ホテルレストランはなぜ夕食をあきらめたのか

このサイトを隅から隅まで読んでいる方は、僕がおしゃべりが好きで、しかも、ホテルのラウンジまたはそれっぽいレストランで、だらだらと時間を過ごすのが好きだ、ということをご存知だと思います。

例えば、それは以下のような記事を生み出す原動力となっています。

style kitchen@ニッコースタイル名古屋

(今読むと、無駄に長いね…)

おひとりさまでノマドワーカーとしての性格を持つ僕は、こうした、あまり知られていない場所で、ひとりで過ごすのも好きです。

コロナ禍後のニッポン没落の中、外資系ホテルでのラウンジライフをあきらめた僕は、このような店を開拓するのに日々、謎の精進を重ねております。しかし、あまり人に知られたくないということもあり、そのような話をサイトで書いていません(ずるいね)。

最先端手法の弱点

数年前、学者になりたかったときに、研究会でホテル経営者の方に直接取材をする機会があって知ったことです。

現代のホテル経営においては、オールデイで開けておかなければならないフロントサービスと料飲を合体させて、そこにマルチファンクションのスタッフを置く、という考え方があります。スタッフはレストランもやればチェックインも担当します。そしてその料飲はそれぞれの土地の特徴を活かしてホテルの顔となり、チェーン経営に変化を付けます。

そんな手法が、定番の1つとしてあります。

それは数年前から都市圏や大観光地のホテルで、もう大ブームなわけですが、残念なことに、数年経ってこの手法には欠点があることがわかってきました。それは、料飲をテナントではなく、直営にしなければならない、ということでした。

(何気にここは、ホテル経営最前線をお伝えしていますね)

ホテルレストランが夕食をやめた

いまFANBOXの方では、積極的に「ホテル人材」というテーマで連載をしています。多面的な切り口でデータをお示しして、特に、地方のリゾートホテルにおける苦しい状況を明らかにしています。

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ちょうどその連載の最中に、僕がオキニの横浜のホテルレストランに行ったんですが、なんとクローズしているじゃありませんか。

そのレストランとは、「横浜 東急REIホテル」の「ビストロチャイナ ENCORE」です。

レストラン | 新高島駅から徒歩2分 横浜 東急REIホテル【公式】

アンコールと読みます。それは隣接するコンサート会場「Zepp Yokohama」での余韻を、「遠征」をしに来たホテルゲストがお酒を楽しみなら味わう、そんな意味も込められていたと思います。

KT Zepp Yokohama | Zeppホールネットワーク

食の東急ホテルズをうたい

このホテルは、以下の記事でちょっとだけ紹介したことがあります。

高城れに「30祭」記念の「横浜東急RENIホテル」

ビルの下の階がオフィスで、上側がホテルという、都会によくあるビルインタイプのアッパー系ビジネスホテルです。東急ブランドなので、入り込みは安定しているように見えます。開業はコロナ禍の真っ只中、2020年6月でした。

レストランのうたい文句は「食の東急ホテルズの洋食と横浜の特色である中華をアレンジした新感覚のカジュアルレストラン、ビストロチャイナ「ENCORE」」というもので、まさにその通りだと思いますし、その背景には上記の「最先端手法」に乗った考えがありました。

ビルに入ってエレベーターに乗り、ロビーフロアで降りるとまずフロントがあります。ここにはちょっとしたコンビニ的なスペースがあり、カフェ機能もあります(ローソンのマチカフェみたいなものですが)。

その奥にはコワーキングスペース風のラウンジ部分があり、フロントで買ったカフェの座席として利用できます。もちろんWiFiも電源もあります。実は、以下の記事の冒頭の写真はこのホテルのラウンジ部分です。窓際にはソファ席もあります。なお、現在は透明パーテーションはありません。

ワーケーション普及のための僕のアイデア

そしてその奥に連続してレストラン、ENCOREがあります。

ディナー営業が中止に

このENCOREでは、2024年4月からディナー営業が取りやめになりました。ニッコースタイルの記事で説明したのと同様に、ここはフロントから連続したスペースとして多機能に計画されており、催事やイベントにも利用されます。そのため、臨時にここを貸し切りで利用することはディナータイムでもできるのですが、一般レストランとしてのディナー機能は失われました。

ここがどんな感じだったのかは、レストラン予約サイトのレビューを読むとよくわかります。評価は高い方です(「遠い」とか言って低評価を付けている人がいますが、それはレストランのせいではありません)。

クチコミ - ビストロチャイナ アンコール (Bistro China ENCORE) - 横浜東急REIホテル/洋食・中国料理

みなとみらいにできた先端的なビジネスホテルの中に、唯一のレストランとして企画されたこのENCOREは、朝食ブッフェ会場、オフィスからのランチ需要、夜は夜景デートや会食の場としてマルチファンクションに計画され、実際にそのように利用されてきました。しかし、急速な人手不足の影響を受け、ディナーを諦めざるをえなくなりました。

テナントでなく直営なので、むしろ人手不足の影響を受けやすかったのは皮肉でした。現在、もっとも安定的にレストランを営業できているのは、テナントと組んでチェーンレストランを入れているホテルとなりました。JR系のホテルメッツや、ダイワロイネットのやり方が正しかったのか…。

それは、ここがビジネスホテルである以上、朝食を最優先に守らなければならなかったからです。朝食のないビジネスホテルはあり得ません。

リゾートホテルでは逆のことが起きる

結果、3,500円の安いチリワインから18,000円のシャンパンまでをそろえた「ちゃんとした料理も出るワインバー」的なディナーレストランは消え、提供されることのないワインリストだけが残りました。ここで昼間からワインを飲む人はいません(ここにいるけど🤣)。

ワインリスト | 新高島駅から徒歩2分 横浜 東急REIホテル【公式】

実はこれとさかさまのことが、リゾートホテルで起きています。リゾートホテルでは反対に、夜のレストラン営業をやめることができないのです。だから、朝は手を抜いて作り置きや業務用既製品主体のブッフェにするしかありません。

夜と朝に同じ料理人が働く、というようなことは、現代のホテル経営では過酷で許されないこと、と見なされるようになってきているのではないでしょうか。エクシブで食事をしていると、夜に挨拶した料理長が朝にいたりもするけど、あれは大丈夫なのかな…。

ある会員制リゾートホテルでは、朝食をブッフェに統一しようと「働き方改革」を進めましたが、オーナーやゲストが猛反発。春休みの繁忙期の後にはお膳出しの朝食が復活しました。

都会の一等地のホテルですらこのようなことが起きているのですから、ド田舎のリゾートホテルで「夜も朝も」最高の食事を提供する、ということは、生やさしいことではなく、まさに過酷なチャレンジであると思います。

ぜひ、FANBOXの連載も併せてお読みください。ここまで読んでくれたあなたなら、面白さは保証します。

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