アメリカ合衆国が大好きな筆者は(観光的・文化的な意味で)、夏のホワイトハウスと言われるウェストバージニア州のグリーンブライヤー 1 に魅せられていました。
私は長年のリゾート会員権コレクターでありましたが、その時まで購入せずに残してあったエクシブに飛びついたのは、2004年後半のことでした。リゾートトラストが東関東第1号施設として、福島県にて日本型グリーンブライヤーを取得し 2 、わざわざアメリカの東海岸まで行かずして、同等、あるいはそれ以上の施設が利用できるようになったのです。
営業のクロージングのセールストークは、「今でないと利用実費制度が使えなくなりますよ」という、エクシブの制度転換期でありました。それからはや20年。
ガラ権発祥50年
今年、業績絶好調の中で創業50周年を迎えたリゾートトラストは、日本型リゾート会員権マーケットの7割を押さえ、ガリバーとして君臨したと思われます。
同社創業の今から50年前。1970年代前半に全国各地で自然発生的に日本型リゾート会員権が誕生しました。そこから高度成長や列島改造論を背景に日本がリゾート列島と化す中、巨大施設、あるいは複数の施設を展開するリゾートクラブが群雄割拠しました。
それら強豪の乱立する戦国時代「クラブ関ヶ原」をリゾートトラストが制した理由(わけ)は、まさにOnly Got Knows。1985年頃からずっとリゾート会員権の追っかけをやっている筆者にも解明しがたいものがあり、全くわかりません。
たまたま今年のNHK大河ドラマが「どうする家康」ですが、名古屋の大名が天下を取ったのは、複雑系の世の中の不思議を早くから分かっていたからでしょうか。自ら「ワンダーネット」(Wonder Net)と名付けた意味不明なシステムのように、名は体を表すの言葉が如く、網の目を搔い潜ってきたのが、世を制したキーワードだったかもしれません。
50年を経て、高山
当初計画から創業50周年記念にと開業時期を合わせてきたわけでもないと思うのですが、今年度、あと半年を切って、新ブランド立ち上げ第一弾となる「サンクチュアリコート高山」が開業します。
この新施設は高山駅から見て線路の西側にあり、大規模な商人屋敷などが立ち並ぶ飛騨高山の、歴史的町並保存の影響を受けません。高山の和風のイメージからすると、サンクチュアリコート高山が大型洋風建築であるのは、歴史的保存地区との対比において違和感を感じる向きもあるかと思います。
しかし、ここはもともと地元の遊技場系の会社 3 の景気がよい時に、ガラスの美術館として完全な洋館で建てたもの 4 であり、その経緯を引き継いで美術館も併設するとなると、大きな要塞型の洋風建築でよいのかなと思います。線路西側には異様な宗教施設も存在し、歴史的保存地区とは違った都市計画がなされてきたものと思っています。
リゾート戦国時代へのロマン
さて前述の通り、筆者にとっては、リゾートトラストの会員歴は来年で20年となります。閉業したり消滅したサンメンの一部を除き、全施設の探訪を終えていますが、どれもその時代として素晴らしい出来栄えですね。
振り返れば、日本全国にはリゾート法に沸く戦国時代から現在に至るまでに、50を超える大名(リゾート会員権会社)が存在し、500を超える城(施設)を築きました。
その中には、日本型リゾート会員権として作られたがゆえに資金的な余裕があり、一般ホテル・旅館をはるかに超えるスケールとなった、知っておくべき建設経緯を持つものが、現存・リニューアル・経営交代・廃城(更地を含む)となっているのです。
懐かしくも新しいロマンの世界です。
筆者は、リゾート会員権研究約35年、自分の資金でコレクションした国内外会員権10以上。日本全国で探訪した施設(宿泊を伴わない訪問も多数)はほぼ全施設(500以上)となり、リゾート会員権フィールドサーベイヤーとして、また、日本型のリゾート会員権施設の語り部として、読者の皆さまを、過去と現在の世界にご案内します。
それぞれの日本型リゾート会員権施設が、ルーツさえも分からなくなる前に、この今昔物語をご興味のある人に伝承して欲しい。そしてなぜ、これらは世界で標準となるタイムシェアリゾートに溶け込めず、日本型でのみ展開され、世界的リゾート交換スキームであるRCI 5 やインターバルインターナショナル 6 と無関係で発展してきたのか。
やや飛躍しますが、それこそが、島国である日本社会、日本人とは何か、といった考察を進める鍵となりうることに注目していただければ、筆者の35年以上に渡る取り組みを締めくくることができ、望外の幸せです。
「ガラ権」
筆者は以前から、日本型、独自システムによるリゾート会員権を、以前の携帯電話が日本だけの「ガラパゴス携帯(ガラケー)」と呼ばれたことから、日本でしか通用しないルールを設けていることを指して「ガラパゴス会員権(ガラ権:ガラケン)」と呼んでいます。連載の中では、リゾート会員権のことを、この自ら名付けた「ガラ権」の名前で呼ぶことを、あらかじめご了承ください。
連載名はサイト主のresortboyさんが「会員制ホテル今昔物語」と名付けてくれましたが、同じ理由でこの連載を指して「ガラ権全国見て歩き」といった表現も使っていこうと思います。
また、この連載は、考証担当としてresortboyさんが、下記のごとく事実関係を証する注釈を入れながら、確認・編集を行ってくれています。筆者としましても、正確な「日本リゾート会員権史」を記録する事業として取り組んでまいります。しかしながら、このガラ権全国見て歩きをより正確なものに近づけ、後世に残るものにするべく、ご遠慮無用、どしどしコメントやご意見をください。訂正や追加事項も積極的に取り入れ、随時、加筆修正いたします。
今後の記事ですが、それぞれの施設の訪問時期が大きく変わることもあり、発表時におけるリアルタイムの情報ばかりではありません。また筆者の住居は、関東は東京エリアです。航空事情、電車事情、自宅からの自家用車利用など、各施設へのアクセスが東京エリア発という前提となりますことも、あらかじめご了承ください。
福島県白河郡西郷村の総合リゾート施設「ザ・グリーンブライヤー」は1995年4月にリゾート会員権として開発・分譲された。2002年11月に経営会社ウェストヴィレッジが経営破綻し、2003年3月にリゾートトラストが買収。増築してエクシブ那須白河として2005年4月に開業した。 ↩︎
zukisansuさん、そしてresortboyさん、新企画「会員制ホテル今昔物語」連載の開始おめでとうございます。全く偶然ですが、私が最初にエクシブに出合ったのが2004年です。セラヴィリゾート泉郷のリゾート交換システムRCIを利用して「エクシブ軽井沢」「エクシブ山中湖」に泊まりました。ここで完全にエクシブに夢中になり、2004年12月会員権を購入しました。「それからはや20年」です。日本型リゾート会員権の「同時代」を生きてきた私としては、自分の過去を振り返ることにもなり、非常に興味があります。ご健闘をお祈りします。
funasanさん、
本連載を最初から興味を持ってお読み頂き光栄です。さらには、連載記事作成の大先輩として応援のお言葉をいただき励みになり感謝いたしております。
私の場合、本やブログの執筆多数のfunasanさんのような経験が全くありません。貧弱な企画、低学年の子供の作文にも劣る原稿、そして適当に撮った写真を、名編集者resortboyさんのおかげで、公開できる記事にしてもらい、何とか今年の連載を乗り切れた感じです。
来年以降も頑張りますので、ご愛読、お気軽にコメント頂ければ嬉しいです。
お読み頂き、コメント頂いております皆さま、
どうもありがとうございます。
名編集者resortboyさんは、別名「リゾート学院」長であります。
本連載の機会に、初めて指導を受けておりますが、赤ペン先生が原稿を真っ赤にして突き返すなどの「強育」でなく、生徒(私)の良いところを褒めて執筆のやる気を起こさせつつ、そして見るに見かねて?(笑)記事の仕上げは、ご自身でまとめてくださる、親切な学院長でした。今昔物語は、この名編集者のサポートなくして語れないことを、付記させていただきます。
頂いたコメントについて、お便り返しがタイミング良くできない場合がありますが、もちろん、すべて読ませてもらい、今後の記事作成の参考として役立たせていきたいと思っていますので、今後ともよろしくお願いします。