日本海若狭湾ガラ権街道をゆく

設立以来、クラブ運営に困った様子もなく、老朽施設の閉鎖はあるものの、大規模リニューアルもした施設もある。預託金型の施設においては、敷地・建物・付帯施設をすべて自社所有し、運営も直営というプライドあるものであり、その安心感ある企業体質が、会員から信頼を得てきました。

今回のご紹介は、かつての「ジャンボクラブ」である現「ザ グラン リゾート ¹」の御一行様より、筆者が「日本海若狭湾ガラ権街道」と名付けている、東は福井県敦賀市にある景勝地の「三方五湖」（みかたごこ）、真ん中の「天の橋立」、西は兵庫県城崎市温泉地の「城崎」の3施設を取り上げます。

福井県三方郡美浜町　ザ グラン リゾート 三方五湖 ²

若狭湾は、日本海側の北陸エリアと山陰エリアの中間にあって、大きくへこんだ入江です。

この一番東が敦賀市であり、今年開業の北陸新幹線延伸部分の終点となりますが、その敦賀市の西隣に三方五湖と呼ばれる景勝地があり ³、ドライブルートがレインボーラインとして整備されています ⁴。

グラン三方五湖は、そのドライブルートの入口付近に位置し、周囲に民家の集落がある以外何もないところであることから、22室と小ぶりの施設でありながら、走行中に目立って見えます。

京都府宮津市　ザ グラン リゾート 天の橋立 ⁵

前回、京都府宮津市が南北に分かれた市域を特徴とし、その南北は全長3.6キロに及ぶ天橋立という湾口砂州とそこに自然に生えた松林の遊歩道で結ばれるのみ、という話をしましたが、グラン天の橋立はこの北側、元伊勢籠神社側に位置します。

比類なき好立地で、天下の名勝・天橋立の北側正面と言って良い場所です。この施設も22室の小ぶりでありながら、施設全室から天橋立を目の前に見ることができ、天橋立を散策するのに最適です。一方で、天橋立を歩いている人は必ずこの施設の存在を目にすることでしょう。

また夜は、天橋立全体がライトアップされるイベントが開催されていることから ⁶、楽しみは昼間だけではありません。

なお、本記事のトップ写真は山の上にある成相寺への登り口、弁天山展望所からの撮影ですが、水面を走る船の下側に、グラン天の橋立が見えるのがわかるでしょうか。

兵庫県豊岡市　ザ グラン リゾート 城崎 ⁷

兵庫県は瀬戸内海側（淡路島を含む）から日本海側まで、南北の海に面する広域な県です。若狭湾の入江の西側は、但馬海岸と呼ばれる東西約50kmの岩礁海岸線であり ⁸、風光明媚かつ温泉名所、そして夕日の綺麗な場所で、但馬牛とカニ（ズワイガニでも特上の松葉ガニ）の産地として、全国のグルメファンにその名を知られています。

城崎温泉郷は、志賀直哉の描くレトロな雰囲気のある有馬と並ぶ程の兵庫県有数の浴衣そぞろ歩きに適した温泉街です ⁹。

グラン三方五湖が22室、グラン天の橋立も22室と、全く同規模であり、海に面した立地や建物形も似ている双子施設のようでありますが、こちらのグラン城崎は海岸線からやや奥に入り、かつ城崎温泉駅側とは川を隔てた森に囲まれたような場所にあります。開業も両者より遅く、やや大きくて新しい、27室の施設です。

カニの道

以上3施設をざっと見て歩きました。地図で分かる通り、若狭湾は、昔から海の軍事や漁業漁獲で大事なだけでなく、風光明媚・グルメでツーリズム的に日本の重要拠点の一つであり、ガラ権施設も含めドライブ観光にも適するので、筆者はここを数回行き来するうちに、勝手に「日本海若狭湾ガラ権街道（カニの道）」と名付けました ¹⁰。

グラン的にもこの3施設をカニの味覚拠点としているようで ¹¹、利用料金を見ると、11月から4月は冬のオフシーズンにもかかわらず、カニのシーズンとして週末料金が高くなっていて納得です。

ジャンボクラブからザ グラン リゾートへ

ザ グラン リゾートは、現社名「HESTA大倉 ¹²」という大阪市の不動産デベロッパーが設立・運営しています。1962年創業、手堅い経営でバブル時期も乗り越え、運営母体が設立以来一貫して変わらなかった珍しい老舗クラブです。リセール価値については他の老舗クラブ同様に厳しいものがあるでしょうが、会員となっても解散などのリスクは少ない優良ガラ権と言えると、筆者は判断しています。

筆者が本クラブで一番興味深いところと考えるのは、施設展開の場所です。

運営元の基盤とする関西においては、ツーリズム志向で、他のクラブがない観光地、かつ、かなり特異な場所で預託型施設を展開。関西の有名観光地と関東においては、他のクラブとも競合する保養地（普通に馴染みのある場所）で、共有型施設を出してきていることです。

現在の施設展開

具体的に見てみますと、現時点で、もともとのジャンボクラブが預託金制で建てた施設が8施設（箱根・赤穂・有馬・近江舞子・天の橋立・城崎・三方五湖・和歌の浦）、ジャンボクラブが共有制に移行してから、共有制の小型施設（エレガンテ）が6施設（軽井沢・伊豆・熱海・京都・淡路島・白浜）、共有制の大型施設（プリンセス）が2施設（有馬・富士河口湖）、さらに提携施設（函館・沖縄・志摩・賢島＋東南アジア）というリゾートクラブとなっていまして、非常に広域に拡がっています ¹³。

個々の施設は小ぶりな施設が多いですが、それでも、総室数は1,000室に近い大規模クラブです。

預託型の最新は「近江舞子」（「琵琶湖」再建築）ですが、以前の「芦ノ湖」は大幅リニューアルで「HESTA箱根」として再生。

共有型大型の最新は「富士河口湖」ですが、それ以外の既施設も随時リニューアルしています。母体が建設会社であることから、こうした改修はお得意であるはずです。

また筆者の記憶では、11の老朽施設（志摩・鳥羽・湯郷・下呂・信州・伊良湖・浜名湖・加賀・葉山・鬼怒川・九州宮崎）がクローズとなっています。

本クラブは、開設以来45年以上、会員のみ（途中から自社の建設・販売したマンションの購入者などの関係者には解放）の利用しかできないクローズドな組織だったので、謎に包まれていましたが、2020年に「大倉クラブ＆ホテルズ ¹⁴」として一般開放しました。

現在では一般予約でも利用できようになりましたが、会員本位の姿勢と独立運営ポリシーは強く、日本リゾートクラブ協会にも一度も加盟していませんし ¹⁵、当然ながらRCI（かつてのRCIジャパン）などへの参加もしていません。