彼はイエス・キリストだったのです。マリアもいるといいます。

私はすぐにシュノーケルを着けて再び海に入りました。そして一直線に人間の影の方に泳ぎ、キリスト像に対面しました。

背をそらし顔を上に向けて両手を大きく広げているキリスト像はガリガリに痩せ、全身に海のコケがついて薄汚れていました。息ができず、ただじっと海底に立っている彼は、苦しそうでした。

キリスト像を見て、自然と涙があふれました。思わず私は海の中で両手を合わせ、そして祈りました。「助けてください」と。

マリア像は少し浅い海底に沈んでいました。キリスト像に比べると1.5メートルくらいと小柄ですが、やはり海のコケに覆われていました。私は両手を合わせ、そして再び祈りました。「助けてください」と。

カリブ海に沈むキリスト像・マリア像との偶然の出会い。これは天の啓示なのか?

この時、私の心に大きな変化がありました。

来年、またここに来るか? ここに来てキリスト様・マリア様に手を合わせて祈るか?

少し未来が見えてきたのです。

(続く)

【次回】第11回・人生を変えたコスメル島への旅 – 4

【前回】第9回・人生を変えたコスメル島への旅 – 2

本連載が単行本(紙の書籍)として刊行されました

本連載は、本サイトに掲載した舟橋栄二さんの記事から、がん闘病に関する回を再配信したものです。時期に関する記載は2022年現在のものです。

(本連載記事一覧)がん患者よ、旅に出よう!
(スペシャル対談)私のリゾートライフの全体マップ
(筆者ホームページ)舟橋栄二「第二の人生を豊かに」

2 comments

  1. funasanさん

    がん闘病記の再放送、読ませていただいております。
    フォートラベルや本ブログの連載、今回の再放送と何度も拝見しておりますが、
    この記事にある「海中のキリスト」のくだり、何度も読み返し、涙すると同時に感銘と
    考えさせられる事多しです。

    私はこれまでガンなど(死にもつながる場合もある三大成人病)を患ったことは
    無いのですが、18年くらい前からずっと原因不明の頸・肩・腕、そして頭部(目の奥のあたりから脳天にかけて)の神経痛に悩まされていて、症状緩和のため6種類から8種類の投薬を受け続けていて、強い鎮痛剤でなんとか平常生活を保っている感じです。

    もうこの神経痛について調べつくしたし、今は痛みとしびれなどと付き合う生活で慣れ、
    投薬を受けている限りにおいて落ち着いていて大丈夫なのですが、アメリカ一人ドライブ旅行をするようになったきっかけの一つではありますが、7年前くらいまでにおいて、痛みを誰かと共有(共感を感じてもらう援軍はいない)できず、一人で苦しみ、うつ病も発生していました。がまんして耐えていたけど、痛いのは痛いし、誰にも分ってもらえず苦しかったです。

    そんな中、時々の、アメリカの大自然ドライブは、気分の落ち込みを支え、時に雄大な、広大な眺望に、一時的であっても痛みを忘れ、気分を高めてくれています。旅行好きで、いろいろ節約的旅行術を知っているので、かなり旅をしてますが、安全かつ快適、安価に続けられています。

    そんな中、私もfunasanさんの「海のキリスト」のような自分では奇跡的と感じる体験がありました。6年前のことですが、既に神経痛は日常ともなり、落ち着いてきていたとはいえ、やはり誰にも理解されない痛みによる、精神の疲労は鬱状態を巣食っており、上述の通り、気分転換を求めて、アメリカドライブ1人旅を行っていた時のことです。

    この時は、ミズーリ州ブランソンという中部の避暑的リゾート地にて、インターバルインターナショナルで交換利用した、マリオットヴァケーションクラブの7日間をフルに利用し、周辺の州をぐるぐるドライブ回りしてました。ブランソンの近くには、アーカンソー州のユーレカスプリングスという、スピリチャルを感じると評判の町があります。

    私は、その神秘的と言われる場所に行きたかったのでなく、その町にて最も古く有名でアメリカの歴史的ホテルに数えられる、クレセントホテル
    https://crescent-hotel.com/
    を見学に行っただけでしたが、到達するには、周りは深い森で道も狭くかなりの坂道を車で登りました。クレセントホテルはもちろん伝統的ホテルで良かったけど、ホテル周辺の森は急坂を徒歩で降りる散策路しかなかったので、ホテルだけ見て帰ろうかと思ったところ、ふと坂の下に、教会風の建物の存在を知ります。

    私は なぜかそこに引き寄せられるように、石段などのあるホテル裏からの狭い通路をたどり歩くと、誰もいないその教会の美しい庭にて、キリストやマリア様に遭遇したのです。
    https://stelizabetheureka.com/
    その教会は、小ぶりですが、遊歩道を下ればきちんと整備され、キリストもマリア様も、苦しそうにされていたわけではないですが、静かに慈悲にあふれていらしゃいました。

    私はキリスト教者でもないのに思わず、手を合わせました。すると、なんとなく、鬱の気持ちは消え、この出会いに感謝・感動するとともに、なんで日本人である私が一人で、はるばるミズーリ州南に行き、そこから地元でなければ知らないであろう(日本人はまず行かない場所)に呼ばれ、マリア様に手を合わせることになったのだろうかと、人生初めての不思議な体験をしたのです。その後、神経痛は治ってはいませんが、病気と付き合うパワーは得ました。気分も楽になりました。

    funasanさんの、ガンの苦しみや海中のマリア様とまではいかない、小さなエピソードですが、以上、私にも、なんらかの御呼ばれがあったように思います。
    こうした、日本から遠く離れた異国の地のリゾートエリアでの出来事は、インパクトありますよね。

    長文失礼しましたが、理屈では説明のつかない世界があることを信じた話を書かせてもらいました。

  2. 驚きで声が出ません。zukisansuさんは国内・海外のリゾート会員権を多数購入し、何度もアメリカを長期間ドライブ旅行なさっています。しかも、たった1人で。自由な時間、豊富な資産と旅の技術、そして「健康」を兼ね備え、理想的なリタイア後の人生を謳歌されていると思っていました。

    しかし、長年、原因不明の神経痛という病に苦しみ、うつ病まで発症していたのですね。知りませんでした。
    「そんな中、時々の、アメリカの大自然ドライブは、気分の落ち込みを支え、時に雄大な、広大な眺望に、一時的であっても痛みを忘れ、気分を高めてくれています。」
    zukisansuさんのこの気持ち、がん患者だった私には本当によく分かります。自宅にいては気分が落ち込む一方です。好きな旅をするだけで気分が高揚します。

    そして、恐らく日本人は誰も行かないであろう深い森の中にひっそりと佇む「クレセントホテル」を訪れ、偶然、小さな教会のキリスト像・マリア像と出会う。そして、祈る。
    「私はキリスト教者でもないのに思わず、手を合わせました。すると、なんとなく、鬱の気持ちは消え、この出会いに感謝・感動するとともに…人生初めての不思議な体験をしたのです。その後、神経痛は治ってはいませんが、病気と付き合うパワーは得ました。気分も楽になりました。」

    私は2度目のがん手術の直前に行ったメキシコ・コスメルの旅がその後の人生を決めました。カリブ海に沈むキリスト像・マリア像に祈り、生きる決意をしました。不安が無くなりました。これは無茶苦茶大きいです。「旅が病を治す」一般性はないですが、この中に真実があるような気がします。「がん患者よ、旅に出よう!」です。皆様も病気や仕事、人間関係、その他、人生で大きな困難に出合ったら、迷わず“旅”に出ましょう。

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