
コレステロール治療は闇だらけ – 2
本連載は「旅を通して転移がんを克服した全記録」です。(編集担当:resortboy)
前回に引き続き、「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」を参考文献として、主に女性のコレステロール低下治療について検討します。そこには、信じられないような乱暴な理屈が展開されていて驚きます。
女性のコレステロール低下治療は要注意
以下はガイドライン2022年版の第8章 女性「女性における動脈硬化危険因子と動脈硬化性疾患の関連」(P184)からの引用(太字筆者)です。注と説明は私が付け加えたものです。
血清脂質値の加齢に伴う変化は男女で大きく異なっている。令和元年国民健康・栄養調査報告によれば、LDL-Cとnon-HDL-Cは男性では特徴的な経年変化はないが、女性の場合、平均閉経年齢である50歳前後では男性より低値であるが、50歳以後に上昇して男性より高値となる(注5)。
TGも同様で50歳前後は男性が高値で推移するが、女性の場合、50歳を過ぎると上昇して男性値に近づく。
HDL-Cは女性が高値で推移するが、男女ともに大きな経年変化はない。
このように女性の場合、閉経を契機に脂質代謝に変化をきたす大きな要因の1つにエストロゲン低下が関連する(注5)と考えられており、また加齢、閉経後の血清脂質の変化、特にLDL-Cの変化は女性の動脈硬化性疾患のリスクに大きく影響している(注6)と考えられる。
まず、注5について。女性の場合、なぜ、閉経後にLDL-Cとnon-HDL-Cが上昇するのでしょうか? ガイドラインも認めているように、この脂質代謝の変化の主因は閉経によるエストロゲン(女性ホルモン)の低下です。
ここが大事なポイントで、LDL-Cとnon-HDL-Cの上昇は「閉経」が主因であって、食事・運動不足・肥満・喫煙等の生活習慣の悪化ではないのです。
ではなぜ、女性は閉経するとLDL-Cとnon-HDL-Cが上昇するのでしょうか? そのメカニズムは残念ながらガイドラインには書いてありませんでした。
そこで素人ながら私は以下のように分析してみました。
女性が閉経してエストロゲンが急激に不足すると、さまざまな体の不調が現れます。一般的に女性の更年期障害と呼ばれる症状です。
実はコレステロールは性ホルモン(女性ホルモン・男性ホルモン)の前駆物質で、間接的に男性・女性の性機能、筋の能力、骨と関節の発達、および睡眠のための緊張緩和を促進するそうです(参考文献:「コレステロールの欺瞞」P57)。
つまり、女性は閉経によってエストロゲンが低下するので、体自らがLDL-Cを増産することによってエストロゲンの代役をして、閉経後も体が不調になるのを守っているのです。
だからLDL-Cが高値になる。閉経後のLDL-C上昇は自己防衛であり病気ではない。動脈硬化性疾患のリスク要因にはならない。
吹田研究とも矛盾
ただし、この見方は一般的に認知されていません。この理論が医学関連学会等で正式に承認されれば、多くの中高年女性がコレステロール低下治療から解放されます。皆さんハッピーになりますが、医者・病院・製薬業界は大打撃を受けます。
真実はどちらでしょうか? もし私の仮説が正しければ、閉経後の普通に健康な女性がLDLの基準オーバーだけで動脈硬化性疾患の一次予防としてコレステロール低下薬(スタチン等)を飲んでいるとすると、体の自己防衛を破壊し体調不良を自ら招くことになります。
また、注6には「閉経後のLDL-Cの変化が女性の動脈硬化性疾患のリスクに大きく影響している」とガイドラインに書いてありますが、大きく影響している根拠(エビデンス)は何も示していません。女性の冠動脈疾患発症の生涯リスクはLDL-C高値と無関係という吹田研究とも矛盾しています。
医学的エビデンスが何もないにも関わらず、閉経後のLDL-C値の上昇を女性の動脈硬化性疾患のリスクに結び付けています。これは根拠なき捏造です。
意図は明らかで、閉経後の女性も男性同様にコレステロール治療をしたいからでしょう。
女性にスタチンは不要
同ガイドラインの第8章女性のページ(P185~P186)には、スタチンによる女性の冠動脈疾患一次予防や、脳梗塞既往患者(二次予防)に対して驚くべき事実が書かれています。
スタチンによる女性の冠動脈疾患一次予防を検討した大規模臨床試験は少ない。わが国で行われたMEGA Studyは対象の68%が70歳以下の閉経後女性であった。スタチン投与群の冠動脈疾患及び脳梗塞のリスク低下は女性で有意ではなかったが、女性サブ解析で(冠動脈疾患+脳梗塞)をエンドポイントとすると、55歳以上の年齢層から有意なリスク低下が認められた。
JUPITERでは、対象女性3426人に対するスタチン投与でプラセボ群に比べ、不安定狭心症や再灌流療法のリスクは有意に低下したが、心筋梗塞や脳血管障害予防効果は明らかでなかった。また、これらのイベントを包括した一次エンドポイントのリスクは65歳以上の高齢女性で有意に低下したが、65歳未満では有意な低下は認められなかった。(略)
女性においてスタチンによる動脈硬化性疾患の初発予防効果は男性に比べ明らかではなく、生活習慣改善が治療の中心となる。(略)閉経前の女性において冠動脈疾患に対する脂質異常症のリスクを示すエビデンスはほとんどなく、続発性脂質異常症の鑑別と生活習慣改善による対応が基本となる。
二次予防に関しては、(略)わが国で脳梗塞既往患者のスタチンによる再発予防試験J-STARSが行われた。5年の前向き調査でアテローム血栓性脳梗塞のリスクが67%と優位に低下したが、男女別にみると女性では有意な低下がみられなかった。
以上より、冠動脈疾患二次予防においては女性も適切な治療が必要であるが、女性のスタチンによる脳梗塞再発予防効果は明らかでない。
ここに至って、ガイドライン自ら、女性にはコレステロール低下治療のエビデンスは少なくスタチンは不要であることを認めています。
さらに、既に病気が発病してしまった患者に対する二次予防においても、女性のスタチンによる脳梗塞再発予防効果は明らかでないと結論付けています。
(続く)
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【前回】第2-51回・コレステロール治療は闇だらけ – 1
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