1946年の預金封鎖と財産税法

このサイトはリゾート会員権やロイヤルティプログラムを使ったホテル利用について幅広く取り上げているため、結果的に、読者コミュニティは富裕層の方が多くを占めています。そうした方は今ごろ、確定申告の最終作業をされている頃かなと思います(さっさと終わらせてしまった方もいらっしゃるとは思いますが…)。

僕は在米の証券会社を通じて投資をしているため、申告書類に「1042-S」という米国での源泉徴収票を使います。これが例年、3月にならないと発行されず、去年は3月9日発行だったのですが、今年は今日現在、発行されていません(やれやれ)。

それで予定していた最終的な申告を今日はできずにいるのですが、そんなこともあって、今日はめずらしく「お金の話」をしたいと思います。テーマは「預金封鎖」と「財産税法」です。

コロナ禍でいわゆる「ショック・ドクトリン」が進み、日本の政治家の動きを見ていると、1946年に行われた預金封鎖や財産税法について学んでおかなければならないと感じています。

ショック・ドクトリンとは、同名の書物の公式サイトによれば、「戦争、津波やハリケーンのような自然災害、政変などの危機につけこんで、あるいはそれを意識的に招いて、人びとが茫然自失から覚める前に、およそ不可能と思われた過激な市場主義経済改革を強行する」ことです。

ショック・ドクトリン (上) – 岩波書店

話が混乱するので現状の分析については稿を改めるとして(ここまででピンと来る方は十分鋭いと思いますので所感をコメントください)、以下では1946年を振り返ってみましょう。

1946年2月17日の毎日新聞の見出しは「インフレ防止の緊急令出づ けふから預金封鎖 一般引出を禁ず」というものであったと、以下の記事が伝えています。

Listening:<毎日新聞1946>「預金封鎖」 国民の財産を侵害 | 毎日新聞

この記事によれば、同日(2月17日)以降、銀行などからの当座の生活資金を超える引き出しが制限されました。旧円は3月2日限りで無効となり、3月3日には新円に切り替わります。

このような預金封鎖を行った政府の目的は、記事の見出しにあるように「インフレ抑制のため」とされていましたが、軍事費で積み上がった国債残高を整理するためでもありました。この債務整理の方法として利用されたのが「財産税」です。

新円切替の3月3日において10万円を超す財産所有者に対して、25〜90%の徴税が行われました。要するに資産の国家による収奪です。このために預金封鎖を行って、国民の財産を先んじて凍結する必要があったわけです。大卒初任給が400~500円だったと言いますから、現在の50分の1程度でしょうか。当時の10万円は現在の5,000万が目安です。

財産税法 – Wikipedia

ところが、当時の新聞報道はこの財産税に好意的だったと、上記の毎日新聞の記事は伝えています。その理由は、財閥解体や華族制度廃止などの民主主義化の一環であったからです。こうした流れにのって、宮家や華族の邸宅が売却や物納を余儀なくされ、プリンスホテルへとつながっていくわけですが、その話もまた今度。

さて、もし、現代において同じようなことが起きるとしたら、どうなるでしょう。昔のように預金封鎖をしなくても、今はマイナンバーで名寄せが可能です。2024年の新紙幣切替を前に、マイナンバーカードの激推し(というか事実上の強制)が行われているのも、関係があるのかもしれません。

政府(金融庁)は「老後に2000万円の資金が必要である」との資料を作ったくらいですから、1人その程度の金額で財産税がかかることはないでしょうね。まぁ、余裕をみて3,000万とでもしましょうか。相続税の基礎控除枠が「3000万+600万×法定相続人の数」ですから、この設定も参考になるかもしれないですね(ブロガーの戯言なので根拠はありませんよ)。

でも、預金で1億円とか持っていたら、逃げられそうもない気がしますね。

話を1946年に戻しますが、この財産税による国家的収奪はインフレ抑制にはまったくならず、上記毎日の記事によれば、1948年末の物価は1945年末比で約30倍というハイパーインフレが起きました。

記事の最後に、当時の株式市場の動きを示して終わります。と言っても、当時、東京証券取引所は1945年8月から1948年1月まで米軍に接収されていました。取引再開は1949年5月で、同年12月からは227銘柄を対象にした平均株価の算出・公表がはじまります。

これが「日経平均株価」に引き継がれるわけですが、戦前や戦後混乱期との連続性はありません。そこを明治大学の研究者グループがデータを集めて1878~1951年における株価データベースを構築し、戦前と戦後の株価インデックスをつなぐという試みが行われました。

それが「三和・岡本日本株価指数」で、そのグラフが以下です。

日本の株式市場の戦前期データベースを構築 140年にわたる歴史的趨勢が明らかに | 明治大学

これを見ると株価はこの戦後の混乱期に10倍程度しか上がっておらず、株式で持っていたとしてもこのハイパーインフレの影響を逃れられたわけではなさそうです。

今日はここまでです。歴史の勉強ですから、決して陰謀論だとか言わないでくださいね。

9 comments

  1. resortboyさま

    株価絡みで…
    銀行株、そしてそれ以外もどうなるのでしょうね。
    インバウンドが復活して景気も良くなっていくのかと思いきや、心配ですが、なんとか持ち直すのでしょうか?

    インバウンドと言えば、グラフから分かる日本の30年来のデフレは困ったものですが、観光大国になれると良いのかとおもいました。

  2. 会員権検討中☆さん、コメントありがとうございます。

    僕は観光地に住んでいるのですが、すでに外国人の数がすごいことになっています。これで中国からの流入があれば、大フィーバーではないでしょうか。外国人のいない数年間を過ごしてきたので、急速な変化にかなり違和感があります(なにしろ毎日の生活のことなので)。

    別のところで話題になっている東京のホテルの価格高騰も同じ理由ですが、これを機会にホテル産業の就労環境を立て直して高額な給与を支払える人気業界にできなければ、未来は暗いです。賃上げする体力がなければ、他社に人手を取られてしまいますから、いくらお客さんがいても倒産してしまいます。

    2023年は「物価高」「人手不足倒産」「金融不安」で混乱があると見ていますので、こうした経済関連の記事も、たまには書ければと思います。気に入っていただけましたら、何かコメントを残してください。

  3. resortboyさま

    お返事ありがとうございます。

    強烈な円安は日本の将来が怖くなりましたが、少し持ち直したようで一安心です。ですが、金融不安の再燃が怖い怖い。リーマンショックやブラックマンデーの再来がないことを祈ってます。でも、暴落してRT株も下がれば喜んで買うかも?

    ホテル業界の立て直しについては、この際、観光地のホテルはガンガン値上げして人材確保と人材育成に力を入れてもらい、「お・も・て・な・し」ができて、英語力のあるスタッフをしっかり育ててもらいましょう。物の輸出だけではなく、コトで外貨を稼げるように。ホテルも箱だけではなく人で客を呼べるように。
    その為には何よりもまず、先に給与を上げることでしょうね。
    でも、観光地に行きたい日本人の為に、日本語・円建てのサイトには格安プランを残して欲しい。
    スイートや広めの部屋は一泊数千$とかに設定してお金を落としてもらい、小さい部屋はコロナ前と同レベルの1〜2万¥の価格設定をしてもらう。
    かつて、物価の安い国々ではこれに類する二重価格があったように記憶しています。ビッグマック指数同様、日本が経済力では下から数えたほうが早いと言われてるようで辛いですが。

  4. ご無沙汰してます。

    こちらでこの方面の記事が投稿されたことに、多少の驚きをもちつつ読ませて頂きました。

    1/3で済んだと考えるか、1/3になってしまったと考えるかは難しいですが、
    インフレに強いと言われる株式も大きな影響があることが、
    数字で示して頂けるとよく分かりますね。ありがとうございます。

    さて、具体的に何が起きるかについては、他のオプションもあり得るとは思っていますが、
    私も、今年から来年、再来年頃までを目途に大きな動きがありそうだと考え、
    一昨年位から多少ではありますが備えもしてきました。

    またちょうど昨日、G7で暗号資産を規制推進するとの記事もありました。
    こちらも一連の流れかと思います。

    今後も歴史の講義を楽しみにしています。

  5.  resortboyさん、皆さんこんにちは。
     resortboyさんが、こちらでこの記事を書かれたことに驚きです。
    大日本帝国憲法のもと、敗戦後のGHQ占領下で実施されたことが、高度に金融経済が進んだ現在に起きるかどうか、私は肯定も否定もできません。
     私も多少の備えはしているつもりですが、そもそも何をどうすれば備えになるのか、よくわかりません。
     新紙幣切替の時期から見て、マイナンバーカードと預貯金口座とのひも付けが、進んでいない気もします。

  6. のりパパさん、mikuroさん、コメントありがとうございます。「驚き」とおっしゃっているのは、何かピンと来た、ということでしょうかね。

    富裕層の中にはすでに日本を逃げ出している人も出はじめているようですね。出国税は暗号資産は対象外だし、日本は非居住者は納税義務がありませんので、ステーブルコインに資産を移して脱出と。

    引き続きウォッチします。

    お金の話も大事ですが、また有事に対する備えも必要かと思っています。今日、28日のニュースだけでも、各方面から圧力がかかっていることが垣間見れます。

    ロシア 日本海で対艦巡航ミサイル「モスキート」発射演習実施と発表 | NHK | ロシア

    河野氏「台湾有事非常に危険」 群馬「正論」懇話会詳報 – 産経ニュース

    とりあえず、僕は食料の備蓄をしています。陰謀論だとか言わないでくださいね。リゾートの話をしている場合じゃないのかもしれませんよ。

  7. 返信ありがとうございます。
    実は私もサバ缶(その他諸々も)備蓄しており、思わず吹き出しそうになりました。

    ところで味噌煮はともかく、水煮サバ缶の利用法はどうされてますか?

    私のオススメは、汁はラーメンの出汁に。
    https://youtu.be/Y3B_6bDw8DU

    身は主に、ペペロンチーノ風に、ニンニクオイルと唐辛子で炒めて酒のツマミにしています。

    コロナ禍は、私にとっては料理スキルの向上という+の側面もありました。

    こんな情報の共有も面白いですね。

  8. のりパパさん、お仲間感ありますねww 水煮はパカッと缶を開けて、普通にそのまま食べています。缶汁は飲んじゃうかも(笑)。

    食料はまぁ順番に食べればいいのですが、有事に備えて電源の確保もしないといけないなぁ、と思っています。タワマン民なので何かあったら基本、外に出られません。低消費電力で稼働する調理器具は買いました。

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