トリプルアクセルを決めた箱根明神平

東急不動産はリゾート会員権の新商品「東急ハーヴェストクラブRESERVE箱根明神平 In nol hakone myojindai」の一般向け販売(第1次会員募集)を、2月3日から開始しました。今日はこの恐ろしく長い、へんてこりんな名称の会員権についてレビューします。

1993年に20年契約で開業

歴史を振り返ると、もともとの「東急ハーヴェストクラブ箱根明神平」は、20年の期限付き会員権として販売されました。1993年7月開業で全39室と小ぶり。東急が開発した別荘地の中に佇む、他の大型ホテルとは一線を画する、別邸的な趣を持つホテルでした。

開業当時の価格はさすがに資料がありませんが、2001年に東急が「補充会員募集」として販売(形式上は仲介)した際の価格は1,150万円で、内訳は預託金が1,100万、入会金が50万円、というものでした(入会金が税込かどうかは不明)。

2001年は開業8年目ですから、経過分を考慮して、発売時の価格は1,200万円程度であったと、仮に認識しておきましょう。年会費は20.4万円(税別)で、当時のハーヴェストクラブの中では目立って高額でした。ともあれ、価格ほ大部分が預託金(返金部分)であるのが特徴の会員権でした。

期間満了後に延長ではなく別会員権を販売

東急ハーヴェストクラブには、エクシブと違って預託金制の会員権がたくさんありますが、この箱根明神平もその1つです。

東急の預託金制会員権においてはクラブの存続期間が設定され、満了するとクラブは解散します。例えば、かつて万平ホテルに設定された「東急ハーヴェストクラブ軽井沢万平」は、期間満了とともになくなりました。

しかし、満了時の扱いは終了だけではありません。まず、延長されるケースがあります。例えば、「東急ハーヴェストクラブ山中湖マウント富士」は1999年7月開業で、2019年7月に存続期間満了となる予定でしたが、2016年に10年延長が決まり、2029年7月まで運営されることとなっています。

終了後に「受け皿クラブ」ができて存続するケースもあります。「東急ハーヴェストクラブ軽井沢高原」は2017年7月で20年の契約満了となりましたが、その後に同クラブ会員専用のリゾートクラブ(会員権と呼んでいいのかは判断が分かれるところです)ができ、ハーヴェストクラブ互換のサービスが提供されました(2024年3月にクラブ解散)。

エクシーズクラブ|【公式】 プレジデントリゾート軽井沢

話を箱根明神平に戻しますが、このホテルの場合、いったんクラブを解散し、ホテルをリニューアルした上で別の会員権として再募集がありました。

2度目の募集「エクストラ10」

その会員権は「東急ハーヴェストクラブ箱根明神平エクストラ10」という名称のものでした。

東急ハーヴェストクラブ箱根明神平がリニューアル

なぜ山中湖マウント富士のように延長せずに仕切り直したのかは、僕の推測ですが、初期箱根明神平の後期に会員権を実質入会金無料(預託金のみ)で販売していたからではないかと考えています(当時の会員の方が見ていらしたら、コメントをよろしくお願いします)。

東急ハーヴェストクラブ入会の裏技?

時は2008年。リーマンショックの影響は日本にも及び、有明に東京ベイコート倶楽部が開業しますが時勢を得られず鳴かず飛ばずで、2009年には開業趣旨を捨てて「スーパーエクシブ」に衣替えしています。

そのゼロ円時代から5年後、2013年開業のエクストラ10の販売価格は495.5万円で、入会金115.5万円(税込)と預託金380万円でした。年会費は値下げされ、年額18万円(税別)でした。

閉館し、一般ホテルに変更

そしてさらに10年の時が流れ、2023年7月に東急ハーヴェストクラブ箱根明神平は完全閉館となりました。

しかしそれからわずか3カ月後の10月、このホテルは「nol hakone myojindai」として2024年5月にリニューアルオープンすることになり、リゾート会員権ウォッチャーは驚いたのです。

【公式】ホテル nol hakone myojindai|箱根明神平

リゾート会員権のしくみでバブル後に建築されたホテルが、リーマンショックで実質ゼロ円となりながら30年かけて2回転ジャンプを着地させた後、小規模ブティックホテルとしてより高級化して再オープンするというのは、なんとも味わい深いストーリーであります。

この「nol」というのは東急不動産が京都で開業した「nol kyoto sanjo」(48室)に続く2号店です(わざわざ全部小文字にするところに、resortboyとの共通性があります)。開業直後の今年5月に、直販早割で土曜日泊の2食付きで予約を試みると、38平米の客室が2名で69,600円でした(1人3.5万)。すごく高いわけではありませんが、高級ホテルと言ってよい値付けとなっています。

さらにその中に会員権を設定

話はこれだけでは終わりません。冒頭でネタバレしていますが、東急不動産はこの一般ホテル化された元ハーヴェストクラブの中に、「RESERVEシリーズ」として会員権を設定したのです。

他のホテルの中に会員権を設定する形式は、以前は「Inタイプ」と呼ばれていましたが、これを東急不動産はどんどん増やしていく方針のようです。東急ハーヴェストクラブの上位カテゴリーVIALAを「VIALAシリーズ」と呼ぶようになり、さらに一般ホテルへの寄生型展開を「RESERVEシリーズ」として、VIALAと同様の会員権類型の一つであると主張するようにまでなりました。

東急ハーヴェストクラブ × 厳選ホテル「RESERVE」シリーズ│宿泊情報│東急ハーヴェストクラブ -TOKYU Harvest Club-

ともあれこのホテル、昨年の閉館でジャンプを着地したかと思いきや、実は史上初?の「3回転ガラ権」(zukisansuさん風)であったことがわかり、リゾート会員権ウォッチャーは腰を抜かしたのでした。

昨年末に連載しましたが、この1つの記事だけを見ても、東急不動産の会員権を使ったホテルマーケティング(または錬金術)は、なかなか強烈なものがあります。このホテルは間違いなく、いまのリゾート会員権産業の一つの究極モデルです。

日本の経済情勢に余裕のあるうちに会員制で豪華ホテルを建て、有期で契約し満了させた後、リニューアルしてホテルの位置付けや顧客層を入れ替えることでサステナブルな宿泊ビジネスを継続させる。そして可能であれば会員制も継続させ、開発投資回収目的のリゾート会員権ではなく、顧客マーケティング目的のリゾート会員権として「別の意味」を持たせる。

タイトルはふざけているようですが、会員権ビジネスとしての高度な技、という、ちゃんとした意味もあるのです。

ハーヴェストクラブ全体にとってはよいことのように感じられますが、実際の会員の皆さまのご意見はいかがでしょうか。

3度目の販売価格とは

そして生まれたのが、このへんてこりんにもほどがある名称、「東急ハーヴェストクラブRESERVE箱根明神平 In nol hakone myojindai」でした。不便なので以下、「HVC箱根明神平nol」と略して書きますが、これでも複雑(長い)ですね。

HVC箱根明神平nolの発売価格は、1,115.5万円(税込)です。内訳は、入会金が335.5万円(335.5万円税別)、償却保証金が260万円、預託金が520万円です。当然ながら、預託金は会員権満了時に返還されます。

東急ハーヴェストクラブ箱根明神平|募集概要|会員制リゾートホテル

会員権が設定されたのはnol hakone myojindai 39室のうち10室で、1室に12口を設定します。年会費は123,420円(税込)です。

クラブ存続期間は2044年の開業日前日までとなっており、つまり20年間の設定です。

またこのホテルは、RESERVEシリーズなので、VIALAと同様にルームチャージ制です(かつての箱根明神平はもちろんパーソンチャージでした)。露天風呂付きの客室もできます。利用料金は以下のとおりです。

冒頭の写真は、かつての東急ハーヴェストクラブ箱根明神平のロビーの様子です。

14 comments

  1. 温泉付きの部屋が、以前の2室から4室に増えたのが魅力ですが、やっぱり取れないんだろうなー
    明神平一帯は東急の別荘地なので、ここに別荘をお持ちの方が、たまにこのホテルにご飯を食べに来ていたなんて話も聞きました。(他にはこのあたりだとやまひこ鮨さんが有名ですね)
    あとこちらの厨房で働いていた方が、地元に戻って実家の味噌屋を継いだのですが、その縁でハーヴェスト明神平では朝食のお味噌汁にそこのお味噌を使っていて、さらに売店でも売っているとかで私も買ったりしました。いまはどうなのかな。
    この味噌屋さんですが、ホームページを見ると、店主の口上がいろいろ書いてあって面白いですよ。ハーヴェストについても(結構多めに)触れられています。
    このお店のお味噌は上田市のふるさと納税でも入手できます(私は去年も送ってもらいました)。ハーヴェストで出しているものと同じではないのですが、ホームページのオンラインショップでは「その他の品も少し有り〼」的なことが書いてあったので、頼めば買えるかもしれません(未トライ)。
    https://daikeimiso.com/

  2. ご主人は、珍しい洋食と和食の二刀流、味噌を入れれば持ち替え三刀流といったところですね。
    彼のお話を読んでから、各所で和食コースでのデザートがどうなのか、気になったり楽しみになったりしています。

  3. エクシブ伊豆の朝食メニュー「野菜のせいろ蒸し」に「橙と信州大桂商店味噌のクリームドレッシング」がありますね。どんなご縁でしょうか。

    ところで3月からエクシブ蓼科の朝食がブッフェに統一されます。和朝食膳とアメリカンブレックファストは提供中止。ルッチコーレと花木鳥では繁忙期のみ和洋セット料理が提供されます。地産地消の掛け声などどこに消えてしまったのでしょう。ビジネスホテル程度のお品書きで泊まる前からげんなりしています。
    <ブッフェAパターン>焼鮭、焼鯖、豚バラ大根、ひじき煮、ジャーマンポテト、コーンスープ、カポナータパスタ、<ブッフェBパターン>焼鮭、鯵味醂干し、鶏つみれ、しめじと大根、切り干し大根、グラタンドフィノア、パンプキンスープ、ミートソースパスタ
    https://www.rtg.jp/hotels/xiv/tate/restaurant/convention/menu/?menu=00094
    https://www.rtg.jp/hotels/xiv/tate/restaurant/japanese/menu/?menu=00095

  4. これは酷いですね。通常メニューは、普段私が出張で使っているビジホのメニューにそっくりです。なんならこれより良い朝食を売りにしているビジホもあります。蓼科に行く時は繁忙期のみになりそうですし、他のホテルも人員不足の影響でこのような形になっていくのでしょうか?

  5. ノラさん

    えーっそれは知りませんでした。どういったことでしょうね。
    伊豆も蓼科も、コロナの影響で(あるいは明神平閉館のタイムラグの影響で)

    もしかして:転職

    じゃないでしょうか。
    そうだとすると伊豆は同業種での転職かもしれないけど蓼科は異業種への流出かもしれないから深刻ですね。
    そういえば伊豆はラペールも黒潮も味噌を料理に使うときにこだわりがあったような気もします。

    蓼科の魅力のひとつは多彩なレストランだと思うので、人を呼び戻してちゃんとした朝食を復活させてほしいですね。

  6. ノラさん、エクシブ蓼科のブッフェの件、情報をありがとうございました。頂戴したURLリンクは、両方消されてしまってつながらなくなっています。なんだかいやな雰囲気ですね。

    気になって、1カ月ほど先のエクシブ蓼科の平日予約にトライし、朝食の選択肢を見てみましたところ、花木鳥は満席(これは日柄からして満席のはずがないので偽装だと判断されます)、ルッチコーレがクローズ、平日にもかかわらずコンベンションのブッフェのみが選択可能でした。

    これは会員制ホテルとしては最終局面ではないでしょうか? 落ち着いたら別稿で考えをまとめようと思います。

    ビジホも、朝食にレーゾンデートルを見出しているドーミーやベッセルなどはそんなことないと思いますが、電鉄系の朝食に力が入っていないところでは、クォリティの下がりっぷりがすごいです。もう、サラダがちゃんと出せないところが増えているんではないでしょうか。例えば、トマトが高くて出せないところがけっこうあるような…。

  7. エクシブ伊豆の朝食で、確かに大桂商店のお味噌がドレッシングに使われていることを、僕の取材記録からも確認しました。

    QRコードがこの写真に2つ映っていますが、下の方は大桂商店のホームページにつながります。いやはや、ぜんぜん気づいていませんでした。どういったつながりがあるのか、わかったらまた報告します。

  8. 蓼科の割と多くの方は、噂ですが高山のオープニングスタッフとして引き抜かれた?ようです。スタッフの方がぼやいてました。朝食のリンク先ですが、金額が違っていたような。。
    個人的には安くなるなら選択肢としてならアリかなとも考えましたが、どうやらそうでもなさそうですし、、蓼科の朝食、気に入っていたのに、、残念です。

  9. 朝食の件、蓼科も・・という感じです。

    我が家では、軽井沢のルッチコーレのアメリカンブレックファストが気に入っていて朝食に毎回利用してきました。
    我が家は主に平日利用なのですが、最近は予約を入れようとしても、いつもクローズです。

    オープンしているのは花木鳥だけで、ルッチコーレは繫忙期以外の平日は基本的にクローズのようですね。

    以前営業担当からは、これは変則的な対応でコロナ禍明けにはオープンしますと言われていたのですが、現実はクローズのままです。
    そのせいもあって最近は軽井沢をほとんど利用しなくなってしまいました。

    人手不足の影響だとは思いますが、このスタイルが他のエクシブにも広がっていかなければ良いのですが。

  10. 皆さん、連休最終日、寒いですけれどもお元気ですか? takurisoさん、ふむふむさん、コメントありがとうございます。

    蓼科はここをご覧になって改心したのかはわかりませんが、アメリカンブレックファストが復活(と言っていいのかわかりませんが)していました。和食は廃止のようですね。

    低アレルゲンメニュー アメリカンブレックファスト【大人】|イタリア料理ルッチコーレ|レストラン&バー|エクシブ蓼科|ホテル|リゾートトラストグループ サービスサイト

    僕はエクシブ蓼科のルッチコーレは、以下の記事で紹介した、ポン出しオムレツに絶望してから利用していません。

    ディナーチョイスプランで見るこの1年の値上げ推移|エクシブの活用術 – resortboy's blog – リゾートホテルとホテル会員制度の研究

    オムレツはこの春のアメリカンブレックファストからは消えていますね。オムレツも出せないようなホテルには行きたくありませんが、そうも行かないときもあります。これは「やり過ぎ」ではないですか?

    中抜けシフトを廃止し、働き方改革の錦の御旗の下に従業員の自主性を奪って、運営方は何が楽しいんですか? 一般ホテルを捨てて会員制ホテルにフォーカスしたのでしょう? 最低限でいいですから、やるべきことをやってほしいと思います。オムレツを出せない洋風ホテルを運営して恥ずかしくないんですか?

  11. ご無沙汰しております。
    年会費もアップするのに朝食を選べる幅が少なくなり、メニューも寂しくなっていくようだと会員制のメリットをあまり見出せないような気がするのは気のせいでしょうか。
    暫くは会員権購入をストップして様子見をしてみたくなってきました。
    ただ一般のホテルだとなかなか1人宿泊が出来ませんが、エクシブならできるので悩ましいところです。

  12. ポンさん、コメントありがとうございます。

    会員制だからサービスがよい、というのは一種の幻想なので、その考えは一度お捨てになるのがよいと思います。

    リゾートトラストの美点は、現場スタッフの士気の高さであり、特にここ数年、アンバサダー制度の導入などもあって、高まってきています。一方で、わけのわからない合理化も現場は押し付けられていて、その結果として彼らが望まないサービスダウンが運営方から強いられている、というのが現状だと見ています。

    これが悪循環となり、ゲストと現場スタッフのいい関係が崩れていくと、会員制ホテルはみるみるその魅力を失っていくでしょう。

    会員制ホテルというものは、そこだけで儲けるようにビジネスモデルが出来ておらず、会員権そのものを新規に売り続けなければ会社全体が存続できない「不安定な」ものです。

  13. エクシブ蓼科の朝食ですが、結局のところ、上のコメントに書いた、アメリカンブッフェ復活は、取りやめになっていました😔

    最初にノラさんに教えていただいたURLが復活しております。平日にブッフェだけだと、足の悪い方は利用自体が無理ですね。

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