コロナ禍で会員制ホテルは強かったのか

リゾートトラストは昨日、2021年3月期第3四半期の決算を発表しました。対象期間は2020年の4~12月。コロナ禍の中、会員制ホテル(リゾート会員権)は固定客を抱えているという強みを発揮できたのでしょうか。それとも、Go Toトラベル効果で一般のリゾートホテルの方が復活したのでしょうか。観光庁が発表しているリゾートホテルの全国データと比較して検証します。

まずこちらのグラフが、エクシブの4~1月の稼働状況をグラフ化したものです。これを見ると、夏休みの8月には対前年比で8割近くまで稼働が戻っており、Go Toトラベルキャンペーンに東京が加わって本格化した10月、11月には前年を超える稼働率を記録しました。

(画像出典:リゾートトラスト決算説明会資料)

もともと、エクシブの稼働率はそれほど高くありません。2019年度(2019年4月~2020年3月)のデータで48%、その前年で50.1%です。これに対して観光庁が集計しているリゾートホテルの全国データは、2019年の暦年で58.5%、2018年で58.3%ですから、エクシブは10%ほど全国平均を下回っていました。

しかし、コロナ禍の中ではこれが逆転しました。

このグラフは僕が作成した稼働率のグラフで(縦軸が稼働率で単位は%)、全国データは観光庁の発表データを使い、エクシブの数値は上記グラフから目視で数値を拾ったものです。ですから傾向をつかむための参考として見ていただきたいのですが、4月以降のすべての期間で全国平均を上回り、特に夏休みの稼働率は全国平均を大きく凌駕しています。

また、コロナショック後の「戻り高値」であるところの2020年11月においても、エクシブの稼働率は全国平均を上回り、上記のように対前年比でプラスとなりました。

こうしたエクシブの稼働率の好調ぶり(あくまでコロナ禍の中でという意味ですが)は、Go Toトラベル事業が、エクシブを利用するような「比較的高額利用でもともと旅行が好き」という客層にぴったり合致したことで記録されたという面もあるでしょう。しかし、そのキャンペーンのなかった時期においても有意な差が生じており、総じて、会員制というスタイルの底堅さを示したと言ってもよいのではないでしょうか。

しかし、リゾートトラストの場合は、会社の利益を牽引しているのはホテル運営ではなく、会員権の販売です。「非接触」の時代となって、果たして会員権販売の営業状況はどうなったでしょう。

(画像出典:リゾートトラスト決算説明会資料)

2020年4~12月の契約高を一覧にしたものがこちらの表です。昨年同期の424億に対して今期は412億と、わずか3%ほどしか売上が落ちていません。内容を見ると、売れているのはベイコート倶楽部で、エクシブ(湯河原離宮と六甲サンクチュアリ・ヴィラ)はほとんど売れていません。湯河原離宮は売上がマイナスとなっており、一度販売した会員権を回収していることがわかります(これが意味するところはここでは書きません)。

コロナ禍の中でもリゾートトラストの会員権販売は好調を維持していて、販売中の3つのベイコート倶楽部はほぼ売り切ったという状況です。逆にこれからは、在庫のあるエクシブや新規の会員権を売っていかなければなりませんから、コロナの影響というよりもむしろ、魅力ある在庫が減っているという部分が今後の焦点となるでしょう。

同社は2021年5月に中期経営計画の改定(2018年度~2022年度を対象としたプランの改定)を予定しており、5月の決算発表が非常に注目されるところです。KASAの会(resortboyが主宰する勉強会)は半年ほどお休みをいただいていますが、その頃にまた、コロナ禍が収まった状態で、皆さんとお会いして議論を交わしたいものです。

1 comment

  1. 今日(3月16日)に、リゾートトラストは2021年3月期の通期業績予想の修正などを発表しています。内容は3つあって、

    1)業績予想の修正
    2)特別損失の計上
    3)期末配当予想の増額

    です。記事にするほどではないので、記事本文の流れで、サクっとコメント欄でお知らせします。

    1)について発表資料には、「早期に回復してきた会員制ホテル運営において、想定を上回る結果」とあり、また、「安心、安全、健康を求める社会的ニーズが増大し、当社の主力事業である「会員制」ならではの本来の強みを再確認」と述べられています。経常利益は前回予想の130億円から152億円に上方修正されました。

    2)一方で、収益性の低下した一般ホテルについて、計214億円の特別損失(減損損失)を計上します。内訳は、ハワイのカハラで114 億円、国内15カ所で100億円です。カハラの2020年3月時点での簿価は267億4700万円でした。これによって、最終損益予想は114億円の赤字としました(前回予想は62億円の黒字)。

    3)期末配当について5円増額の15 円とし、年間配当を30 円と増額修正しました。続きはKASAの会で。ああ、いつ再開できるのかなぁ…。

    このコロナ禍の中、他社には真似できないオペレーションをしていますね。特異なビジネスモデルがメリハリの付いた財務戦略を可能にしています。

    もっとシステム投資をしてほしいと思いますが、それをしない理由も昨年、集中的に行った同社のビジネスモデル研究ではっきりしました。続きは再開後のKASAの会で!

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