リゾマン転用の北軽ガラ権、原野に佇む

「会員制ホテル今昔物語」は、35年に渡ってリゾート会員権についてウォッチされているzukisansuさんによる連載です。日本で独自の発展を遂げたリゾート会員権、すなわち「ガラ権」の歴史をたどることで、日本的文化とは何か、日本人とは何かを、過去に学び未来を見通す―そんな奥行きのある連載として、僕から特別にお願いし、zukisansuさんにしか語れないこのテーマでご執筆いただく運びとなりました。どうぞご期待ください。(企画・制作:resortboy)

快適な天候の中、群馬県へ向かった筆者は、JR長野原草津口駅南側から浅間山にかけて広がる「北軽井沢」(別名「浅間高原」)と呼ばれる広大なエリアに点在する大規模ガラ権施設を5か所以上めぐり、それぞれの最新状況を確認しました。前回からはじまった北軽井沢シリーズは続きます。

このエリアは 1、ほぼ南北に真っ直ぐ延びる国道146号線によって東西に分けられています。前回は東側の長野県境に最も近い森の中にある「プレジデントリゾート軽井沢」を取り上げましたので 2、今回は2か所目として、国道を跨いだ西側に位置する「ホテル軽井沢1130 3」を訪問します。

この旅で筆者が利用した宿泊施設は、完全リニューアル済みの「太平洋クラブ軽井沢リゾート 4」(1975年開業、このエリア最古参)の付帯ホテルでした。前回言及した通り、この素晴らしい浅間山の眺望に恵まれたホテルは、読者の皆さまにとっても利便性が高いと判断し、本稿の末尾で再度ご紹介します。

エリア理解と立地アイディンティティ

北軽井沢の会員制ホテル群を引き続き取り上げるにあたり、場所への理解を深めるため、まず地名や行政区分を確認しておきたいと思います。全体が標高1,000メートルを超える広大で平坦な高原である浅間山の北側は、誰もが知るブランド別荘地「長野県の軽井沢」の北側でもあるため、全体的に通称「北軽井沢」と呼ばれています。

しかし、車で走り回っていると、「北軽井沢」のみならず、「浅間高原」「軽井沢高原」「嬬恋」「奥軽井沢」などさまざまな名前の看板が目に入り、頭が混乱します。しかも、古くからの開発やバブル期の乱開発によって地面が細かく切り刻まれ、優に20を超えるさまざまな別荘分譲地名が付いているので余計に厄介です。

連載を続ける中で順次場所の知識を広げていくこととして、今回は行政区分的に見ておきます。

全体を大きく見て、西が「嬬恋村」、東が「長野原町」です。前者「嬬恋村」の北半分が「嬬恋高原」、南半分が「浅間高原」。そして後者「長野原町」の北半分が「長野原」、南半分が「北軽井沢」と大まかに区切って覚えれば、迷わなくなります

これは公式見解ではなく、観光マップなどでは、長野原草津口駅までの東西を横切るJR線の北側・草津や万座方面までの全体を「浅間高原」とするものもありますが 1、それでは全く自分のいる場所が把握できないほど広大になってしまいます。筆者はJR吾妻線以南を北軽井沢エリアと捉えています 5

このようにエリア区分が曖昧なため、神経質な筆者としては、ほぼ正確に地名・区分である「北軽井沢」をそのまま名称に使用しているホテルと、実態とは異なる「軽井沢」あるいは「軽井沢高原」といった長野県の軽井沢エリアの拡張と捉えられる(誤認させるような)名称を使用しているホテルがあることが気になります。

現地に行けばすぐに分かりますが、長野県の軽井沢と群馬県のそれは雰囲気が全く異なります。どちらが良い悪いということではないのは言うまでもありません。人それぞれの好みの問題です。

前回取り上げた鹿島プレジデントは「軽井沢」、そこに寄生していたハーヴェストクラブは「軽井沢高原」、太平洋クラブのゴルフ場は「軽井沢」、すぐ北の大成建設のゴルフ場は「軽井沢高原」を名乗っていました。これらに長野県の軽井沢の延長であると想起させたい意図があるのは明らかです。

ホテル軽井沢1130

それでは行政区分的に見て、正確には長野原町の北軽井沢にある前回のプレジデント軽井沢から、嬬恋村の浅間高原にある「ホテル軽井沢1130」に向かいます。

こちらのリゾートクラブ名(ガラ権名)は「軽井沢倶楽部」です。ホテル名だけでなく、このクラブ名もセットとなって長野県の軽井沢に関連すると迷わせるネーミングです。

「1130」はホテルの所在地の標高が1,130メートルであるということを示します。スキーリゾートでもないのに標高が高いです。夏は涼しくて良いとしても、冬は極寒です。

余計なお世話ですが、ネーミングは普通に浅間高原を名乗るのではだめだったのか、と思ったりします。ただ、このガラ権の由来を調べるとその迷いの根源は少し納得できるものがありました。

選ばれし者が集うような大掛かりな名称のこの軽井沢倶楽部。本ガラ権はわずか2施設で展開を終えましたが、マニアックな興味で探ってみると、このホテル軽井沢1130(1995年7月開業)は2番目のクラブ施設で、なんと、南西諸島の旧「軽井沢倶楽部 ホテル石垣島」6(1993年12月開業)が第1号ホテルでした。

このクラブの関連会社としては、沖縄本島東海岸の「宜野座カントリークラブ」7(2004年にパブリックで開場)があります。この展開の仕方にも驚くのですが、混乱するばかりで長続きはしなかったはずです。

その結果、2006年に全てを、米国系ファンドの「エートス 8」に身売りしています。よって、ガラ権的には破綻は経験していないことになります。

エス・バイ・エル

創業および当初の運営は、大阪に本拠のあった「エス・バイ・エル」というハウスメーカーです 9。独自の建設工法で名を上げた有名企業でした。バブル期にハウスメーカーがガラ権を立ち上げたのは本連載でこれまでいくつも目にしており、本クラブもその1つと言えます。

しかしバブル期とはいえ、1990年になってから実際の行動に移し、施設建設・会員募集を始めたのでは遅すぎると言えました。

第1施設のホテル石垣島は50室と小振りです。当時石垣島にはリゾートホテルがほとんどなかったこと、そして新石垣空港(愛称:南ぬ島石垣空港)の計画と着工(2006年)が期待される時期でもあったため、好調な滑り出しだったかもしれません。

しかし第2弾となる北軽井沢においては、いかに運営元がしっかりした企業であっても、販売タイミングを逸していたと思われます。エス・バイ・エルは群馬県を本拠とするヤマダ電機の傘下「ヤマダホーム」9 となり、事業の見直しのため、上述の通り、2006年にリゾート部門を全てエートスに売却します。

本クラブについて取り上げるのは今回で終わりですので、北軽井沢のホテルの話をする前に、第1号施設としてのホテル石垣島のその後を先に書いておきます。

エートスによって6年ほど運営された本ホテルは、2012年沖縄地元ホテル業の「かりゆし 10」に売却され、かりゆしブランドから、さらに格上の「エグゼス」へとリニューアルされてきました 6

しかし今年2025年、地元の「琉球キャピタル」に再び売却。今年末には別のオペレーション会社「ネストホテルズ」によって、その最高ブランドとしてリニューアルオープンするそうです 11

築30年を超える建物ですが、元の造りやガラ権的な部屋の広さは十分で、今もって石垣島では輝きを放っているようですね。

リゾマン転じて

筆者はリゾートマンションにも興味がありますが、北軽井沢エリアには大規模なものは5指で数えられるほどしか造られていません。嬬恋高原では1993年に竣工した「グランナチュール浅間高原 12」が目立ちますが、これも発売タイミングが遅く、完売に相当苦労していた記憶があります。

そんな中、本稿の主役、ホテル軽井沢1130は、当初リゾートマンションとする計画だったようです。

推測ですが、比較的近くのグランナチュールの販売苦戦を見て、急きょホテル、それも資金回収の早い会員制として販売にすることにしたのではないでしょうか。そして、軽井沢倶楽部の第2号としてデビューしたのです。

本ホテルは、「せせらぎの里」別荘分譲地 (小ぶり)に隣接し、周りは「すずらん村」13 別荘分譲地(比較的大型)となる、別荘分譲地を分ける道路の交差する一角に所在します。両別荘地はいずれもメンテナンスが良いとは言えず、また本ホテルは低層なので目立ちません(8階建てだが斜面に建つので6階程度にしか見えない)。

それに木々に紛れるような地味な茶系の外観。各室が50平方メートルを超える上に、236室(現在)ともなる超大型ホテルなのに、どこにあるのか分からず、到達には迷うかもしれません。

何と現役、1130再訪

北軽井沢の地価が最も高かったバブル期に仕入れた敷地に、高さ規制をギリギリにクリアし、余裕を持たせずにびっしり建物を建てた本ホテルは、本ブログ風に言えば「部屋を削り出した」結果の産物です。駐車場は入れにくく、入口は狭く、建物の中は迷路のようで、大型高級ホテルをイメージして行くとがっかりするでしょう。

森の中に佇む大型ホテルとして、上空から全体を写した広報宣伝写真は非常に立派なのですが、地面・道路を走っていてはその立派さは分かりません。

筆者は開業後の早い時期に、当時のRCIジャパンを使って予約して利用したことがあります。時期的に言って、サービスやレストランの内容は十分満足でした。しかし経営が傾き、北軽井沢への人の流れが少なくなるに従い、ホテル価格は大幅に下がっていきましたが、利用した知人の評価も時とともに低くなりました。

こうしてホテル軽井沢1130は、ヤマダがエートスに売却した後、2014年からは「ヒューイットリゾート」のブランドでホテル運営を手掛ける「コアグローバルマネジメント 14」が同ホテルを担当し、2018年に同社はホテルを取得してエートスはエグジットします。

先ほどの利用評価は、現在のコア社が手掛ける前の話であり、この会社のトップはホテル運営に実績がある中野正純氏です 15。現在は中野氏の指揮の下、オペレーションは改善しているものと期待します。

以上のように本ホテルは数々の変遷を経ていますが、会員制という意味でも多様な販売が成されたと記憶します。そしてなんと現在においても「マイスタイル会員」という名称で現役の会員権として募集を継続しているのが目を引きます 16

利用権としての簡単な特典が付いた格安のガラ権になっているとはいえ、現役として生きていたとは恐れ入ります。

ヴィラ・ザ・クラブ軽井沢

北軽井沢は、このホテル名の通り1100メートルを超える高地にあり、オンシーズンとオフシーズンによって営業環境が大きく変わります。浅間山の雄姿以外に特に見どころがあるわけでもないので、ファミリー層によるアウトドア・アクティビティを売りにするしかありませんが、その可能性も多くはありません。

集客が大変なのは大型ホテルとして辛いところと思います。しかし開業以来今年で30年。極寒の原野で「どっこい生きている」ガラ権として頑張ってほしいものです。

最後に、前回 2 書いた群馬県との県境、鹿島プレジデントに至る途中にあるただ1つの宿、太平洋クラブのゴルフ用ロッジについてご紹介します。このホテルは「ヴィラ・ザ・クラブ軽井沢」として一般開放されています 17

メンバーシップのゴルフ場付設のホテルがガラ権オルタナティブとなることは本連載で書いてきた通りですが 18、この施設は温泉がない以外(重要なポイントかもしれませんが)リゾート感が素晴らしく、今後この奥地にできる鹿島のプレジデントが変化(へんげ)して誕生するホリデイ・インと競い合うクオリティですので、覚えておいて損はないと思います。

次回は別荘分譲地名としての北軽井沢のエリア区分に触れ、そこに点在する「落人」ガラ権や、廃墟、消息不明の建物を追ってみたいと思います。


  1. 浅間高原という名前がどこのエリアを指すのか、その情報発信者によって地域がばらばらで安定しない。
    浅間高原エリア | 嬬恋村役場
    浅間高原観光協会 – シャクナゲと高原野菜の国にようこそ
    北軽井沢 - Wikipedia ↩︎ ↩︎

  2. 東急ハーヴェストクラブ軽井沢高原 | リゾート法と広大な原野。北軽井沢に鹿島が見た夢 | 会員制ホテル今昔物語 – resortboy's blog – リゾートホテルとホテル会員制度の研究 ↩︎ ↩︎

  3. 【公式】ホテル軽井沢1130 | 北軽井沢高原のリゾートホテル ↩︎

  4. コーストピックス|軽井沢リゾート|コース紹介|太平洋クラブ ↩︎

  5. 別の解釈として、あくまで「長野県の軽井沢」とのつながりという文脈で語られる場合は、北軽井沢はもっと狭いエリアを指すことになる。以下は著名地図メーカー、昭文社による記事(解釈の1つ)だが、なんと「群馬県と長野県の県境に位置」などとしていて、現実と異なる。かくも無理解がまかりとおるエリアと言える。
    北軽井沢観光はこれで完璧【地図付き】人気観光スポットと高原みやげ - まっぷるウェブ ↩︎

  6. 軽井沢倶楽部ホテル石垣島 → かりゆし倶楽部ホテル石垣島 → 沖縄かりゆしリゾートエグゼス石垣
    【公式】EXES ISHIGAKI(EXES石垣) ↩︎ ↩︎

  7. 宜野座カントリークラブ | 沖縄県のゴルフ場
    宜野座カントリークラブ・宜野座CC(沖縄県)経営のエス・バイ・エル(株)がゴルフ場を営業譲渡-椿ゴルフ
    宜野座カントリークラブ・宜野座CC(沖縄県)を川島グループがエートスグループから取得し傘下に-椿ゴルフ ↩︎

  8. Aetos Capital Real Estate, LP – Aetos Capital Real Estate, LP ↩︎

  9. ヤマダホームズ - Wikipedia ↩︎ ↩︎

  10. 株式会社かりゆし
    ホテル運営のかりゆし、石垣島のホテル買収 - 日本経済新聞 ↩︎

  11. 石垣島の「リゾートホテル」再生 | 財九NEWS | 財界九州ONLINE | 財界九州社 ↩︎

  12. マンションカタログ グランナチュール浅間高原 | 軽井沢駅前店 | ロイヤルリゾート ↩︎

  13. 北軽井沢すずらん村管理事務所
    格安リゾート地へ移住する人々が増加中…都心マンション高騰で注目を浴びる「限界別荘地」の実情とは(吉川 祐介) | 現代ビジネス | 講談社 ↩︎

  14. 運営ホテルについて | ABOUT | コアグローバルマネジメント ↩︎

  15. 2023年3月10日号 トップインタビュー コアグローバルマネジメント株式会社 代表取締役 中野 正純 氏 | ホテル・レストラン・ウエディング業界ニュース | 月刊ホテレス HOTERESONLINE ↩︎

  16. マイスタイル会員 | ホテル軽井沢1130【公式】 ↩︎

  17. 【公式ホームページ】ヴィラ・ザ・クラブ軽井沢 ↩︎

  18. ゴルフバケーションクラブ瀬戸内 / 久慈 | 広島唯一のガラ権「ゴルフコテージ」を訪ねて | 会員制ホテル今昔物語 – resortboy's blog
    リソルの森(生命の森リゾート) / ホテルトリニティ書斎 | 巨大リフレッシュリゾート、創業の理想を巨大資本が受け継ぐ | 会員制ホテル今昔物語 – resortboy's blog ↩︎

文・撮影:zukisansu、企画・考証・制作:resortboy。バックナンバーはこちら

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