コレステロール治療は闇だらけ – 1

「がん患者よ、旅に出よう!」は、トラベルライターの舟橋栄二さんによる連載です。早期退職でリゾートライフを満喫する日々の裏には、2度の手術を含めた「がん」との闘いがありました。「旅は生きる喜び。その喜びをがんに奪われたくない」
本連載は「旅を通して転移がんを克服した全記録」です。(編集担当:resortboy)

いよいよコレステロール治療の闇の本丸に切り込みます。参考文献は「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」で、これは以下のようにPDF版もあり、全ページ無料で読めます。興味のある方はじっくり読んでみてください。

動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版

特に、コレステロールに関係するのは第2章です。また、女性については第8章に独自の章が設けられています。

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初版:2022年7月4日、発行:一般社団法人日本動脈硬化学会

動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版

以下、上記ガイドラインP19からの引用(太字筆者)です。注は私が付け加えたものです。

第2章 動脈硬化性疾患予防のための包括的リスク評価

米国フラミンガム研究をはじめ、欧米で行われた多くの疫学調査の結果と同様に日本人を対象とするコホート研究(注1)においてもLDLコレステロール(LDL-C)の上昇に伴い冠動脈疾患の発症や死亡に対するハザード比は上昇することが確認されている。
(中略)
なお吹田研究(注2)では、心筋梗塞発症リスクは、男性ではLDL-Cと正の関連の傾向を示し、女性では認められないが、男女を合わせるとLDL-Cと正の関連をすることが示されている(注3)

また、一生の間に冠動脈疾患を発症する確率(生涯リスク)は、男性では(中略)LDL-C高値群と低値群で有意な差があったが、女性では、(中略)有意な差はなかった(注3)

脳梗塞に対しても、LDL-Cとアテローム血栓性脳梗塞の発症リスクは有意に正の関連をしていたが、逆に出血性脳卒中(主に脳内出血)に対しては、LDL-C高値の群でハザード比が低下する負の関連が報告されている(注4)
(中略)
これらを考え合わせて、本ガイドラインでは日本人のスクリーニング基準値をLDL-C 140ng/dL以上とし、さらに他の危険因子の重複の影響を慎重に判断すべき境界域としてLDL-C 120~139mg/dLを設定した。

注を付けたところを、順番に説明します。

注1の「コホート研究」について、Wikipediaから引用します。

コホート研究(コホートけんきゅう、英語: cohort study)は、分析疫学における手法の1つであり、特定の要因に曝露した集団と曝露していない集団を一定期間追跡し、研究対象となる疾病の発生率を比較することで、要因と疾病発生の関連を調べる観察研究の一種である。要因対照研究(factor-control study)とも呼ばれる。

コホート研究 - Wikipedia

注2の「吹田研究」とは、国立循環器病研究センターが1989年より実施している日本で唯一の都市部コホート研究です。第1次研究は1989年から、第2次研究は1996年から実施されています。コホート(研究対象集団)は大阪府吹田市の住民基本台帳からランダムに抽出した吹田市民です。

今や日本人の約90%以上が都市部に住んでいるので、吹田研究の結果は日本国民の現状を最も正確に反映している第一級のエビデンスだと思います。

さらに、同研究グループは2013年12月まで追跡したデータから、10年以内の冠動脈疾患・脳卒中発症確率を予測する吹田スコアを開発しました。詳細は追って紹介する予定です。

(参考記事)健診結果から冠動脈疾患・脳卒中の10年以内の発症を予測するスコアを開発 国立循環器病研究センター | ニュース | 保健指導リソースガイド

吹田研究 / 茨城県健康研究による発見

この医学的エビデンスの裏付けがある吹田研究では、注3にあるように、「女性はLDL-C高値が心筋梗塞発症リスクにならない」という極めて重要なことが判明しています。しかし、ガイドラインでは「男女を合わせてLDL-Cと正の関連がある」ことにしています。

これは統計の捏造です。男女を合わせる必要はまったくありません。男女別に基準値を設定すればそれだけ正確なガイドラインになります。

さらに、吹田研究では女性の冠動脈疾患発症の生涯リスクもLDL-C高値と無関係であることが判明しました。

注4では、男女を含めて「出血性脳卒中(主に脳内出血)に対しては、LDL-C高値の群でハザード比が低下する負の関連が報告されている」とあります。この報告の出典は以下です。

Ibaraki Prefectural Health Study(IPHS:茨城県健康研究)
(参考)茨城県健康研究 - 茨城県立健康プラザ

茨城県健康研究は1993年に開始され、現在まで継続中の大規模コホート研究ですが、男女含めて、LDL-C高値は出血性脳卒中の予防因子であるという驚くべきことを報告しています。コレステロールは細胞膜やホルモン等の材料になるので、LDL-Cが多い方が丈夫な血管が作れるのでしょう。

私のような高コレステロール血症は、この茨城県の研究では、脳出血の予防になることが判明しました。

(続く)

【次回】第2-52回・コレステロール治療は闇だらけ – 2

【前回】第2-50回・闇だらけの医療ガイドラインを読む – 3

本連載は、本サイトに掲載した舟橋栄二さんの記事から、がん闘病に関する回を再配信したものです。時期に関する記載は2023年現在のものです。
(本連載記事一覧)がん患者よ、旅に出よう!
(スペシャル対談)私のリゾートライフの全体マップ
(筆者ホームページ)舟橋栄二「第二の人生を豊かに」

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