コレステロール治療は闇だらけ – 3

「がん患者よ、旅に出よう!」は、トラベルライターの舟橋栄二さんによる連載です。早期退職でリゾートライフを満喫する日々の裏には、2度の手術を含めた「がん」との闘いがありました。「旅は生きる喜び。その喜びをがんに奪われたくない」
本連載は「旅を通して転移がんを克服した全記録」です。(編集担当:resortboy)

今回はまとめです。これまで検討してきた「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」を、その内容に対応するエビデンスに基づいて、「素直に」読むと、次のようになります。

・脂質異常症の診断基準はエビデンスのないカットオフ値であり、薬物療法の開始を示すものではない。

・男性のLDL-C高値は心筋梗塞・脳梗塞の発症リスクを高める。

・女性のLDL-C高値は心筋梗塞や冠動脈疾患発症の生涯リスクとは無関係で、女性はコレステロール低下薬(スタチン)は不要である。

・男女共にLDL-C高値はがんと脳出血の予防因子となる。

医療ガイドラインの責任とは?

コレステロールなどの血清脂質値の加齢に伴う変化は、男女で大きく異なります。また、ヒトは加齢によって代謝が悪くなり、それを補おうとしてLDL-Cが高くなることが予想されます。ですから、動脈硬化性疾患の発症リスクは、男女別、年齢区分別に、もっと細かくリスク評価すべきです(これは次回以降、改めて取り上げます)。

第2-43回・コレステロールの嘘 – 4」で紹介した、大櫛陽一著「100歳まで長生きできるコレステロール革命」(永岡書店、2012年1月)には、「年齢別・男女別+健康診断の新しい基準値表」が載っています(P193~P198)。

一方で、日本動脈硬化学会は男女別・年齢別に分けず、全部ひっくるめて「本ガイドラインでは日本人のスクリーニング基準値をLDL-C 140mg/dl以上とし、さらに危険因子の重複の影響を慎重に判断すべき境界域としてLDL-C 120~139mg/dlを設定した」(P19より引用)としています。あまりにも雑で、医学系の専門的な学会の見解とは思えません。

2007年のガイドライン発行以来15年も経ち、多数の医学的エビデンスが出てきてコレステロール低下治療の問題点が見えてきました。それにもかかわらず、日本動脈硬化学会は従来の基準値を管理目標に置き、コレストロール低下治療を変えようとしていません。

日本動脈硬化学会・理事長・平田健一氏は、本ガイドラインの序文(P6)で次のように書いています。

(略)なお、本ガイドラインはわが国の過去のエビデンスや社会・医療の現場に基づいて、臨床医が診療上の判断のために情報提供するものであり、個々の患者の治療目標や治療手段の最終判断は患者の状況に応じて直接の担当医が担うべきものであることを明記いたします

さらに念を押すように、ガイドライン2022版「序章」の最後は次の文章で締めくくられています。

本ガイドラインは、動脈硬化のリスクを包括的に管理することで、心筋梗塞・狭心症等の冠動脈疾患や脳梗塞等の脳血管障害などの動脈硬化性疾患の発症予防および再発抑制を目指すために、動脈硬化リスクを管理する全ての医師、チーム医療関係者、保健行政担当者に活用いただくことを目的としている。

ただし、個々の患者の診断や治療の判断はあくまでも現場の担当医が決定するのが原則であり、必ず遵守すべき規定ではないことに留意されたい

もう一度書きますが、私は医学系学会のガイドラインとは学問的根拠・エビデンスがあり、その時点で最も信頼すべき病気の判定基準を提供して、各担当医に適切な医療処置を示すものだと思っていました。

私の過大な思い込みでしたね。

担当医はそれに従うべきで、勝手にガイドラインと外れた処置をして何か問題が起こった時、責任が問われる。だから、担当医は素直にガイドラインに従う。

ところが、今回のガイドラインは「必ず遵守すべき規定ではない」と明言しています。守らなくてもいいのです。担当医はご自分の責任で勝手にやってください、となっています。

日本動脈硬化学会はガイドラインのさまざまな矛盾を認めた上で、自ら責任を放棄した。

私にはそんな風に映りました。

筆者よりメッセージ

現在、健康で動脈硬化性疾患の一次予防(将来の発症予防)としてスタチンを飲んでいる方(特に女性)は、一度、ご自分のコレステロール値や他の既往症を確認し、さらに、スタチンの副作用も十分調べて、本当にスタチンを飲む必要があるのかご検討ください。

そしてもし、「中止」という判断になりましたら、私のこの記事をコピーして、主治医に申し出て下さい。先生のご判断で中止しても何も問題ありません、と。

ただし、既に動脈硬化性疾患が発症して再発防止等の二次予防のためにスタチンを飲んでいる方は別です。スタチンのメリットとデメリットを、主治医とよくご相談ください。この連載は、あくまでも「普通に健康な人」が健康年齢を延ばすための学習と実践記録であることを、付記しておきます。

(続く)

【次回】第2-54回・「新たな健診基準」を知っていますか? – 1

【前回】第2-52回・コレステロール治療は闇だらけ – 2

本連載は、本サイトに掲載した舟橋栄二さんの記事から、がん闘病に関する回を再配信したものです。時期に関する記載は2023年現在のものです。
(本連載記事一覧)がん患者よ、旅に出よう!
(スペシャル対談)私のリゾートライフの全体マップ
(筆者ホームページ)舟橋栄二「第二の人生を豊かに」

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