2020年の開業を目指している横浜ベイコート倶楽部は、会員制ホテルと一般ホテルとのハイブリッドで営業すると発表されていましたが、その一般ホテル部分はリゾートトラストがハワイ・オアフ島に所有する高級ホテル「ザ・カハラ」のブランドを冠することが発表されました。
この発表は、リゾートトラストの転換点を示すものとして、大変重要に思います。長くなりそうですが、順次、そのポイントについて説明します。
冒頭の写真は現在のパシフィコ横浜とヨコハマ グランド インターコンチネンタル ホテルです。近く、現地取材に行きたいと思っています。
まず、このホテルの計画概要は以前に記事にしているので、以下をご覧ください。
resortboy's blog – リゾート会員権ブログ – 横浜ベイコート倶楽部が2020年開業へ
最初に、一番気になる、会員制と一般ホテルの切り分けがどうなるのかについて説明します。それぞれのホテルの正式名称は。「横浜ベイコート倶楽部 ホテル&スパリゾート」(以下ベイコート)、と「ザ・カハラ・ホテル&リゾート 横浜」(以下カハラ)と決定しました。室数はベイコートが138室、カハラが146室で、ほぼ同規模のホテルとなり、建物は一体化しているものの、基本的に別々のホテルとして営業することになりそうです。
「どんな風に別々か」は、以下を見てください。これは横浜市文化観光局の発表資料から引用したものですが、海側がベイコート、陸側がカハラと、縦割りで完全に切り分けて運営されることが示されています。
(画像出典:横浜市文化観光局)
このプロジェクトは横浜市の採択で進められているもので、市からの数々の「要求水準」のもとに進んでいるものです。カハラ(一般ホテル)は、MICE施設としてのコンベンション需要とセットになっているのが建前です。ですから必然的に新しいMICE施設側に一般ホテルが位置し、その結果、海側はベイコートが取ることになりました。
リゾートトラストの発表資料には、カハラについて以下のように説明されています。
海を前にしたロケーションもハイエンドブランドのリゾートにふさわしい
しかし、実際にそうなるかどうかは、少々疑問が残りそうです。パシフィコ横浜が発表している新MICE施設の資料から完成予想図を引用します。
(画像出典:パシフィコ横浜)
これを見ると、海側を取っているベイコートはともかく、カハラの方は裏側と言わざるをえず、眺望についてはちょっとどうなんだろうと感じてしまいます。
海側から見たところをGoogle Mapで描画してみたのがこちらです。
画面真ん中の右端にこの2つのホテルが合体した形で建設されます。わずか14階建てであり(インターコンチは31階、ロイヤルパーク(ランドマーク)は70階)、周辺の建物とのボリューム感の比較においては、かなり見劣りがします。
ちなみに画面中央の滑走路みたいな部分は耐震バースといって、災害時に海や空からの緊急救援物資の輸送をするための施設で、その上が臨港パークです。これらに建物が立つことはありません。また、海から見てホテルの後ろ側はタワーマンション街で、隣接した街区には大型ディスカウントストア「オーケー」などもあります。
陸側からの完成予想図を横浜市文化観光局の発表資料から引用します。真ん中が新MICE施設で、左の薄べったいのがカハラです。
(画像出典:横浜市文化観光局)
低層であるせいか、ロビーは上層階に設けてインパクトを演出するようです。報道発表資料からカハラの「スカイロビー」の完成予想図を引用します。
(画像出典:リゾートトラスト報道発表資料)
このように、食パンをスライスしてずらしたような2つのホテルですが、付帯施設は以下の表のように共有します。表はリゾートトラストの報道発表資料からの引用です。
イタリア料理と日本料理のレストラン、スパ(インドアバス)、トリートメントサロン、インドアプール、トレーニングジム、ボールルーム、ショップが共有です。ラウンジ・バーはそれぞれ独自に用意され、またベイコートには独自の中国料理レストランが作られます。
長くなったのでここらで次回にしたいところですが、写真がなくて次はいつ書けるかわからないので、もう1つ、話題を続けてしまいますね。エクシブ会員にとっては、ここからが大事なところです。
報道発表資料で、リゾートトラスト社はこう宣言しています。
“カハラ”ブランドにおいてホテルの展開を目指すエリアは、当社の17万人の会員様や日本人の渡航が多い国・地域、その中でも当社の高級施設・サービスに適したエリアを中心に検討しており、沖縄をはじめとする日本国内の展開のほか、比較的日本から近いアジア太平洋エリアで言えばバリ、プーケットなどの南国リゾート地、シンガポールや香港、台湾、バンコクなどのシティエリアを優先に検討をしております。
このように、カハラブランドを横浜を皮切りに、日本や世界で展開すると発表したのには驚きました。
さらに2017年10月16日の記者会見で同社社長が、以下のように語ったとされています。記事を見ると、ハワイからカハラの総支配人も来日しており、記念撮影用にプレートまで用意して大々的な会見を行ったようです。同社としてはとても珍しいことで(同様のことは記憶にありません)、それほど重大な発表であったことがわかります。
社長の発言を、日刊建設通信新聞による報道から引用します。
10年かけて(計画候補地のうち)最低5カ所には進出したい。その後は年間1棟以上を目指す
(引用元記事)「カハラ」を世界展開/第1弾・横浜は鹿島で着工/リゾートトラスト | 建設通信新聞Digital
この発言には、大変驚くとともに、エクシブ会員として暗澹たる気分にならざるを得ませんでした。
果たして、この10年でエクシブはいくつ開業したでしょうか。純粋な新規開業は4件、既存施設の拡張が3件です(注)。つまり、社長の発言は、リゾートトラスト社は全力でカハラ、つまり高級一般ホテル事業に舵を切ると宣言したのと同じです(もしそうでなければ、無責任な発言ということになってしまいますね)。海外展開は外注するから国内の開発リソースには関係ない、という見方もあるでしょうが、自分は同社の株主でかつエクシブオーナーというありがちな同社のステークホルダーですが、このような発表をして大丈夫なんだろうかと、かなり心配になっています。
思えば、ラグーナベイコート倶楽部はエクシブとして計画されながらも、ベイコート倶楽部に衣替えして売り出されました(関連記事:resortboy's blog – リゾート会員権ブログ – ラグーナベイコート倶楽部が2019年開業へ)。リゾートホテルが曲がり角に来たことは自分も強く肌で感じていて、このブログでその様子もリアルタイムでご紹介してきましたが、まさかこんなに早く事業主体側から「おれは別の場所に行くよ」と宣言されるとは思いませんでした。
これで、湯河原離宮がこれまでにない妙な出来栄えだった訳が、ようやく理解できたような気がします。エクシブは創業者の類まれなるセンスで数々の質の高いリゾートホテルを作り上げてきましたが、湯河原で感じた違和感は、「作り手が別の方を見ている」ということであれば、とてもよく理解できます。エクシブファンとしてはさみしい限りですね。
(注)
2008年 東京ベイコート倶楽部
2009年 エクシブ山中湖 サンクチュアリ・ヴィラ
2010年 エクシブ箱根離宮
2011年 エクシブ有馬離宮
2012年 エクシブ軽井沢 サンクチュアリ・ヴィラ ムセオ、エクシブ軽井沢 パセオ
2016年 エクシブ鳥羽別邸
2017年 エクシブ湯河原離宮
先月ハワイへ行って、カハラリゾートも訪問した。ロケーションも良くて素晴らしいホテルだと思ったけど、リゾートトラストのリも無かった。本当に買収したの?!カハラブランドで世界展開するなんて、凄いけどホンマかいな!
カハラのブランドでは、世界的な知名度に難があるように感じます。
私はハワイをリピートしてきましたが、初めて耳にした時、
華原ホテルかと思いました(華原朋美から推測)。
最近、リゾートトラストの話題になると、
つい辛口にならざるを得ません。
子ども同伴の家族でベッド数など広く使えることがエクシブの数少ないメリットの一つなんですが、ベイコート倶楽部の場合、子どもはゲストになってしまいます。
エクシブでは会員権を複数持つとプラス一枚オーナーカードをもらえて、家族に使えますが、ベイコートでは会員権を複数持って登録枠を増やしても、家族でも20才未満はオーナー扱いできない規約があるそうで、同伴の子どもは絶対にゲストなんです。
行く度に、スタッフから子どもをゲスト、ゲストと呼ばれるのは本当に興ざめしてしまいます。そして、子どもにベイコートだけには行きたくないと言われる始末です。
いろんなものを値上げしたにもかかわらず、無駄なスタッフが多いだけで肝心のサービス内容は変わらずで値段に見合わないですし、儲けばかり考えず、もう少しオーナーのことを考えてほしいですね。巷のホテルは色々と考えているのに。
ベイコートを売る際に皆さんにはそんなこと言っているんでしょうかね。
エクシブ鳥羽本館の大規模リニューアルに驚き、久しぶりにリゾートトラストを見直したのですが、あれは単に新規開業する鳥羽別邸のためだけだったのですね。
今後は経営資源を海外に投資し、アジアの富裕層を取り込もう、という新戦略がはっきりしました。
これで「既存施設の大規模リニューアルや既存会員へのサービスアップはない」こともはっきりしましたね。
しかし、すでに熟してしまった(飽和状態の)アジアのリゾート地や都市に、今から進出していってどうするの?という感じです。あまりにも遅すぎませんか?
アジアの不動産バブルが崩壊したら、道連れになります。
先日、東京ベイコートに宿泊しました。
オールドベイコートですね、3離宮の方が良かったです。
今後の展開は色々と耳にしていますが、オールド系は置いといて、新規開業とハイメデイックへの注力が進む予感がします。
年を取るにつれ、価値観が変り、どこに行っても同じ名古屋式美麗にも飽きがきつつあります。
蓼科くらいでしょうか、場所とコンセプトがはっきり見えるのは、、、
つまり、そこに行く動機や高揚感が薄れつつあり、ほれ新しいの出来たからそっちに行きなよと言われてもなんだかなぁと感じています。
建替する訳にはいかないでしょうし難しい問題ですね
ただ、どのリゾートホテル運営会社にも言える話なので先駆者として踏ん張り所なのでしょう、頑張って欲しいものです。
>しかし、すでに熟してしまった(飽和状態の)アジアのリゾート地や都市に、
今から進出していってどうするの?という感じです。あまりにも遅すぎませんか?
アジアの不動産バブルが崩壊したら、道連れになります。
逆に、国内市場にとどまっていることのほうが
ゆでガエル
になるのではと思いますけど。
一つのアイディアとして、
温泉大浴場をもつリゾートホテル
を海外展開する
というのはどうでしょうか?
上海、香港、台湾、シンガポールなどの富裕層が
日本で体験できるのと同じような
温泉大浴場をもつリゾートホテルが
身近にあれば訴求力があるのでは?
と思いますけど。
もちろん海外向けに
水着着用での利用もできるようにすればなおよいですね。
rtの社長が何かの雑誌のインタビューで語っていたところによると、今までは国内大都市を起点に2泊程度で行けるリゾート開発を中心に行ってきたが、これからは国内は1泊2日がメインとなり、海外は1週間程度滞在できる施設を作ると言っていたように記憶しています。カハラの展開は沖縄も含めてこの海外構想の柱となるものだと思いますが、沖縄もアジアリゾートもすでに後発組です。当然良い場所が残っているとは思えず、新規に作れば沖縄もかあアジアもrt得意の立地的にはちょっとハズしたものになることでしょうし投資もかさみますね。既存施設の買収リブランドが中心になるように思います。