抜歯回避の最後の手段

「がん患者よ、旅に出よう!」は、トラベルライターの舟橋栄二さんによる連載です。早期退職でリゾートライフを満喫する日々の裏には、2度の手術を含めた「がん」との闘いがありました。「旅は生きる喜び。その喜びをがんに奪われたくない」
本連載は「旅を通して転移がんを克服した全記録」です。(編集担当:resortboy)

抜歯すると骨が崩れ始め、心筋梗塞や脳梗塞、さらにがんを引き起こす――その小峰氏の警告に、震える思いがしました。本当にそこまで影響があるのか、私にはわかりませんし、科学的にはまだ議論の余地があるかもしれません。けれど、この小峰氏の一冊が「歯を守る」という私の決意に火をつけたことは間違いありません。

小峰一雄氏は、臨床現場で、虫歯が歯の内側から進行している例を多数経験し、従来の「削る治療」に疑問を持つようになりました。目で見た限り歯の表面に穴は開いていないが、歯の中に虫歯ができている患者に何度も遭遇したのです。

「歯の中」から虫歯ができているのです。虫歯は歯の外側からできるという従来の理論では説明がつきません。

象牙質液流説

さて、前回紹介したスタイマン博士の「象牙質液流説」についてです。

ラルフ・スタイマン氏(Ralph R. Steinman)は、1970年代に「象牙質液流(Dentinal Fluid Transport)」の仮説 1 を提唱したアメリカの歯科医です。象牙細管内に体液が流れていて、それが内側から外側へと押し出されることで、歯の防御機能になっているという理論です。

以下が、彼の仮説の要点です。

健康な状態では、象牙質の中の液体が内部(歯髄)から外部(歯の表面)へと流れている。この液体が「栄養や免疫物質」を運び、虫歯菌の侵入を防ぐバリアの役目を果たしている。しかし、体の代謝が乱れると液の流れが逆転し、虫歯の原因になる。

これが彼の主張です。

この逆流現象を引き起こす要因として、スタイマン博士は以下の5つを挙げています。

1)砂糖
2)ストレス
3)運動不足
4)微小栄養素不足
5)薬物

いずれも現代人の生活に身近にあるリスクで、中でも「砂糖」がトップです。砂糖中毒だった私は無視できない警告です。

私が「この説は一理ある」と確信したのは、本書61~62ページに登場する「アンケートから分かった虫歯の原因」です。

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名医は虫歯を削らない 虫歯も歯周病も「自然治癒力」で治す方法

彼は、削る歯科治療の限界に突き当たり、虫歯と食事に関する研究と調査を行いました。そして食事に関するアンケート調査を、クリニックの患者さんや歯科校医をしている2つの小学校(約1,000名)の子供たちに実施したのです。

その結果…

「虫歯の多い患者さんや子供たちは、砂糖を含む食品を非常に多く食べている」という単純な事実を発見したのです。

歯を守る旅のはじまり

ここから「食生活の乱れ、特に、砂糖の摂取こそ虫歯の主因」だと突き止めました。スタイマン博士の「象牙質液流説」が正しいことをご自分の患者を通して証明した訳です。

彼は20年以上にわたる歯科医の経験から、小峰式予防歯科プログラムを確立し、虫歯には砂糖を一切摂らないシュガー・カット、歯周病には糖質制限を提唱しました。「砂糖をやめれば、虫歯の約9割は予防できる」と、小峰氏は言い切ります。

スタイマン博士の「象牙質液流説」は一部で注目を集めましたが、現在の主流の歯科医学では確立された理論とはされていません。あくまでも仮説で、科学的には傍流かもしれません。しかし、間違っているとは言えません。逆に、現代の歯科治療が間違っている可能性もあります。

では、虫歯や歯周病の「真の原因」は何か? そして、最適の歯科治療とは何か?

もし、ヒトには「歯の内側から守る力」が本当にあるなら、そして虫歯も歯周病も「自然治癒力」で治せるなら、私はこれに賭けてみたい。

何しろ抜歯を回避する最後の手段です。私は実践しました。

削るのではなく、生かす。抜くのではなく、守る。

それは歯だけでなく、自分の体、そして人生そのものを大切にするという選択なのかもしれません。

こうして、私の「歯を守る旅」が本格的に始まったのです。

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自然治癒力が上がる食事 名医が明かす虫歯からがんまで消えていく仕組

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免疫力が上がるアルカリ性体質になる食べ方 すべての病気の原因は酸性体質にあった!

(続く)

【前回】第3-21回・甘いものをやめてみたら…

【前回】第3-19回・歯が「生きていた」なんて


  1. 参考:ラルフ・スタイマン「象牙質液流(Dentinal Fluid Transport)」仮説の出典について
    ・「Steinman, R. R., & Leonora, J. (1970). Relationship of Fluid Transport Through the Dentin to the Incidence of Dental Caries.」
    Journal of Dental Research, 49(6), 1536-1542.
    この論文は、ラットを用いた実験により、象牙質を通る体液の流れ(象牙質液流)が虫歯の発生率と逆相関することを示し、象牙質液流が歯の防御機構の一部であることを示唆しています。
    ・「Steinman, R. R. (1977). The control of dental caries by manipulating dentinal fluid movement.」
    Journal of Missouri Dental Association, 57(5), 14-20.
    この論文では、象牙質液流の動きが歯の健康維持や虫歯予防に果たす役割について、より臨床的な観点から解説されています。 ↩︎

(本連載記事一覧)がん患者よ、旅に出よう!
(スペシャル対談)私のリゾートライフの全体マップ
(筆者ホームページ)舟橋栄二「第二の人生を豊かに」

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