セラヴィリゾート泉郷の新時代 – 2

セラヴィリゾート泉郷の構造変化が、ユーザー(特に会員)に対して与える影響について検討する連載の2回目です。今回は、セラヴィリゾート泉郷がアイコニア・ホスピタリティに運営統合されることによって訪れた、「大規模な再投資の時代」について明らかにします。これが本連載の中心となる「新時代」の具体的な内容です。

会員の方々には、まったく想定していなかった広範なリニューアル計画でした。と言うか、この計画実施にあたって会員の方々への事前告知はなく、突然、2025年6月16日に発表が行われたのでした 1

以下、その内容を解説していきます。どの施設が投資対象となり、どの施設が対象外となったのかを見ながら、その背後にある戦略的意図を分析しましょう。

投資の全体像

この秋冬から実施される新体制下でのリニューアル工事は、ポートフォリオの大半を網羅する包括的なものです。2025年から2026年にかけて、全20施設のうち実に14施設でリニューアル工事が計画されています。これは、新経営陣によるポートフォリオ全体への強いコミットメントを示すものと言えます。

以下にリニューアル計画の詳細を示します。

表1:セラヴィリゾート泉郷 - 発表済みホテルリニューアル計画(2025-2026年)

対象ホテル 改装工事期間(予定) リニューアルオープン(予定) 営業への影響
AMBIENT 安曇野ホテル 2026年1月11日~2026年3月31日 2026年4月1日 期間中、全館休館
AMBIENT 安曇野コテージ 2026年1月11日~2026年3月31日 2026年4月1日 期間中、全館休館
安曇野わんわんパラダイスコテージ 2026年1月11日~2026年3月31日 2026年4月1日 期間中、全館休館
AMBIENT 蓼科ホテル 2025年10月13日~2026年1月20日 2026年1月21日 期間中、全館休館
蓼科わんわんパラダイスコテージ 2025年10月13日~2026年1月20日 2026年1月21日 期間中、全館休館
清里高原ホテル 2026年1月13日~2026年4月30日 2026年5月1日 通常営業(一部共用エリア改修)
伊豆高原わんわんパラダイスホテル&コテージ 2026年1月5日~2026年3月31日 2026年4月1日 通常営業(一部工事実施)
Wan's Resort 城ヶ崎海岸 2025年12月1日~2026年2月7日 2026年2月8日 一部期間休館(2026/1/5~1/31)
Wan’s Resort 山中湖 2026年1月13日~2026年2月28日 2026年3月1日 一部期間休館(2026/1/13~1/30)
浜名湖わんわんパラダイスホテル 2025年10月16日~2025年11月30日 2025年12月1日 通常営業(一部共用エリア改修)
高山わんわんパラダイスホテル&コテージ 2025年11月17日~2026年2月6日 2026年2月7日 通常営業(一部共用エリア改修)
鳥羽わんわんパラダイスホテル 2026年1月13日~2026年3月10日 2026年3月11日 期間中、全館休館
ホテルアルティア鳥羽 2026年1月13日~2026年4月13日 2026年4月14日 一部期間休館(2026/1/13~3/13)
南紀白浜わんわんパラダイス 2025年11月3日~2026年2月28日 2026年3月1日 通常営業(一部共用エリア改修)

ホテルごとのステータス

アイコニアに運営移管された全20施設のうち、7割にあたる14施設が投資対象となっています。ポートフォリオ全体の底上げという明確な意思の表れですが、今回、投資が見送られた施設もあります。そこで別の表として、セラヴィリゾート泉郷の全20施設のポートフォリオと、各施設の現時点におけるリニューアル計画のステータスをまとめました。

分析や考察はあくまで僕が判断したものであって、会社側の公式発表ではないことに注意してください。それらに関しては順次、解説していきます。各種の公式発表やおよびリニューアル告知に基づき作成しましたが、客室数については、資料によって若干の差異がありますのでご了承ください。

表2:セラヴィリゾート泉郷 - 全ポートフォリオ ステータス分析(2025年半ば時点)

ステータス 施設名 ブランド 分析・考察(非投資の理由など)
投資対象 AMBIENT 安曇野ホテル AMBIENT エリア単位での価値向上
投資対象 AMBIENT 安曇野コテージ AMBIENT エリア単位での価値向上
投資対象 安曇野わんわんパラダイスコテージ わんわんパラダイス 成長市場への集中投資
投資対象 AMBIENT 蓼科ホテル AMBIENT エリア単位での価値向上
投資対象 蓼科わんわんパラダイスコテージ わんわんパラダイス 成長市場への集中投資
投資対象 清里高原ホテル その他ホテル 主要ホテルとして品質維持
投資対象 伊豆高原わんわんパラダイスホテル&コテージ わんわんパラダイス 成長市場への集中投資
投資対象 Wan's Resort 城ヶ崎海岸 Wan's Resort ペット関連ブランドへの投資
投資対象 Wan’s Resort 山中湖 Wan's Resort ペット関連ブランドへの投資
投資対象 浜名湖わんわんパラダイスホテル わんわんパラダイス 成長市場への集中投資
投資対象 高山わんわんパラダイスホテル&コテージ わんわんパラダイス 成長市場への集中投資
投資対象 鳥羽わんわんパラダイスホテル わんわんパラダイス 成長市場への集中投資
投資対象 ホテルアルティア鳥羽 その他ホテル 主要ホテルとして品質維持
投資対象 南紀白浜わんわんパラダイス わんわんパラダイス 成長市場への集中投資
投資対象外 AMBIENT 伊豆高原コンドミニアム コンドミニアム 権利関係が複雑なため合意形成が困難
投資対象外 伊豆高原わんわんパラダイス コンドミニアム コンドミニアム 権利関係が複雑なため合意形成が困難
投資対象外 AMBIENT 八ヶ岳コテージ AMBIENT 競争激化エリアのため、より抜本的な長期戦略を検討中
投資対象外 八ヶ岳わんわんパラダイスコテージ わんわんパラダイス 競争激化エリアのため、より抜本的な長期戦略を検討中
投資対象外 AMBIENT 八ヶ岳花ホテル AMBIENT 競争激化エリアのため、より抜本的な長期戦略を検討中
投資対象外 松阪わんわんパラダイス 森のホテルスメール わんわんパラダイス 今回の投資優先順位からは外れた模様

戦略ロジックの考察

続いて、この投資計画の戦略について見ていきましょう。これらは単一の柱ではなく、複数の意図が組み合わさったものと解釈できます。

第一に、ポートフォリオ全体の品質基準の引き上げです。投資は「AMBIENT」ブランドの基幹ホテル(安曇野、蓼科)や、独自の歴史を持つ「清里高原ホテル」といった中核資産だけでなく、これまで投資優先度が低いと見られていた「コテージ」形態の施設(安曇野、蓼科)にまで及んでいます。

特定の資産クラスだけではなく、ポートフォリオ全体の競争力を底上げしようという強い意志が見て取れます。

第二に、成長ドライバーとしてのペットフレンドリー市場の重視です。ポートフォリオ全体において「わんわんパラダイス」や「Wan's Resort」ブランドはもともと大半を占めていますので当然ですが、これらは順当に再投資されます。これは、アイコニアの報道発表資料においても、以下のように重要事項として言及されていました。

セラヴィリゾート泉郷が培ってこられた『愛犬と泊まれるホテル』としての実績と運営ノウハウ、当社グループメリットが融合することで、さらなる収益の最大化を目指します。

実際、旧マイステイズにはこの発表時点でペットフレンドリーホテルは11しかなく、セラヴィリゾート泉郷の取得でこれがおよそ2倍の規模に拡大しています。新経営陣は、このニッチ市場を単なる強み以上のものとして、大切に位置づけていると見られます。

第三に、エリア単位での価値向上戦略です。安曇野エリア(ホテル、コテージ、わんわんパラダイスコテージ)や蓼科エリア(ホテル、わんわんパラダイスコテージ)では、エリア全体が同時にリニューアルされます。個々の施設を改修するだけでなく、エリアの魅力を高め、運営面での相乗効果を狙っていることがわかります。

コンドミニアムの位置付け

今回の最後に、リニューアル計画から除外された6施設について見ていきます。これらには共通の特性と、新経営陣の慎重な戦略が見て取れます。

投資対象外となったのは、伊豆高原の2つのコンドミニアム(場所としては隣接地)、八ヶ岳エリアのすべての施設(AMBIENT 八ヶ岳コテージ、八ヶ岳わんわんパラダイスコテージ、AMBIENT 八ヶ岳花ホテル)、そして松阪のわんわんパラダイスです。

これらの施設が今回の再投資計画から外れた背景には、個別の事情と、より大きな戦略的判断が存在するように思われます。

伊豆高原のコンドミニアム群は、もともと分譲形式で1室単位で販売された経緯があり、多数の区分所有者が存在します 2 。対して、蓼科や安曇野においても所有権はガラ権として切り刻まれたのですが、同社は民法上の任意組合として権利関係を構築しました 2

つまり、区分所有法の下でマンションのように売ったわけではありませんので、繰り返された経営破綻の中で、意外と権利関係はすっきりとしているのかもしれません。

ともあれ、一般に権利関係が複雑になると、大規模なリニューアルに対する合意形成が困難になりますので、投資判断が慎重・後回しになるのは必然です。引用した記事にもありますが、旧セラヴィリゾート泉郷においてアンビエントブランド(つまり、旧 泉郷プラザホテル)であったホテルの中には、「ホテルアンビエント苗場(苗場泉郷コンドミニアムホテル)」(1990年11月、162室)のように、会社更生手続の中で切り捨てられ、廃墟化しているホテルもあるのです。改めて指摘しておきたいと思います。

これほどまでに、区分所有権の影響下におけるガラ権ホテルの復活は難しいです。旧泉郷のコンドミニアム群の今後に注目しましょう。

八ヶ岳エリアの戦略的意義

しかし、より象徴的なのは、セラヴィリゾート泉郷の創業の地であり、精神的な本拠地とも言える八ヶ岳エリアの主要施設が投資対象から外れている点です。このエリアは、東京ドーム22個分とも言われる広大な敷地に多数のコテージが点在する、同社を代表するリゾート地です。

この重要な拠点が後回しにされている背景には、同エリアにおけるリゾート間競争の激化が大きく影響しているとともに、創業の地だけに慎重な判断を取らざるを得なかったような印象を、僕は持っています。

いわずもがな、現在の八ヶ岳エリアは、国内リゾート業界の二大巨頭が巨額の投資を行う場所となっています。

星野リゾートは、かねてより「リゾナーレ八ヶ岳」を運営しており、デザイン性の高い空間と豊富なアクティビティで、特にファミリー層から絶大な支持を得ています。

そして、これはアイコニアの活動範囲とは直接には関係ありませんが(顧客層がまったく異なる)、リゾートトラストが2027年3月の開業を目指し、「サンクチュアリコート八ヶ岳 レジデンシャルリゾート」の建設を進めています。

このような状況下で、老朽化が進む既存のコテージ群に中途半端な投資を行ってこれら強力な競合に対抗することは、実際には関係ないイメージの問題であったとしても、慎重になるのは当然です。

フォートレスのような規律ある投資家は、勝算の低い戦いは避けるのが常なのでしょう。八ヶ岳エリアの施設群が今回の投資から外れたのは、単なる「後回し」ではなく、より長期的かつ抜本的な戦略を検討しているためと、現段階では見ておきたいと思います。

それは、追っての大規模な再開発計画かもしれないし、あるいは、非注力資産とするという選択肢も可能性としてあります。なにしろ、大して人気のないエリアですから、 星野やリゾートトラストの動向と含めて、アイコニアの施設群(=旧 泉郷)に関しても注目していきましょう。

(続きます)

セラヴィリゾート泉郷の新時代 – 3

3 comments

  1. セラヴィには踏ん張って貰いたいですが(–;)
    とても気に入っている八ヶ岳がリニューアルしないとなるとちょっと心配ですね。
    コテージなんかは結構リニューアルしており、新しくて快適なんですが(-_-;)
    本館のハナイズミの湯を是非ともリニューアルして欲しい。個人的にはとても良い温泉だと思っているので…

  2. ①サンクチュアリコート八ヶ岳は高級リゾート
    ➁リゾナーレ八ヶ岳は通常リゾート

    ③八ヶ岳セラヴィリゾートはリーズナブルなリゾート

    こんな風に棲み分けが可能と思います。

  3. H&Mさん、コメントをありがとうございます。八ヶ岳エリアですが、本文にも書きましたが「長期的かつ抜本的な戦略を検討」しているのだと思っています。

    H&Mさんのご指摘の3つのブランドが入り乱れることは、現在は人気がイマイチな同エリアでも、これから首都圏から近い一大リゾートエリアとして「復活」する可能性があります。

    実は本文で書き忘れてしまったのですが(長くなってしまって入れるを忘れたww)、旧マイステイズは八ヶ岳エリアで名門施設を買収して、将来への布石を打っています。

    それは「高原にいらっしゃい」で知られる元侯爵徳川義親邸である八ヶ岳高原ヒュッテと八ヶ岳高原ロッジであり、吉村順三による八ヶ岳高原音楽堂です。これ以上のステータスある物件は同エリアにはありません。買収後は山本俊祐さんが社長となっており、この泉郷ストーリーと構図は同じです。

    八ヶ岳高原ロッジ・八ヶ岳高原海の口自然郷

    これはサンクチュアリコート八ヶ岳から見ると、八ヶ岳をはさんで正反対なのでまったく同じ場所ではないですが、旅行者にとっては同じようなものなので、リゾートトラストはアイコニアの投資で漁夫の利を得る立場となったかもしれません。

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