激震だったマリオットとSPGの合併 – スペシャル対談 舟橋栄二さん(9)

funasanことトラベルライターの舟橋栄二さんをお迎えしてのスペシャル対談の第9回目をお届けします。今回は、長年の憧れだったマリオットの上級ステータスを得たfunasanを、マリオットとSPGの合併という激震が襲います。それによって起こった変化とは。

(初回の記事はこちら)インパクトがあったエクシブとの出会い
(第2回の記事はこちら)エクシブの魅力は「安さ」だった
(第3回の記事はこちら)「世代交代」でエクシブを活かす
(第4回の記事はこちら)リゾート会員権の破綻がもたらしたユーザー志向
(第5回の記事はこちら)高級化とサービスカットのはざまで
(第6回の記事はこちら)リゾート会員権のいちばん得する使い方
(第7回の記事はこちら)エクシブ変化の裏でホテル国際競争が起きた
(第8回の記事はこちら)「海外修行」を経てマリオットを別荘に

funasan(以下F):マリオットがSPGを買収したんですが、マリオットグループの会員制度とSPGの会員制度はだいぶギャップがあるんです。けれど買収しちゃったもんだから、これが強引だったんですけれども、各ステータスを一致させようと。

resortboy(以下R):双方のステータスを強引にリンクさせたということがありましたね。

(関連)マリオットとスターウッドのリワード統合がはじまった | resortboy's blog – ホテルの会員制度を楽しむサイト

F:そうです。だから結局、マリオットプラチナになったので、同時にインターネット(の手続き)で、即、私はSPGのプラチナになったんです。

SPG、これはもう、実はマリオットよりもっといいんですよ。

R:いいっていうのはどういうところが。

F:それはね、ホテルのグレードがいいんですよ。ウェスティン、シェラトン、ル・メリディアン、セントレジスといった、グレードの高いホテルグループがたくさんあって、非常に興味がある。

もう1つSPGの素晴らしいことは、SPGもゴールドメンバーがあるんですけど、ゴールドメンバーはラウンジへのアクセスが不可なんですね。ここに大きなバリアがあります。プラチナでなければラウンジアクセスができない。プラチナのステータスが非常に高い。

(注:2018年8月18日からマリオットリワードはSPGと統合してステータスとベネフィットの変更が行われています。対談はこの統合前に行われたため、マリオットリワードとSPGのベネフィットがそれぞれ異なった状況についての対話となっていることをご了承ください。詳しくは前回の記事をご参照ください)

一番大きな違いは、SPGのプラチナの規約に書いてあるんですけれども、プラチナメンバーは「当日の空き状況によって、スイートを含めて最上級の部屋にアップグレードします」と書いてあるんです。ところがマリオットはそれを書いていない。

R:つまりSPGのプラチナを持っていれば、満室でもない限り、スイートに、もっと安い部屋のレートで…

F:「最低限」のレートで。

R:泊まることが可能である。つまり、何段階も飛び越してのアップグレードが…

F:「最低」から「最高」まで(笑)。

R:SPGプラチナの場合はそういうことが可能だということですね。

(注:統合後の現在のマリオットリワードにおいては、プラチナ(年間50泊)以上のステータスにおいて「一部スイートを含む」アップグレードが行われることになっています)

例えばヒルトンなんかだと、僕はヒルトンのステータスはゴールドですけれど、ゴールドだと「プリファードルームへのアップグレード」って書いてあって、それは日本語としては「1段階上」という風に解釈されています。今はこれが統一的に行われるようになっていて、例えば一番下のレートで予約したら、ラウンジアクセスのあるエグゼクティブまで上がらない、ということが多いと思うんですね。

だけどSPGプラチナの場合は、スイートも含めて空いていればアップグレードしてくれて、かつ、ラウンジアクセスも付いている。まあ要するに、一番安い部屋で泊まって、最高のおもてなしを受けられるんだと、そういうことですよね。

F:それが規約にうたってあるんです。ところがマリオットは、各ホテルのローカルルール、ローカルなホテルのポリシーで「上げたろか」ということなんですよね。

それで、実はここに、クレジットカードが非常に大きな影響があって。SPGアメックスゴールドカード。

R:大変人気がある。

F:これがね、非常に迷惑なんです。

R:どういうことですか、迷惑というのは。(注:正式名称は「スターウッド プリファード ゲスト アメリカン ・エキスプレス・カード」)

F:もうむちゃくちゃ迷惑で、私はもうカチンときまして。なぜかというと、マリオットがSPGを買収して、両方のステータスをマッチさせたことによって、あのSPGゴールドカードを持つだけで、SPGゴールド=マリオットコールドなんです。

R:あぁ、わかりました。つまり、SPGのアメックスカードを持っていると、あれ、会費は3万1000円ですか、それくらいのわずかな投資で、SPGとマリオットは強引にステータスをマッチさせたので、舟橋さんがあれほど憧れて、50泊の壁をずっと何年も感じていたマリオットゴールドに、3万円ちょっとでなれてしまう…。

F:そんなのね、ありえない。それは、ふざけるなという(笑)。

R:もう憤懣やるかたない(笑)。

F:結局、名古屋マリオットもそうなんですけれども、どんどん増えてきたんですよ、エクゼクティブラウンジ利用者が。

R:SPGからマリオットへのステータスマッチであれば、SPGでゴールドになれば、(マリオットの)ラウンジが使えるから、それが全体の質の低下につながったし…

F:そうそう。

R:もしかしたら、それによって値段も上がっているかもしれない。

F:いや値段も上がりましたよね。名古屋マリオットなんてそんなに人気のある場所じゃなかったんです。今は中国のインバウンドもあるし、そういうSPGからの「乱入」もあると思うんですが、本当に名古屋マリオットの価格が上がってきて、今まで本当に2万円を切った値段で泊まっていたのが、どんどん上がっていっちゃったんですよね。

ところがSPGは、確実にゴールドとプラチナに一線があるので、(ラウンジに)入ってこれない。したがって、SPGのエグゼクティブラウンジは、いつ行っても静か。

R:つまり、SPGのアメックスカードを作っても、簡単にはプラチナにはなれない。だから、SPGのラウンジは一定の質が保たれているし、プラチナを目指す価値もまさにそこにあると、そういうことですね。

F:でも、マリオットもSPGも、そのステータスは1年きりですので、それを維持するためには、その条件を、毎年毎年クリアしなきゃならないと。それで、昨年(2017年)の私は努力したんです。

これもね、今(2018年)、制度の歪みなんですが、マリオットはプラチナを維持するためには年間75泊必要であると。ところがSPGは、プラチナ維持のためには、25ステイか50泊なんですよね。プラチナですよ。

ここでね、日本人はピンとこないんですけど、ステイと泊が別なんですけど、ちょっと説明しますね。

例えば、1週間7連泊、チェックインして7泊ずーっと連泊してチェックアウトしたら、それは7泊なんですけど、1ステイとして数えられてしまう。アメリカの場合は、会議などで連泊するのはエクゼクティブなんか普通です。だいたい仕事で使いますので、毎日ホテルを変えることはありえないです。だからそういう意味で、ステイと泊を分けているんです。

で、プラチナ獲得のためには、25ステイか50泊。こちらはプラチナのステータスが欲しいわけだから、「毎日」ホテルを変えれば、25ステイ=25泊でオッケーと。

R:そういうことですよね。例えば、同じ都市にSPGのホテルが2つあれば、Aというホテル、Bというホテルというふうに交互に泊まることによって、25泊をして25ステイを達成するということができる。

F:そういうことです。でまぁ、年間25泊だったら、そんなに無理じゃないんですよね、私の場合は。

R:例えば1週間4回やれば達成という感じですね。

F:バンコクとかクアラルンプールっていうのは本当に素晴らしいホテルが、SPG系だけでも、マリオットやルネッサンスは関係なくても、もうシェラトン、ウェスティン、ル・メリディアン…いっぱいあります。

それを適当にピックアップして毎日変えていけば、そんなに無理はないということで、去年(2017年)は本当に25ステイを達成したんですね。それでSPGプラチナをキープしたんです。

R:それによってマリオットの方も最上級を維持したと。

F:マリオットは使ってません全然。もう使う余裕がないので。

ところが、さらに、まあやっぱりアメリカのビジネスっていうのはすごくて、「ステータスマッチ」っていうのがあるんですよね。

R:ヒルトンですね(笑)。

(続き:ヒルトンに広がる「驚くべき」世界 – スペシャル対談 舟橋栄二さん(10) | resortboy's blog – ホテルの会員制度を楽しむサイト

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