半日断食とオートファジーの見事な融合 – 5

「がん患者よ、旅に出よう!」は、トラベルライターの舟橋栄二さんによる連載です。早期退職でリゾートライフを満喫する日々の裏には、2度の手術を含めた「がん」との闘いがありました。「旅は生きる喜び。その喜びをがんに奪われたくない」
本連載は「旅を通して転移がんを克服した全記録」です。(編集担当:resortboy)

「オートファジー」は健康長寿のキーワードになりそうです。前回もご紹介した以下の本を参考に、私なりに解説してみたいと思います。

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LIFE SCIENCE(ライフサイエンス) 長生きせざるをえない時代の生命科学講義

驚くべきオートファジーの機能

オートファジーとは、細胞が自己成分を分解・再生する機能のことで、細胞内で隔離膜という平たい膜ができることからスタートします。この膜が伸縮自在に動いて周囲のタンパク質などを包み込んでいきます。そして、最後に膜が閉じて球体の袋になります。

この袋は分解工場である「リソソーム」に運ばれ、古いタンパク質はここで分解され、アミノ酸になります。ここまでの過程がオートファジーです。

こうやってできたアミノ酸は、リソソームの小さな穴を通って外に出て再利用されます。食事としてタンパク質を外から摂取しなくても、オートファジーによって自己再生してくれるのです。

現在では、オートファジーには次の3つの役割があることがわかってきました。

① 飢餓状態になった時に、細胞の中身をオートファジーで分解して栄養源にする
② 細胞の新陳代謝を行う
③ 細胞内の有害物質を除去する

①は最初に見つかったものですが、人間の病気や老化を考える時、②と③が重要になります。

細胞の新陳代謝

②の新陳代謝という言葉は皆さんよくご存じですね。例えば皮膚の細胞は、皮膚の下から新しい細胞が生まれ、古くなった表面の細胞は垢(あか)となっていきます。この細胞の生まれ変わり(新陳代謝)は、実は細胞のオートファジー機能の結果です。

細胞だけではありません。細胞の中のミトコンドリアや無数にあるタンパク質でも、オートファジー機能によって古くなったものが新しいものに作り直されているのです。

驚くべき事実ですが、体重が60㎏くらいの大人の場合、体の細胞の中で1日約240gのタンパク質が合成されているそうです。普通の大人が1日に食べるタンパク質はせいぜい70gくらいですが、この食事から摂ったタンパク質は胃や腸で分解され、アミノ酸になった後はほぼ全量がエネルギーとして使われます。

では、何を材料に約240gものタンパク質を合成しているのでしょうか? それはまさに、細胞内にあるタンパク質です。

面白いことに、オートファジーは古くて使い物にならなくなったゴミだけを拾ってくるのではなく、まわりの新しいタンパク質も手当たり次第に回収して壊して再生させるそうです。

その結果、毎日、ステーキ2枚(240g)分のタンパク質を作り直しているのですね。驚くべきオートファジーの働きです。

新陳代謝が悪くなれば、すなわち、オートファジー機能が低下すると、肌はボロボロになり、髪の毛は再生されず、内臓の機能も落ちて病気や老化が迫ってきます。

免疫学の常識を覆す

③の有害物質を除去する機能が分かったことにより、オートファジーは病気治療の新たな方法として一躍クローズアップしてきました。細胞内に有害なものが現れると、オートファジーが積極的に隔離して壊してしまうのです。

例えば外からやってくる病原体です。細胞の中に侵入してきた病原体をオートファジー機能が取り除いてくれます。免疫細胞が担うと考えられてきた役割を、オートファジーがやってくれているのです。

しかも、体の全細胞で戦ってくれるのでこんなに有難いことはありません。これは従来の感染症学・免疫学の常識を覆す新発見になりました。

また、ミトコンドリアは細胞の活動に必要なエネルギーをつくる「発電所」のような存在ですが、発電の副産物で有毒物質「活性酸素」ができてしまいます。しかし不調になってミトコンドリアに穴があくと、この有害な活性酸素が漏れてしまいます。

これが周囲の細胞を傷つけたり、遺伝子変異を起こしてがんなどの原因になると考えられています。また、心臓の細胞に壊れたままのミトコンドリアが溜まると心不全になると考えられます。こうした壊れたミトコンドリアを再生するのも、オートファジーの機能です。

アルツハイマーにも効果

そして、シニアにとって最も気になるのは、認知症の「アルツハイマー病」です。

アルツハイマー型認知症は、脳の中に異常たんぱく質(アミロイドβ)が蓄積して、神経細胞が徐々に障害されていくのが原因と考えられています。オートファジーは脳内で蓄積した異常タンパクを除去してくれますから、アルツハイマー病治療の切り札になるでしょう。

また、人間には死ぬまで新陳代謝しない、「生まれ変われない」細胞があります。神経細胞と心筋細胞です。脳卒中や心筋梗塞で壊れた細胞は残念ながら再生されません。これらの細胞は一生もので、大事に使っていくしかありません。

ここでも最後の切り札がオートファジーです。オートファジーで細胞の中身を綺麗に保っていれば、脳も心臓も末永く働いてくれることでしょう。

(参考記事)細胞内の掃除役、オートファジー活性化 老化防止にも - 日本経済新聞

健康長寿の根本

この連載シーズン2のメインテーマは、「老化を抑え、健康寿命を長くする」ことです。オートファジーはその答えになりそうです。

今回の最後に、吉森保氏の書籍より引用します。

オートファジーのことがわかってくることで、病気にかかるのを防いだり、老化を穏やかにして健康な期間を長くできたりする可能性が見えてきたのです。すでに、がんや感染症、認知症などに新しい治療法が提供できるのではと期待が高まっています。(略)

おそらく、これからますます長寿社会になっていく中で、オートファジーへの関心はどんどん高まるはずです。オートファジーがどのようなしくみであり、どういう役割を担っているかをここで学ぶことは、現段階での老化と寿命についての最先端の情報を知ることになります。もちろん、あなたの健康や老化への考え方もしっかりしたものになるはずです。

LIFE SCIENCE(ライフサイエンス)長生きせざるをえない時代の生命科学講義(吉森保、2020年12月、日経BP、P221~P222)

(続く)

【次回】第2-31回・長寿遺伝子を起動する私の「野猿メソッド」 – 1

【前回】第2-29回・半日断食とオートファジーの見事な融合 – 4

本連載は、本サイトに掲載した舟橋栄二さんの記事から、がん闘病に関する回を再配信したものです。時期に関する記載は2023年現在のものです。
(本連載記事一覧)がん患者よ、旅に出よう!
(スペシャル対談)私のリゾートライフの全体マップ
(筆者ホームページ)舟橋栄二「第二の人生を豊かに」

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