ラベンダーが美しい初夏の富良野からサホロへ

「会員制ホテル今昔物語」は、35年に渡ってリゾート会員権についてウォッチされているzukisansuさんによる連載です。日本で独自の発展を遂げたリゾート会員権、すなわち「ガラ権」の歴史をたどることで、日本的文化とは何か、日本人とは何かを、過去に学び未来を見通す―そんな奥行きのある連載として、僕から特別にお願いし、zukisansuさんにしか語れないこのテーマでご執筆いただく運びとなりました。どうぞご期待ください。(企画・制作:resortboy)

北海道には前回訪れた北見市より北および東には、ガラ権施設は遺跡も含めて存在しません。そこで筆者の見て歩きは旭川方面に向かい、初夏はラベンダーで美しい富良野に南下します。

この富良野でラベンダー畑と言えば、「ファーム富田 1」という見事な民営農園が有名です。そしてそのすぐ近くに、「加森バケーションクラブ 2」の一員である「富良野リゾートオリカ 3」があり、複雑な経緯を経て、今もゴルフ場&ガラ権ホテルが営業中です。

筆者は、少し北の上富良野のラベンダー畑の名所「日の出公園 4」(冒頭の写真)が好きで、ファーム富田との行ったり来たりの中で、その「ホテルオリカ」を道路から毎回見ています。しかしラベンダーの見事さに気を取られ撮影を失念していまして、自身の写真でご紹介できませんのが残念です。

今回はプレス向け写真 5 をresortboyさんに入手してもらいましたので、そちらでこのホテルの外観をご覧ください。現地を通ればすぐわかる、丘の上のタワー型ホテル(現在は一般利用可)です。ぜひ、ラベンダー畑の見学の拠点の選択肢に入れてください。

そのリゾート「オリカ」は遅れて来たバブルリゾートで、新潟県の有力企業が出資し、1988年から開発が開始され、1996年にホテル、1997年にゴルフ場が開業します 6。会員権による会員募集は1993年からスタートしていたもののバブル景気には間に合わず、2006年に倒産となりました 7

その再生を手掛けたのが札幌を基盤とする加森観光で、その際に「富良野リゾートオリカ」と名称変更されました。ホテルは開業当時のままで、規模も54室と大きくはありませんが、丘陵の高いところにあり、窓からの景色は絶景のようです。

富良野は大型スキーリゾートでもありますが、一般ホテルの「富良野プリンスホテル」(休業中)と「新富良野プリンスホテル 8」が大型拠点ですので、上記以外のガラ権施設はありません。

旅路は南富良野から山道を回り込み、帯広方面に向かいます。狩勝峠に現れるのが、オリカ同様に加森バケーションクラブに加わっている「サホロリゾートホテル 9」であります。ここには、「クラブメッド北海道サホロ 10」も並び立ちます。

狩勝(かりかち)高原の開発の歴史は古く、約50年前からゴルフ場・スキー場・ホテルが順次開業しました。バブル期に入り、西武系の西洋環境開発が地中海クラブ(現クラブメッド)と提携して1984年に参入し、同地のリゾート開発は加速します 11

同社は、南館101室、北館64室、全165室のサホロリゾートホテルを1986年に開業した後、既存のホテル(狩勝高原コンチネンタルホテル)を活用して「クラブメッド・サホロ(現クラブメッド北海道サホロ)」を開業。

こうしてサホロはホテルが並存する滞在型の大型スキー・ゴルフリゾートとなって、最寄駅には専用特急が走るあこがれの場所となり 12、またクラブメッドを通じて世界的にも有名になったのです。

しかし、バブル崩壊で西洋環境開発は2000年に、約5,538億もの負債を抱え倒産します 13。サホロリゾートホテルはその後、1999年から運営を任されていた加森観光に売却・引き継がれ、一般ホテルとして運営される一方で、加森バケーションクラブの一員ともなっています。

クラブメッドはガラ権ではありませんが、少し触れます。元は「地中海クラブ」と言い、フランスの会社(今の資本は中国)が「オールインクルーシブ 14」というコンセプトで滞在費全部込みのリゾート事業を展開したものです。すでに世界中に100以上の施設を運営していた90年バブル期の少し前、日本国内30くらいの場所からここが選定され 15、栄えある日本第1号施設として1987年に開業しました。

加森観光が関係するリゾート会員権がらみのホテルについては、この後の連載でも取り上げます。同社はルスツリゾート 16 の成功により知られ、北海道のみならず日本全国や海外にも展開する、歴史ある総合レジャー企業です。同社の企業沿革は多岐に渡り、参考記事や文献も多数あることから、会社企業そのものについてこの連載では取り上げません。

加森バケーションクラブについても、現在は会員募集停止中であり、会員権がバリエーション多数となるので内容の紹介については省略します。まだホームページが見られるようですから、クラブの概要をご覧になりたい方は、本記事の注釈から公式情報をご参照ください。


  1. 北海道のラベンダー畑「ファーム富田」オフィシャルサイト ↩︎

  2. 【リゾート会員権】加森バケーションクラブ ↩︎

  3. 北海道 – 富良野リゾートオリカ | 色彩の奇跡と出会えるホテル
    富良野リゾートオリカ – 【リゾート会員権】加森バケーションクラブ ↩︎

  4. 日の出公園ラベンダー園|観光スポット|【公式】北海道の観光・旅行情報サイト HOKKAIDO LOVE! ↩︎

  5. 『JALファーストクラスで行く 春薫るくつろぎの北海道』発売 | 株式会社ジャルパックのプレスリリース ↩︎

  6. ミズノ、北海道にゴルフ場、135億円投入、ホテル併設――日本精機などと。 | NIKKEI COMPASS - 日本経済新聞 ↩︎

  7. オリカゴルフ倶楽部・オリカGC(北海道)、オリカG&R経営の(株)ヒムが民事再生法を申請-椿ゴルフ ↩︎

  8. 公式サイト | 新富良野プリンスホテル ↩︎

  9. サホロリゾートホテル - 十勝サホロリゾート【公式】|おいしい、たのしい、森のリゾートステイ|
    サホロリゾート – 【リゾート会員権】加森バケーションクラブ ↩︎

  10. クラブメッド・北海道 サホロ (冬)|公式サイト|北海道のオールインクルーシブ・スキーリゾート ↩︎

  11. 会社沿革・ 三榮プロパティマネジメント株式会社 / SANEI Property management Co.,Ltd ↩︎

  12. アルファコンチネンタルエクスプレス - Wikipedia
    トマムサホロエクスプレス - Wikipedia
    クリスタルエクスプレス トマム & サホロ - Wikipedia ↩︎

  13. CiNii 図書 - セゾンの挫折と再生 ↩︎

  14. クラブメッドのオールインクルーシブとは?|オールインクルーシブリゾートならクラブメッド ↩︎

  15. 北海道にバカンス村、地中海クラブ――狩勝高原に来年12月。 | NIKKEI COMPASS - 日本経済新聞 ↩︎

  16. 北海道 ルスツリゾート ↩︎

文・撮影:zukisansu、企画・制作:resortboy。バックナンバーはこちら

5 comments

  1. 北九州にあったスペースワールドも加森観光が運営していましたが、
    2017年12月31日をもって閉園してしまいました。

    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%89

    加森観光はブリスベンにあるローンパイン・コアラ・サンクチュアリも経営しています。
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%83%91%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B3%E3%82%A2%E3%83%A9%E3%83%BB%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%83%81%E3%83%A5%E3%82%A2%E3%83%AA

    意外と手堅い経営をしているなといった印象です。

  2. 富良野は学生時代にアルペンスキーのWC観戦に訪れたとても懐かしい場所です。当時は純粋な素朴なスキー場で、大きなホテルはプリンスホテル位で私は民宿に滞在しました。今はすっかり変わったのでしょうね。

    また記事の中でクラブメッドの事にも触れられていて、これもまた海外各地でとてもお世話になりました。子供達がまだ小さかった頃、オールインクルーシブのシステムで家族それぞれが食事やアクティビティを思い切り楽しむことが出来ました。ゴージャスさはないものの国際的で多くの人との出会いのある最高のリゾートライフでした。フランス、スペイン、ドミニカ、アメリカ、タイ等の施設にお邪魔しました。

  3. 私の「八ヶ岳高原ロッジ」今昔物語

    昔々、新婚間もない私は新妻と新車の「カローラ」を運転して意気揚々と八ヶ岳に向かいました。お泊りは「八ヶ岳高原ロッジ」。ホテルに向かうカラマツの黄金の並木に大感激し、高原ロッジのロビーコンサート、本格的フレンチのコース料理、そして、お客やスタッフの振る舞いにカルチャーショックを受けました。高級ホテルとはこういうものなのか~、と。

    さらにテレビドラマにもなった「八ヶ岳高原ヒュッテ」、有名音楽家を招いてコンサートも開催する「八ヶ岳高原音楽堂」、テニスコートと多数の別荘、標高約1,500メートルの八ヶ岳高原にある「西武 海ノ口自然郷」は私の理想に近い別荘地でした。

    私は八ヶ岳高原ロッジのリピーターになり数年間通い続けました。そのうち海ノ口の別荘を買うしかないか~、とも思いました。バブル絶頂の時でした。この時に知ったのが「西洋環境開発」でした。その西洋環境開発は、2000年に約5,538億もの負債を抱え倒産したのですね。

    結局、妻の大反対で別荘は買いませんでしたが大正解でした。もし買っていたら、マイホームのローンと別荘のローンで老後資産は築けず、海ノ口の別荘は廃墟となっていたでしょうね。豊かな老後などありえません。

    今もそうですが…「男(私)は夢を追いかけ、女(妻)は現実を生きる。結局、女(妻)が正しい」我々夫婦の今昔物語でした。

  4. スペースワールドさん

    コメントありがとうございます。

    加森観光は、バブル期以前からの事業再生(再建)屋で、先駆け的存在ですね。
    北海道らしいスケールの大きさと開拓者魂も感じられます。さらには大陸的(例えばアメリカ的)経営者の側面があり、事業参入の速さとダメな場合の引き際も早い、動物愛護もその
    流れかと。一方で本社ビルは古いままと言った島国的な細かな節約家の側面もあります。

    こうした良い側面がミックスされた結果、仰る通りの、意外と手堅い経営となるのでしょう。今、連載の北海道の中央から東部分の原稿を書き終わり、西側のリゾートの見て歩きを書いている最中です。加森観光は、特に西側において外せないので、また触れて参ります。

  5. マイアミさん

    コメントありがとうございます。
    本稿で、富良野を懐かしく思い出していただいて嬉しいです。
    私は、頻繁にアルペンWCが開かれ賑わうとともに、この一帯がパウダーベルトと呼ばれ、国内最高の雪質と言われていたころには行っておらず、2000年を過ぎ、リゾート友達から、このエリアにラベンダーなど花を見に行くように言われ、かなり遅れて初めて富良野に行きました。その時からですが、すでにスキー場をメインとする町でなく、旭川・大雪から十勝・帯広に至る道沿いに「北海道ガーデン街道」が整備されつつあり、その後の家族での訪問も「ガラ権探訪」でなく「ガーデン探訪」となっています。
    https://www.hokkaido-garden.jp/

    富良野の町としては、全国ローカル田舎都市と同じで60年代頃の人口ピークから今や半減、
    スキー客は便利な札幌から西の羊蹄山方面に取られ、花の観光では限界があるため、コロナ以降は歴史ある富良野プリンスも休業、新富良野プリンスのみが目立つ程度。
    新規開業はハードルが高いようで増えませんが、この時、泊まったのは駅前に出来たドーミーイン系の最新の「ラビスタ富良野ヒルズ」でした。
    ここも起点に、カジュアルにお花畑巡りができます。
    https://dormy-hotels.com/dormyinn/hotels/furano/

    ルートインが同じく駅近立地で22年開業で「グランヴィリオ富良野」開業の話があり
    出来たらまた行きたいと思いましたが、いつのまにか26年以降開業に変わってしまっています。よって、富良野は、ちょっとおしゃれな田舎町という、意外な方面で生き延びてますので、マイアミさんが行かれると驚かれるかもしれません。

    クラブメッド・オールインクルーシブですが、マイアミさんはご利用経験豊富ですね。海外生活が長かったからでしょうか。私は、まだ未知の世界です。石垣とビンタン島では思わず行こうと思ったのですが、子供が小さく(逆に小さいからいいのでしょうが、その良さがわからず)別のホテルとしました。施設の豪華さを競うのでなく、アクティヴィティや他の人との触れ合いを大切にしているのですね。これについては、連載で原稿書いている他の北海道スキーリゾートにも順次、出没していることで触れていきます。

    オールインクルーシブ・ホテル(施設)というのは、クラブメッドは元祖として、アクティヴィティを中心にしたホテル滞在が楽に無駄なく思い思いに過ごせるということですが、
    ここにきて、本連載でお正月に取り上げたメルキュールが、同じフランス的発想だからか、
    元のダイワロイヤル一行を、オールインクルーシブスタイルで営業とアナウンスしたのは、
    ちょっと驚きでした。ここに限らず、今の日本では、クラブメッドのような元祖でなく、
    疑似(偽装)オールインクルーシブがかなり出てきている雰囲気を感じるので、注視していきたいと、resortboyさんとも連載書きながら。やり取りしてます。ガラ権とは関係ないので、そのうち彼が、問題提起などされるでしょう。
    https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000208.000052177.html

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