都市の夢と地方の現実が、静かにずれはじめた

いま、東急ハーヴェストクラブのホームページを開くと、でかでかと「レストランメニューリニューアルに伴うご案内」と題する告知が、随所に表示されます。「そんなに大きな声で言わなくてもいいよ」と僕などは思いますが、それほど大事なことだと東急は思っているのでしょう。

さて、僕は昨年、以下のような記事を書き、東急に対する「勝利宣言」みたいなことを行いました。

ガラ権は東京と接続されて生き残る

しかし、リゾートトラストの昨年来のしぶとさ(福利厚生プラン連発によるオールド施設下支え)を見て、記事からおよそ1年経った今、軌道修正すべき部分を感じています。

東京人の期待

僕が昨年語った東急ハーヴェストクラブの強みは、東京の価値観(資産感覚)と主要リゾート地を結びつけた点にある、という見方でした。その結果、「あの東急」においても、「お食事(レストラン)」が強烈に重要になってきていたという事実を、会員ではない僕は見逃していたのでしょう。

以下は、2025年4月のハーヴェストクラブの会報誌の目次です。

この会報は、表紙と連動した巻頭特集がまず冒頭に来ます。この回は那須。6ページの巻頭特集の次に来るのは、10ページから17ページまでの「お料理の話題」です。

この章立てがいつからはじまったのかは調べていませんが、たまにこの会報をみる自分には、「ずいぶん東急も芸風が変わったな」と感じさせられるものがありました。

そこに今回の「レストランメニューリニューアルに伴うご案内」です。ベクトルはどちらに向いたでしょうか? 僕は純粋に「値上げ」だと感じていました。東京人の期待に応えて、一気に豪華さの階段を上るのではないかと。

でも、違ったようです。

今回の記事は、東京人の期待と、地方の現場運営の間に、小さくない「ずれ」がのぞくようになったという、リアルタイムの物語です。

実は縮小

上記の通り、東急ハーヴェストクラブは2026年4月からレストランのグランドメニューをリニューアルすると全体告知したわけですが、新しい会報誌が届いた今の時点でも、その全体像はぼやっとしています。

各ホテルが「新コンセプト」を掲げると案内していますね。この表現は前向きなものの、現実的には大幅なコースメニューの縮小を指すものと、僕は理解しています。

昨年の東急のイケイケムードの裏で、同社(運営の東急リゾーツ&ステイ)はすでに宿泊・観光業の人手不足、とくに調理人材の不足を背景に海外人材の受け入れを進めることを発表していました。

宿泊・観光業における人手不足に向けた取組み 東急リゾーツ&ステイ 特定技能海外人材の大型受け入れ開始 | 東急不動産株式会社のプレスリリース

こちらの2024年の報道発表では「特に調理人材の人手不足傾向が課題」と記されており、今回のレストラン体制総見直しの背後に、こうした供給側の制約があることは間違いありません。

鬼怒川

具体的に見てみます。僕はそんなに東急ハーヴェストクラブを使いませんので、リゾートトラストのサンクチュアリコート日光にほど近い、東急ハーヴェストクラブ鬼怒川を例に取ります。

実はこの鬼怒川では、2023年5月にレストランを大リニューアルしています。こちらは10年くらい前のメニューです。ブッフェは別として、コースは9種類もありました。

昔は鬼怒川のレストランは名目上3つか4つあったと思いますが、これが今は、ブッフェダイニング「CASIKA-川岸果-」と、和洋折衷のコースを出すフルサービスのレストラン「MOMIJI-紅葉-」の2つになっています。これは隣にVIALA鬼怒川渓翠ができて、新しいレストランが増えたことも影響しているでしょうね。

そして3月のMOMIJIのメニューは以下。和洋折衷の中心軸を和食と洋食とに振り分けた全4コースです。値段は割と最近に値上がりしていますが、今回は値上げの話題は省きましょう。

4月からはこれが以下の2つに集約されます。改装からまだそれほど時間が経っていない段階でのこの変化は、地方のリゾートホテルをめぐる急な環境変化を感じさせます。

消えた料理特集

会報誌の誌面の変化も、同じ方向を示していました。

上に示した2025年4月号の会報誌目次では、巻頭特集の後に「Grazie Mille」「レストランのおすすめ。季節を味わう旬のひと皿」「美食を愉しむホテルステイ」と、ホテルにおけるグルメの楽しみを扱う記事が並び、その後に会報誌の本丸と言える施設ごとの案内である「HOTEL INFORMATION」が置かれていました。

それが最新号ではこうなっています。

最新の2026年4月号では、巻頭特集の次にリモートワークの見開き記事が入り、その後すぐに「HOTEL INFORMATION」が現れています。

料理を大きく語るページがごっそりと消えています。

エステの閉店

環境変化はレストランだけではないでしょう。東急ハーヴェストクラブ浜名湖では、2026年2月にエステルームの休業が告知され、今週いっぱいで営業を終了します。3月15日以降は「エステルームスタッフ諸事情により」休業となり、再開時期は未定とされています。これは実質的には「閉店」ではないかと心配になります。

レストランだけでなく、滞在価値を支えてきた付帯サービスでも、人材確保の難しさがリゾートホテル運営の継続性に影を落としはじめています。

東急ハーヴェストクラブの強さがすぐに色あせるわけではないでしょう。しかし、東京と「接続」して価格がインフレ状態にある今、期待が先に伸びてしまった部分はないでしょうか。

その期待を受け止める地方のサービス供給能力は、そのインフレによる高揚感とはまた別の論理で動くものでしょう。

レストラン全体見直しの宣言とメニュー統合、会報の構成変化、エステ休業。これは派手な失速ではありませんが、都市の夢と地方の現実が、静かにずれ始めたことを示しているように感じました。

僕は東急ハーヴェストクラブの会員ではありませんので、この見立てが大きく外している可能性もあります。ぜひ、会員の方のコメントをいただき、この記事のテーマである、昨今のイケイケ感と現場の温度差について、本当のところを教えていただければと思っています。

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