長野原町・嬬恋村・草津町。ガラ権の源流をたどる旅を終え、あとは草津町から千葉の自宅に帰るだけです。草津町の新名所「温泉門」をくぐって、山を下っていきます。
旅好きである読者の皆さまはご存知でしょうが、クルマで草津温泉に登り降りする30分程度の山道は、素晴らしい景色に恵まれ、特に秋の紅葉シーズンは見事です。かつてここを下った川沿いには「川原湯温泉 1」という古湯があり、渓谷の下から眺める紅葉の絶景の感動を、筆者は忘れられません。
しかしその思い出はかなり前の話。八ッ場ダムの開発により、川原湯温泉全体が沈んでしまった経緯は広く知られています。
軽井沢を逆さまから見る
ところで、関東に住む人々が浅間高原に行くには、まず長野県の軽井沢に行き、そこから北上するのが普通でしょう。そのため案内地図看板は「南から北に向かう」イメージで作られます。すなわち、北が上となる普通の地図の向きです。
ところがこの浅間高原に来れば、その逆さま、つまり北から南に向かうイメージで作られた案内図があり、筆者はとても新鮮な気分でこの地図看板を見たのです。
この地図では、群馬県の長野原町と嬬恋村が中心となり、その先に長野県の軽井沢が描かれています 2。学生のころ、自分の知っている世界地図と、欧米人の見るそれが異なることに驚いたことを思い出します。
皆さまも一度、このいつもと方角が反対である北軽井沢地図から、本連載の群馬シリーズを振り返ってみていただければと思います。
ロマンチック街道
八ッ場ダムの建設には賛否両論がありますが、草津に行くための車のアクセスだけで考えれば、ダム建設前の国道は曲がりくねり、危険なカーブもありました。ダムの完成で道路は整備され、その心配は消えました。群馬県渋川市に至る「日本ロマンチック街道 3」は、とても走りやすい道路となっているのです。
筆者は新設道路となり走りやすくなった群馬県のロマンチック街道を東に進み、豪快なジオパークとなる榛名山 4 に向かいます。榛名湖畔に榛名神社を訪ね、ガラ権巡りの成功のお礼をした上で、ベルツ博士が別荘を作った伊香保温泉街に至ろうという、「草津 - 伊香保」の帰り道ルートです。
ところが筆者の頭に、ふとひとつの古いガラ権施設の記憶が蘇りました。この榛名の地にガラ権施設はあったのでしょうか。答えはYES。
そのあまりにマニアックで、筆者ですら会報でしか見たことがなく、実際に行った人を聞いたことがないというミステリアスな施設。「ホテルジャパン榛名 5」です。
西榛名別荘地
榛名山は大昔の火山で、岩場好きのトレッキング愛好者が行くところとしては有名なのでしょうが、一般的には美しい榛名湖畔 6 だけが注目されるスポットです。筆者は神社好きなので榛名神社のことは視野に入りますが、25年来のジャパン・トータル・クラブ 7 会員である筆者ですら、実はこの時(2025年)まで、ホテルジャパン榛名がどこにあるのかを知りませんでした。
当然、美しい榛名湖畔にあるのだろうと思っていたのですが、全然、違いました。
もちろん、スマホのナビで目的地を設定します。ところが見当たらない。筆者は榛名湖畔周辺の宿やリゾマンを手がかりに探したのですが、これが間違いで、時間を無駄に使いました。
そしてようやく見つけたその場所は、榛名湖からかなり離れた山林の中にある「西榛名別荘地」であることがわかりました。
そしてその場所は、この連載での最重要プレーヤーの一社「紀州鉄道」の関係者が切り開いた「伊香保オードランド」8(磐梯観光開発が分譲)のすぐ近くにありました。近辺には、「ヤマギシズム 9」の方々も住んでおられることから、いかに世間から隔絶された場所であることも、理解いただけると思います。
早速ナビで住所を入れ、ルートを検索しました。航空写真やストリートビューでは位置を確認できません。目的地の住所で目的地を指定して進むしかありません。
途中、「大戸関所跡 10」というのがあることがわかりました。ここは草津温泉に至る道中で重要な関門であったことが分かり、こちらも訪問。
そしていよいよホテルジャパン榛名を目指します。
原野を行く
まさに原野林のような奥地に入っていきます。頼りのナビはスマホの電波が不安定。道は車が一台やっと通れる程度の、荒れた落葉だらけの山道です。筆者は迷い、あぜ道のような狭い道を進んで行き止まりにも遭遇。道は狭く、路肩も緩いので、バックで戻るしかありません。
この連載で筆者は全国各地を周回していますが、今回は最高レベルに到達が難しい場所でした。別荘地として開発されたこの地は、ほぼ全てが30年以上放置されてきたのでしょう。木々は成長し、道路の落葉は掃除されず、入り込むには危険な状態でした。
筆者は廃墟や酷道マニアというわけではありませんから、車もごく一般的なものです。バックで戻りながら、さすがに到達を諦めようかと思ったのですが、なんとか気を取り直し、落葉道を進み直したのでした。
そして頑張った甲斐あって、筆者の目の前にホテルジャパン榛名らしき廃墟が現れてきました。
発見
積る落葉の多さから、建物手前にクルマを停め、最後はかつてのホテルに向かって歩きます。
ジャパン・トータル・クラブは、ガラ権中唯一の、合有制(すべてのクラブ資産を、会員全員で所有する 11)です。本施設は売却したとの話は聞いていませんので、本クラブ会員である筆者の持ち物であると言えます。
ですから不法進入ではありません。落葉・草木をかきわけ、入口から階段を上り、玄関に到達したのでした。
筆者がジャパン・トータル・クラブに加入したのは2001年でした。当時からの会報は、ほとんど捨てていません。本稿を書くに当たって、ざっと見直してみたのですが、この榛名のホテルについての記載はありませんでした。
ただし、当時のパンフレットや案内冊子には、本施設が「ジュニア団」の拠点として、必要の都度、営業すると書かれていました。
ジュニア団
ジャパン・トータル・クラブの会員はすべて個人会員で、非常にファミリー志向の強いクラブです。会員間の交流を深めるイベントも多数開催されてきました。会員以外の一般利用は、たとえ会員の紹介でも、お断りに近いような不利な料金体系です。
このクラブはその設立趣旨に基づき、会員の子どもを集めてアウトドアに親しむイベントを何度も行っています。その活動は2025年の今でも続いています。今と比較すればその昔は、相当の数の会員の子女たちが参加してきたことでしょう。
そのアウトドア活動が「ジュニア団」です。ホテルジャパン榛名は、造られた当初は普通に会員が利用するホテルであったでしょうが、ある時から、そのジュニア団の拠点として利用されるようになったのでした。
21世紀になり、筆者が会員になってから後のジュニア団の活動拠点は、この榛名ではなく、栃木県の日光霧降高原の施設に移ったのでした 12。
そしてホテルジャパン榛名は、誰にも利用されなくなって25年以上が経過した、ということになります。
もう再利用はされないのは明らかですし、既にジャパン・トータル・クラブの施設案内には掲載されていません 13。建物は放置されていますが、どう見ても誰かに迷惑をかけるものでもありません。このまま解体もされないと思います。
本施設は敷地が広く、パブリックスペースもゆとりをもって造られているので、このまま知られることもなく森林に覆われ、後に発掘されるにも時間がかかりそうな、歴史と自然の双方から深く過去に埋もれる、そんな施設となるように思います。
ということで、珍しいものをお見せしました。この西榛名の別荘地は、かつて紀州鉄道の一派が販売した場所でした。およそ50年前、全国の津々浦々に広がった別荘地開拓の一つとして、首都圏から北軽井沢に至る玄関口の別荘地としてこの原野が切り開れ、そしてジャパン・トータル・クラブもこの地に施設を開いたのでしょう。
観音様の祝福
ジャパン・トータル・クラブは、一度も倒産もせず、資本も変わらず、現在も設立当初からの経営陣で健在であるという、稀有な存在です。これにて、群馬県のガラ権源流巡りは終了となりました。
後は帰宅するのみですが、滅多に来ない場所です。名刹「榛名神社 14」や榛名湖畔に立ち寄りながら、帰宅するとしましょう。
伊香保温泉の中心部を抜ければ、以前、東急が「伊香保東急ビラ 15」を運営していたことを思い出します。旅の最後に、古刹「水沢観音 16」にも寄ってみました。
振り返れば、この群馬県ガラ権巡りは筆者としてとても有意義なものでした。それを祝福してくれるように、観音様の敷地全体は、最高の桜の満開の時期。筆者はしばし、桜を背景に写真を撮る賑わいを見ながら、立ち止まったのでした。
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同様の地図(南が下)は、例えば以下のページに掲載されている。
・自動車で来られる方 | ウルベビレッジ(軽井沢レンタルログコテージ) ↩︎ -
本連載では過去に、以下の施設を取り上げている。クラブに関してはその記事ならびに公式ホームページを参照。
・ホテルジャパン箱根 | かつてのトップ企業が箱根に築いた別邸 | 会員制ホテル今昔物語 – resortboy's blog
・株式会社ジャパン・トータル・クラブ ↩︎ -
売り出し時の名称は「高原休暇村別荘地・伊香保オードランド」。最寄りの中之条駅から17キロ、高崎から30キロという立地で、1972年の分譲価格は平米3,000~7,000円(出典:日本の別荘地、富樫敏、日本証券新聞社、1973年) ↩︎
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ジャパン・トータル・クラブは会員が参加できるイベント開催に注力するリゾートクラブとして知られ、その理念はホームページ上で強く語られている。現在のジュニア団活動は「ラ・ポーム霧降」が中心。
・クラブ三大テーマ | JTCCジャパン・トータル・クラブ
・ホテルジャパン日光 / ラ・ポーム霧降 : イベント・レジャー情報 | JTCCジャパン・トータル・クラブ ↩︎ -
上記のように何故か施設個別ページは現存する。 ↩︎
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以下の2006年の記事に、当時の東急ホテルズの9つのリゾートホテルが紹介されている。すなわち、東京ベイホテル東急(現星野リゾート 1955 東京ベイ)、白馬東急ホテル(現存)、蓼科東急リゾート(現 蓼科東急ホテル)、今井浜東急リゾート(現 伊豆今井浜東急ホテル)、下田東急ホテル(現存)、宮古島東急リゾート(現 宮古島東急ホテル&リゾーツ)、ホテルグランデコ(現 EN RESORT Grandeco Hotel)、伊香保東急ビラ(現 大江戸温泉物語Premium伊香保)、鹿教湯温泉ホテル東急(現 大江戸温泉物語 信州鹿教湯 藤館)の9館。
・とっておきたいとっておき「大人の休息」 | 番外編 – resortboy's blog – リゾートホテルとホテル会員制度の研究 ↩︎















(筆者から、連載ご愛読者の皆様へ)
日本型会員制リゾートの源流を探っております連載の第二シーズン、最も重要なエリアの一角となる「群馬県」の旅を終えたところで、しばらく休ませていただいていますが、来週早々には、いよいよ核心となる「福島県南部から栃木県を巡る旅」の原稿に着手し、年内にも何本かの記事をアップさせていただきますので、もう少しお待ちください。変化が加速しているガラ権界隈の動きを最新の測量結果も織り込んだ内容になるよう努めて参ります。
連載をお休み中の筆者の近況ですが、アメリカのメジャーリーグ(タイムシェア会員権)を活用する全米周回の旅、先週末今年4回目となる最終回から帰って、荷解きをしながら雄大な景色を思い出し感慨にふけっているところとなります。今回は何度目かとなる、ネバダ・ユタ・アリゾナ・ニューメキシコ・コロラドの5州にまたがる「グランドサークル」を走ってきました。
https://www.grandcircle.org/
こちらはアメリカ観光の中でもダントツのハイライトで、何度行っても見飽きることはありません。各州各地に多数のタイムシェアリゾートが存在していますが、毎年4月中旬から6月中旬、9月中旬から11月中旬が最もオフシーズンとなり、コスパ的に交換等利用に最適(ピークシーズンの3分の1程度)です。1週分の権利が3週分以上で使えるため、どこかを拠点にしてゆとりあるスケジュールで回れるので、この時期をお勧めします。
zukisansuさん、凄いですね。アメリカのタイムシェア会員権を活用して、ネバダ・ユタ・アリゾナ・ニューメキシコ・コロラドの5州にまたがる「グランドサークル」をドライブしてきたとは。私も憧れました。海外のタイムシェア会員権。
第一候補はマリオットのタイムシェアでした。この権利を中古会員権市場から購入して、インターバル・インターナショナル(II)に加入してオフシーズンに格安で交換利用する。そして、II加盟の世界のリゾートクラブを1週間単位で格安に泊り歩く。ビーチリゾート、山岳リゾートetc、夢のリゾート世界が待っています。まさにzukisansuさんがおやりになっている旅です。
私は旅に出るとすぐに盛り上がるタイプで、マリオットのタイムシェアに本気になったのは今から9年前、2016年にプーケットにある「マリオットバケーションクラブ・プーケット」に1週間滞在した時です。とにかく、もの凄い施設です。カルチャーショックを受けました。その時の旅行記2編をアップしておきます。ちらっと御覧ください。
◎マリオットバケーションクラブ・プーケット滞在記1(マイカオビーチクラブ編)
https://4travel.jp/travelogue/11166328
◎マリオットバケーションクラブ・プーケット滞在記2(プーケットビーチクラブ&JWマリオットプーケット編)
https://4travel.jp/travelogue/11167518
あれから9年が過ぎ、結局、買っていません。私は「マリオット・ヒルトン」の上級会員に夢中になり、ステータス維持のホテル修行にまい進しました。でも、今でも海外のタイムシェアリゾートは憧れています。でも、もう無理でしょう。(涙)