ガラ権界の至宝、霧島の別荘地に静かに佇む

「会員制ホテル今昔物語」は、35年に渡ってリゾート会員権についてウォッチされているzukisansuさんによる連載です。日本で独自の発展を遂げたリゾート会員権、すなわち「ガラ権」の歴史をたどることで、日本的文化とは何か、日本人とは何かを、過去に学び未来を見通す―そんな奥行きのある連載として、僕から特別にお願いし、zukisansuさんにしか語れないこのテーマでご執筆いただく運びとなりました。どうぞご期待ください。(企画・制作:resortboy)

鹿児島県の霧島エリア3回目は、閉業、廃墟となった大型ガラ権遺跡を見た後、会員主体の運営で開業40年を経て今なお光る、ガラ権界の至宝を尋ねます。筆者は霧島神宮から少し奥に登る感じで「霧島温泉郷」方面に向かいました。

途中で「丸尾滝」に立ち寄った後、このエリアの四大温泉郷で最大の霧島温泉郷に入っていきます。湯けむりが吹き上がり、硫黄の臭いも漂う、これぞニッポンの温泉地。多くの旅館ホテルが並び立ちます 1。最近では共立メンテナンスが105室という規模で「ラビスタ霧島ヒルズ」を開業させました 2

前々回の記事で触れた霧島国際音楽祭の発祥の場所でもあり、現在の会場「みやまコンセール」もここにあります 3

別荘族ソサエティ

今回ご紹介する施設は、そのみやまコンセールから少しだけ北に進んだ所にある「霧島高千穂自然郷」という別荘地にあります 4

ここは「霧島開発」という地元の会社が古くから開発してきた別荘地です。その山をかなり上った高台に「霧島温泉ソサエティ」があります 5。別名「ダイヤモンド霧島温泉ソサエティ」です。

名前が示す通り、大阪拠点の老舗ガラ権メーカー「ダイヤモンドソサエティ 6」の一員です。賑やかな温泉街から静かな別荘地に入った中にあるため、この先に本当に老舗ガラ権施設があるのか?と、筆者は心配になりましたが、たどり着いたそのホテルは、イメージよりはるかに立派でメンテナンスは最高。その品格に驚く事になりました。

にぎやかな温泉地のほど近くの山林に別荘地が開発され、急坂を登るとメンテナンスの良い立派なガラ権施設があるという構図です。これはこのサイトの読者のならよくご存知の「東急ハーヴェストクラブ箱根明神平 7」の感じにそっくりです。

この別荘地、霧島高千穂自然郷は、霧島エリア最高の高級別荘地であると思いますし、その別荘地は限られた入口道路からしか入れないクローズドな開発立地です。その中に別荘を持つことはまさに特別なものであり、「別荘族ソサエティ」が形成されてきたことでしょう。

地元企業が手塩にかけ

そんな高級別荘地の中で、別荘を個別に所有するより、共有制の会員制ホテルを持つ方が合理的と思う方々がこの施設に集ったのだろうと思いますし、また、自分の別荘に加えてゲストをもてなすためのアドオンとしてのニーズもあっただろうと思います。

この霧島温泉ソサエティは、旧ダイヤモンドリゾート(当時の社名は「経営開発」)時代の1984年に、ダイヤモンドソサエティ有馬本館の開業と時を同じくしてスタートしました 8。これ以前のダイヤモンドソサエティ(共有制)は、京都と箱根(旧・芦ノ湖)だけです。

興味深いのは、この霧島温泉ソサエティは、基本的に独立した単独ガラ権であるということです。現在のダイヤモンドソサエティの公式ホームページでも「提携施設」として登場します 6。そして公式サイトは独自に作られた古めかしい紹介サイトであり、筆者の記憶では、この独自公式サイトは20年近くデザインが変わっていません 9

会員権としては開業をさかのぼること2年の1982年に、経営開発が地元の霧島開発と提携して誕生したものでした。そこからずっと、この霧島ソサエティの主体は、チェーンを仕切るダイヤモンドではなく、地元の霧島開発にありました。

そのダイヤモンドは資本と経営交代の波があり、「ダイヤモンドリゾート」から「ダイヤモンドソサエティ」に法人が変更されますが 10、この霧島温泉ソサエティは何の影響も受けませんでした。それはホテル経営そのものが、地元企業による独自のものであったからでした。

施設開業以来、今年で40周年という長きにわたって、たった1つの施設を守って健全に営業を続けて来た。これはマネー飛び交う現代のガラ権界における「珍種」として、大切に記録されるべきものだと思うのです。

拝金主義とは対象的な

そして筆者が驚いたのは、そのメインテナンスぶりでした。築40年の施設であれば、プールなどの付帯施設が相当傷んでいるはずですが、年代をまるで感じさせない優れた維持状態です。

ご紹介が遅くなりましたが、このホテルの客室は54室で、2階に和室が18室、3~4階は和洋室が36室あります。オーナーの利用料金は平日2食付で税サ込み10,500円、休前日が11,000円です。この5月、6月の夕食は以下でした。1,000円をプラスすると郷土会席料理になります。

ホームページによれば、霧島温泉ソサエティは個人を中心に法人も合わせて、全800口の会員数であるようです 11。訪れてみて、会員の皆さんが大事に使っておられることも感じられました。その証は、ホームページで閲覧できる会報「ソサエティニュース」の冒頭で、管理組合理事長名で会計報告が示されていることが雄弁に語っているのではないでしょうか。

この施設からは、遠くに桜島が見え、眺望も最良の場所です。これからも、ガラ権界の至宝として、元気で長生きしてほしいと願う、嬉しい訪問となりました。


  1. 霧島温泉エリアは、新湯、林田、硫黄谷、丸尾、栗川、湯之谷、殿湯、関平、野々湯の9つの温泉を総称した温泉郷。坂本龍馬が妻のお龍と新婚旅行に訪れたことで知られる。中心となるのは「丸尾温泉街」。
    丸尾温泉<鹿児島県> おすすめホテル・旅館・宿 | 宿泊予約【JTB】 ↩︎

  2. 【公式】ラビスタ霧島ヒルズ | 共立リゾート ↩︎

  3. 音楽祭について – 霧島国際音楽祭 ↩︎

  4. 霧島高千穂自然郷 - 霧島開発株式会社 | 鹿児島県 霧島市 別荘 ↩︎

  5. 関連会社 | 霧島高千穂自然郷 - 霧島開発株式会社 ↩︎

  6. ホテル一覧 | ダイヤモンドソサエティ【公式】 ↩︎ ↩︎

  7. RESERVE箱根明神平│東急ハーヴェストクラブ -TOKYU Harvest Club-
    トリプルアクセルを決めた箱根明神平|東急ハーヴェストクラブの話題 – resortboy's blog – リゾートホテルとホテル会員制度の研究 ↩︎

  8. 霧島開発、総合経営と提携、会員制ホテルに進出――中高年層にマト、58年に建設。 | NIKKEI COMPASS - 日本経済新聞
    有馬温泉ソサエティ本館【公式】 ↩︎

  9. (公式)霧島温泉ソサエティ ↩︎

  10. 「ダイヤモンドリゾート」に、総合経営が社名変更。 | NIKKEI COMPASS - 日本経済新聞
    会社概要 | ダイヤモンドソサエティ【公式】 ↩︎

  11. (公式)霧島温泉ソサエティとは ↩︎

文・撮影:zukisansu、企画・考証・制作:resortboy。バックナンバーはこちら

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