ギリシャで決意した がんセンターとの別れ – 3

「がん患者よ、旅に出よう!」は、トラベルライターの舟橋栄二さんによる連載です。早期退職でリゾートライフを満喫する日々の裏には、2度の手術を含めた「がん」との闘いがありました。「旅は生きる喜び。その喜びをがんに奪われたくない」
本連載は「旅を通して転移がんを克服した全記録」です。(編集担当:resortboy)

私の場合、今後のがん治療の余地は十分ありました。左の甲状腺や首のリンパ節に転移したら手術で切り取り、肺に転移したら放射線で焼く、という治療です。しかし、2度目の手術の後遺症がひどくて、もうメスでがんを切り取るのは嫌です。

本心を言えば、「拒否したい」です。肺のアイソトープ治療も受けたくありません。

どこまでも青いエーゲ海を眺めながら、ふと思いました。

生身の体に大きな苦痛を与えてがんをやっつけるのではなく、がんの転移を受け入れ、母と同じ運命を歩んでもいいのでは? 肺炎に気を付けて、がんと共存して天寿を全うできる可能性もある。それまでは幸せに生きられる。旅もできる。たとえ短かったとしても…。

ここから思考が急展開します。

がんセンターの検査結果がクロ(=がん再発・転移)と出ても、もし、その後の治療をしない(拒否する)のなら、検査を受ける意味がなくなります。

逆に、検査結果がシロ(=がん再発・転移なし)と出たら、うれしさのあまり今のがん治療の努力を忘れ、もとの自分に戻ってしまいます。これではがん再発に道を開くようなものです。

検査結果がクロでもシロでもメリットは少なく、がんセンターへの通院や検査という精神的なデメリットの方がはるかに大きいです。

では、もし、検査をしなかったら?

添乗員さんの言葉が何度も頭の中で響きます。

知らぬままにしておいたほうがいい場合もある

転移・再発したがん患者にとって、がんセンターに通院するのは大きなストレスで、検査結果を聞く時はいつも恐怖です。これが続くと、精神的にまいってしまいます。

検査をせず、知らぬままにしておいたらどうでしょう? 少なくとも検査の恐怖からは解放されます。しかし、検査をしないのだからがんが再発している可能性があります。つまり、がん対策が必要ですが、それは今まで通りに真面目に対策をすればいい。

こうすれば、通院・検査の恐怖から解放され、自分の努力次第で将来のがん転移も防げるかもしれない。

そう思った私は、次回の造影剤入りCT検査を直前にキャンセルしてしまいました。まるで敵前逃亡です。

そして、がんセンターと縁を切り、それ以降、通院しなくなりました。ギリシャ旅行の1カ月後、2008年9月のことです。

通院せず、検査もしないので気分的には非常に楽になりました。しかし、これでがんが消えたわけではありません。

ここから私の本当のがん治療がはじまります。それは、孤立無援の道でした。

【次回】第26回・低体温だった私の「体温アップ大作戦」- 1

【前回】第24回・ギリシャで決意した がんセンターとの別れ – 2

本連載が単行本(紙の書籍)として刊行されました

本連載は、本サイトに掲載した舟橋栄二さんの記事から、がん闘病に関する回を再配信したものです。時期に関する記載は2022年現在のものです。

(本連載記事一覧)がん患者よ、旅に出よう!
(スペシャル対談)私のリゾートライフの全体マップ
(筆者ホームページ)舟橋栄二「第二の人生を豊かに」

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