
人生を変えたコスメル島への旅 – 1
本連載は「旅を通して転移がんを克服した全記録」です。(編集担当:resortboy)
リゾートライフやクルーズ旅行が私の「明」の部分だとすると、その裏側では、常にがん患者であるという苦しみがありました。今日からは、首のリンパ節に転移したがん手術直前に行った旅の話です。
この時は本当に落ち込んでいて、「最後の旅になるかな」という思いで旅立ちました。
最後の旅になると覚悟
2008年2月8日、日本からアメリカ経由のロングフライトの後、メキシコはユカタン半島のリゾート地、カンクンに着きました。エアポートホテルに1泊した後、地元のバスに1時間半乗り、カリブ海に面したプラヤ・デル・カルメンのバスターミナルまで来ました。
10分ほど重いスーツケースを引っ張りながら、ビーチ方面に歩いて行きます。その途中にはカラフルな装飾をしたショップやレストラン、カフェがたくさんあり、落ち込んでいた気分も少しは盛り上がってきます。
そして、やっと到着したコスメル島行きフェリーターミナル。はるばる来たぜカリブ海! 熱帯の蒸し暑さと強烈な太陽に出迎えられ、一気に汗が噴き出してきます。
そして目の前はカリビアンブルーの海!
ここからフェリーに乗り、40分ほど波に揺られながらコスメル島に向かいます。船内には、メキシコ人をはじめ中南米系の顔立ちの乗客ばかり。アジア系は私ひとりしかいません。たったひとりで遠くまで来たものです。
心は憂鬱でした。せっかくの海外旅行なのにちっとも楽しくない。こんなことは、はじめてです。
船の中で何度も考えました。父の死、母の死、そして兄の死。家族全員が「がん死」という典型的ながん家系で、私はがんの再発・転移の現実におびえていました。
どんなに考えても先は見えません。堂々巡りです。
しかし、コスメル島に来てみるとすべてが輝いていました。青い空に青い海、浮かぶ白い雲。そして、クリスタルな海水に熱帯魚が群れている。生きる喜びにあふれている。
日本の寒い2月でも、ここコスメルは最低気温が20度、最高気温が30度と高く、初夏の陽気です。しかもこの時期のコスメルは乾期なので、湿気は少なく、日影に入ると実に涼しいのです。
毎日晴天の日が続き、ここは天国か?と思えるくらい快適で、すっかり気に入ってしまいました。
(続く)
【次回】第9回・人生を変えたコスメル島への旅 – 2
【前回】第7回・私も、がん患者でした – 2
本連載が単行本(紙の書籍)として刊行されました
(本連載記事一覧)がん患者よ、旅に出よう!
(スペシャル対談)私のリゾートライフの全体マップ
(筆者ホームページ)舟橋栄二「第二の人生を豊かに」