resortboyが主催する勉強会(オフ会)から、「キャッシュフロー計算書を読んでみよう」のライブ講義、2回めをお送りします。自分がよく知っている会社のIR資料を読んで財務諸表の読み方をマスターし、株式投資などに役立てる、というアプローチはなかなか有効な学びであると思います。そこで、エクシブやベイコート倶楽部を運営しているリゾートトラストの2019年3月期のキャッシュフロー計算書を読むことで、汎用的な投資スキルをマスターしちゃおう!という意欲的な企画です(笑)。
前回の記事はこちら:キャッシュフロー計算書を読んでみよう -1 | resortboy’s blog
resortboy(以下R):では、もうちょっと掘り下げていきたいと思います。
(データ出典:リゾートトラスト2019年3月期決算短信。以下同じ)
資料に営業活動のキャッシュフローの説明が3~4行ぐらい書いてあります。資料の2枚目に明細がありますが、営業活動のキャッシュフローが今年はうんと伸びてるんですね。これ、何で伸びてるのかっていうのは、もう皆さんお分かりだと思うんですけれど、答え合わせ的にやってみましょうか。
ではMさん、今年の営業キャッシュフローがバーンと拡大している原因について、ご指摘いただけますか。
Mさん(以下M):リゾートトラスト社のこの説明ではですね、「たな卸資産の増減額の増加」とあります。私はリゾートトラスト社の貸借対照表を見ていないので、たな卸資産に何が入っているかわからないのですが、販売用仕掛不動産がもしかしたら棚卸資産に入っているのかもしれない。
R:ラグーナベイコート倶楽部の開業に伴う売上を計上して、キャッシュとして収益がドーンと認識されたっていうことですよね。
(画像出典:リゾートトラスト2018年コーポレートレポート)
M:このキャッシュフロー計算書は、多分、間接法という方法で作ってあると思います。
キャッシュフロー計算書の作り方には、直接法と間接法がありまして、直接法というのは、お小遣い帳をきちんと付けているようなものです。しかし企業がそれを年間ずっと付けるのは大変なものでして、結局は貸借対照表と損益計算書から、計算技術的にキャッシュフロー計算書を作ったりします。それが一般的で、間接法というものです。
それを作る際の技術的な項目がこの「営業活動によるキャッシュフロー」の各項目に当たるので、リゾートトラスト社の説明にも「この項目がこうだからこうでしょう」としか書いていなくて、本当の中身のことは書かれていません。
R:例えばラグーナベイコート倶楽部の開業によって、などと具体的に書いてくれればいいのですけれどね。この計算書の中身は、証券アナリストのような人がもっと突っ込んで、総合的に分析しないとわからないわけですね。ともあれ、開業もありましたし、「本業で儲かった」という風に理解して先に進みましょう。
次の投資活動のところですが、今期は前期に比べると、投資活動は抑えめになっているようですね。これは固定資産の取得の支出が減った?
M:そうですね。2018年の末の有形固定資産の取得の支出は230億くらいあったんですが、2019年3月期では160億と70億くらい減っています。それが最大の要因になっています。有形固定資産なので、土地、建物あとは高級備品などです。
R:新規開発への資産取得に当たるものが前期より今期は少なかったということで、それは今、ちょうど開発がスローダウンしている時ですから、理由もよくわかりますね。
じゃあ最後の財務活動のところを見ていきたいと思います。
M:財務活動によるキャッシュフローは、去年2018年3月期は91億円のキャッシュアウトだったのが、2019年3月期は231億円とかなり増えていますけれど、これの最大の要因は短期借入金と長期借入金の返済です。
長期借入金は2018年3月期は50億の返済だったのが、2019年3月期は194億の返済です。
R:それは今期、開業案件で売り上げが立って返す余裕ができたと。
M:そうですね。もともと営業活動によるキャッシュフローが80億くらい増えていますから。
R:その影響で返済額が連動して増えているということですね。
M:ええ、投資も少なかったので。
R:といった感じで、今、リゾートトラスト社のキャッシュフロー計算書を簡単に読んでみました。たぶんこれくらい読めるとですね、株式投資をしている人の上位1%ぐらいのエリート層にこの会場の方々は到達したのではないかと思うんですが、どうでしょうか?
駆け足でキャッシュフロー計算書を眺めてみましたけど、Mさんがご覧になってなにか感じられることありますでしょうか。
M:資金はきちんと健全に回っているな、っていうのは思いますね。
R:まさにそれで、打ち合わせで「あんまり面白くないんだよね」っていう話があったぐらい、まともだということだと思います。絵に描いたようにきれいに説明できるものですね。
ちゃんと開業があってお金が生まれて、その範囲で借金を返して、さらに余った資金で固定資産の取得もして次に備えている。ただしそれは、在庫が多いのでスローダウンしている、というようなことが、このキャッシュ・フロー計算書からも読み取ることができました。
(この項おわり)
PS. 冒頭の写真は前回の記事と同様、開催前に打ち合わせを行っていたホテル、プルマン東京田町の入口部分です。