セラヴィリゾート泉郷、清里と鳥羽

マイステイズ・ホテル・マネジメントの傘下に入ったセラヴィリゾート泉郷についてのシリーズ。最終回は清里と鳥羽です。これらホテルには「わんわんパラダイス」とか「AMBIENT」のような統一ブランドが付いておらず、独立した固有のホテル名で営業しています。つまりはそれに足る、高級ラインであるという位置づけです。

ホテルアルティア鳥羽 72室

このホテルについては、ガラ権連載で詳報していますので、そちらをご覧ください。旧セラヴィが旧 泉郷を子会社化する(2003年のこと)ずっと前から、元々のセラヴィが運営を手掛けていた、セラヴィリゾート泉郷の「もう一方の源流」となるホテルです。

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セラヴィの最初の経営者と、アルティア鳥羽を作った地上社の経営者が友人であったのが、運営受託の理由と聞きます。その運営は1994年にさかのぼり、旧セラヴィが旧セラヴィリゾートを設立したのが1994年2月でしたので、その大元はこのホテルの運営のためであったと思われます。

清里高原ホテル 53室

このホテルについては、少しだけ思い出も含めて、この機会に書いておこうと思います。

清里高原ホテルは、旧セラヴィが旧 泉郷を子会社化するのと同時期に、旧セラヴィ側で取得されたホテルです。旧セラヴィ傘下のホテルとして「清里高原ホテル」の名で開業するのが2004年4月21日。旧 泉郷が旧セラヴィリゾート泉郷に商号変更して、2つのガラ権メーカーが統合されるのが同年の6月です。まさにこの2社の過渡期(混乱期)に、ガラ権界に登場したホテルでした。

以下は個人的な話です。僕は2004年にリゾート会員権を買って、ガラ権界にデビューしました(笑)。それは子育て環境をどうするのかという父親としての問題意識の中での行動だったのですが、それ以前には別荘ライフや移住も視野に入れて、5年くらいの間、この八ヶ岳南麓に足しげく通い詰めていました。

そんな中で出会ったのが「リゾナーレビブレクラブ小渕沢」(今のリゾナーレ八ヶ岳)であって、また「清里高原富士屋ホテル」でした。

便利な「下の方」にある前者と比較して、富士屋ホテルの方は恐ろしく「上の方」というか「奥の方」にあったのですが、なにしろ全盛期の国際興業グループが作った最高級ホテルであり、キッツメドウズ(今はサンメドウズ)や清泉寮に行くときには必ず意識することになる、憧れの場所でした。

そのホテルが2004年に「ルーム会員」としてガラ権化します。その会員権の詳細については、今後の連載で明らかにするつもりで、またホテルそのものについても、その時にzukisansuさんと一緒に書くことにしましょう。

清里高原富士屋ホテル

この清里高原富士屋ホテルは、エクシブ箱根離宮になった奈良屋旅館と覇を競った「富士屋ホテル」の系列として誕生したので、ものすごく豪華な和室がありました。もちろん今もあります。また、この部屋は6人まで泊まれるというもので、リゾートトラストの場合は一般に5人までですから、そういう点でも貴重な存在です。

(公式)檜風呂付和室 | 【公式】清里高原ホテル

僕はこのあこがれのホテルのあこがれの檜風呂付き和室に、一度だけ泊まったことがあります。それは、旧セラヴィリゾート泉郷が経営破綻する直前に、ヤケクソで全ホテルの半額セールをしていたことがあったその時です。

和室は続きの間になっていて、狭い方の部屋は方丈の間で、吉野窓まである。

吉野窓は、仏教における完成した悟りを示して円の形をしていると言われていますが、清里高原ホテルの吉野窓は、下部が切れて直線となっていて、その悟りが未完であることを示唆しているかのようです。

消えたガラ権

さて、思い出ばなしを書いたところで、適当に読者が離脱したこの頃合いで、大事なことを書きましょう。今回の経営変更についての、本当のところを探っていきます。

あらためて、マイステイズの発表資料を度読むと、「セラヴィリゾート泉郷と運営に関する業務委託契約を締結しましたことをお知らせいたします」と書いてあります。これを文字通りに受け取れば、外部の事業主体であるセラヴィリゾート泉郷が、ホテルチェーンであるマイステイズに、すべてのホテルの運営を外部委託(外注)することにした、という風に読めます。

しかし、よく見ると、おかしな発表なのです。なぜかと言うと、発注元も受注元も、実質的には同じ会社である、自己取引の報道発表であるからです。もっと直接的に、買収したとか、傘下に収めたと言えばいいものを、わざと回りくどい言い方をしている。

それはあたかも、まだセラヴィリゾート泉郷に主体性があるかのように装うことで、「会員様」の心情に忖度したものではなかったでしょうか。

セラヴィリゾート泉郷は、もう4~5年も前に全株が売却されて、経営が変わっています。以下では、少しだけ、この顛末の事実関係を確認しておきます。

日本企業成長投資

2020年。コロナ禍になってセラヴィリゾート泉郷は経営が悪化し、当時の株主は、会社の全株を「日本企業成長投資」という投資ファンドに売却してしまいます。これが2020年11月のことです。

このファンドの以下の実績ページには、まだセラヴィリゾート泉郷の名前とともに清里高原ホテルの写真が出ています。今のうちに見てください。

(公式)投資先企業 | 日本企業成長投資 | Nippon Investment Company

この後、このファンドから経営陣が送り込まれ、経営改革が実行されます。ファンドは安く買って高く売るのが仕事ですから、いわゆる経営合理化が行われたのでしょう。

しかし、リゾートクラブというものは、会員にお金を出してもらったり所有権を持ってもらったりして、建築後は雇用の確保などの地域貢献はあるにせよ(バブル期の過疎対策などがこれです)、ホテルを売ってしまった後で金儲けをするという立て付けにはなっていません。

ホテルができたら契約に基づいて安い価格でサービスを提供し続けなければならないのがリゾート会員権というものですから、一般的な事業会社として、儲けを出すヴィークルに見立ててガラ権メーカーを売ったり買ったりすること自体、そもそものところが理解されていないか、または無視されているのです。

経営合理化

その結果、セラヴィリゾート泉郷のホテル、特に今日取り上げたような高級ラインでは、ファンドへの経営変更によって変化が起きたと聞きます。

以下は、いわゆる野良掲示板でのコメントですが、その内容には真実があると僕は判断しているので、史料として引用します(句読点や改行などを編集)。

(引用元)セラヴィリゾート泉郷ってどうですか?|リゾートマンション・リゾートホテル・別荘掲示板@口コミ掲示板・評判

名無しさん 2024/03/27 16:08:11

今月末迄10年間、毎年11万円支払い続けて利用しました元会員です。最初の頃は、例えば安曇野の太田シェフが居られた頃は、お食事が目当てでよく伺いました。

そのうち社長が代わり、節約の為に良い材料は使えないらしく、フレンチを止めて、またどのくらいか後に和食も止めて、中国人観光客のインバウンド狙いにバイキングのみにもなり、他の蓼科等によく伺いました。

清里高原ホテルに移った太田シェフが他のホテルからの引き抜きで退社されてからは、申し訳ありませんがお料理は全然ランクが落ち、会員も辞めようかと思っていた矢先に、私の更新会員自体も辞めると言われ、永年会員になるには以前は百万を支払う物が150万円にも跳ね上がった事もあり、お料理もサービスも低下した所に150万円を支払う意味も無いと、昨日伊豆高原ホテルわんわんパラダイスを最後に致しました。

申し訳ありませんが、最初の頃がとても良かっただけにこちらの会員にはならない方が賢明かと思います。殆どのホテルがわんわんパラダイスと言い、犬と泊まれるホテルと化しています。(後略)

会員ですが後悔しています 2025/01/31 18:12:05

決して豪華でもなく、かといって安かろう悪かろうでもなく、ころあいだったので、数日間の体験宿泊を経て会員権を購入したのが10年ほど前。最初の数年は良かったので、多い時はあちこち合わせて年間30泊もしました。

が、その後、音を立てて悪くなり、各地で知り合って、その後も連絡をとっている、いわばセラヴィ友人たちの中には退会したり、行かなくなったりする人が続出しだしました。

名無しさんが書いておられる通り、食事の質が著しく悪化し、少し大きめのところはインバウンドの団体向け宿になり、少しまともだったところは、わんわん向けとなり、東日本の最後の砦だった清里が崩れてしまい、もはや全体として、安かろう悪かろうの典型になってしまいました。(中略)

私自身は他の方と一緒に、泉郷に買い戻してもらう運動でもしたい気分です。(後略)

このように、ファンドへの売却によって、お食事のグレードダウンを中心に、会員制の良さのようなものが失われていったことが複数の方から綴られています。

自己発注を発表する意味

こうしてセラヴィリゾート泉郷を「立て直した」とされる日本企業成長投資は、今回、フォートレス・インベストメント・グループ・ジャパンという、別のファンドにセラヴィリゾート泉郷の全株を売却してイグジットしました。

フォートレスの傘下にあるのがマイステイズ・ホテル・マネジメントです。なお、以下の資料にあるフーリハン・ローキーというのは、この取引を仲介した投資銀行です。

(公式)日本企業成長投資によるセラヴィリゾート泉郷のフォートレス・インベストメント・グループ・ジャパンへの売却(日本企業成長投資へのアドバイザリー)|フーリハン・ローキー株式会社

改めて、マイステイズの資料を読みましょう。

(公式)プレスリリース | 株式会社マイステイズ・ホテル・マネジメント | 企業サイト

「株式会社マイステイズ・ホテル・マネジメント(代表:⼭本俊祐)は、株式会社セラヴィリゾート泉郷(代表:山本俊祐)が経営する20ホテルについて、セラヴィリゾート泉郷と運営に関する業務委託契約を締結しましたことをお知らせいたします」と書かれています。山本さんによる山本さんへの業務委託です。

現時点でセラヴィリゾート泉郷の会社案内を見ると、前社長の名は消えていて、役員や経営者としてはこの山本さんの名前だけが掲示してあります。

(公式)企業情報 | 【公式】セラヴィリゾート泉郷(いずみごう)

山本さんは「フォートレスの日本におけるホテルのアクイジション及びアセット・マネジメント業務を統括」している方です。フーリハン・ローキーの資料にあるように、現在のセラヴィリゾート泉郷のオーナーはフォートレスであり、つまりは山本さんです。

(参考)2022年11月4日号 トップインタビュー (株)マイステイズ・ホテル・マネジメント 代表取締役会長 山本 俊祐氏/代表取締役社長 代田 量一氏 | ホテル・レストラン・ウエディング業界ニュース | 月刊ホテレス HOTERESONLINE

現在のセラヴィリゾート泉郷は、外資系ファンドである山本さんが経営しており、運営はやはり山本さんのマイステイズに委託するようになった、というのが発表内容です。そしてその過程で、別のファンドが間に挟まって、経営改善とイグジットという名の金儲けが行われました。

セラヴィリゾート泉郷という歴史あるガラ権メーカーは、現在、外資系ファンド傘下のホテル(マイステイズ)の一部門となったということが言えるでしょう。

すでに会員は、上記のように迷惑を被っているようですが、それも時代の流れで仕方ありません。

セラヴィリゾート泉郷は何度も経営破綻していて、もはや資産価値も後腐れもないと思います。「割引クラブ」以上の意味はなくなったようですが、それに満足を覚える方は少なくないのかもしれません。

どちらにしても、もはやガラ権メーカーとしての命脈は、今回の取引によって完全になくなりました。今後は主に、法人の福利厚生の提供事業者として、また個人向けの割引クラブとしての存続となります。わんわん関係にはまだ見るべきものがありそうですが、僕には判断できません。

これが、歴史あるガラ権メーカーの最期でした。

3 comments

  1. resortboyさん、私の愛するセラヴィの詳細記事ありがとうございました。ガラ権からのエクソダスを考えていたら、当のガラ権が先にエクソダスしていた、と言う漫画みたいな話ですね。これでセラヴィに対する私の幻想は崩れました。

    ところで、resortboyさんが清里高原富士屋ホテルに深い思い入れがあっとは知りませんでした。そして、このホテルが「全盛期の国際興業グループが作った最高級ホテル」であったことも。それで納得しました。

    清里高原ホテルは泉郷ベストクラブのホテル群とはまるでレベルが違っていました。ロケーションも、ホテル内も、そして、本格的フレンチの夕食と伝統的なアメリカンブレックファーストの食事も。高原リゾートでの食事は“かくあるもの”と感動しました。古い旅行記(2007年6月)ですが、アップしておきます。
    ◎清里高原ホテル
    https://4travel.jp/travelogue/10159224

    ホテルアンビエント安曇野のフレンチ料理レストランの雰囲気、そして料理の中身も抜群でした。以下、コロナ絶頂の2020年9月の旅行記ですが、1泊2食8500円のコスパの凄さにしびれました。
    ◎ホテルアンビエント安曇野(その1)
    https://4travel.jp/travelogue/11644130
    ◎ホテルアンビエント安曇野(その2)
    https://4travel.jp/travelogue/11644853
    注:フレンチ料理レストランが廃止されビュッフェレストランになりました。経営合理化の直撃をくらったのでしょうね。

    さて、さて、これからどうするか?ですが…、少なくとも現在の会員サービスがある限り私は継続します。期待に合わなければ会員を辞めればいいだけの話です。年会費を払わなければ「お別れ」できます。resortboyさんご指摘の「個人向けの割引クラブ」です。

  2. funasanさん、resort boyさん
    ご教示ありがとうございます
    とても悲しいですがそう言うことなんですね(泣)
    でもセラヴィリゾートはとっくの昔に経営破綻しているのにずっと継続しているので今の状態で続いてくれれば良いなーと思います。家族同然の2匹のワンコと共にとてもリーズナブルに旅行させて貰えるワンワンパラダイスの継続を切に望みます!

  3. funasan、RCさん、コメントをありがとうございました。

    本文に付け加えますと、このセラヴィ物語、特にレストランに対する変化の部分は、今後のRTにも「すでに起きた未来」として参考になるものと思います。

    それは、安曇野が長かった太田将治シェフが辞めた話ですね。ちゃんとした料理人は会社の方針が変わって自分の世界が表現できなくなると、自分から辞める、ということです。

    太田さんは引き抜きという話もありますが、その後、以下のホテルレストランで極めて高い評価を受けています。僕もぜひ行ってみようと思っています。

    I;caza【ikaza】 (イカザ) – 松本ホテル花月/ながのテロワール

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