エクシブやベイコート倶楽部の契約における海外施設交換利用権の検証 – 2

前回に引き続いて、エクシブ箱根離宮(2010年開業)と東京ベイコート倶楽部(2008年開業)の「募集要項」を素材にして、運営会社であるリゾートトラストが行った「海外施設交換利用権」に関する契約変更が、どのようにして行われてきたのかを検証します。今回は募集要項の核心である「利用規程」を見ていきます。

前回は契約の全体像について説明しました。今回の利用規程は、実際に購入するリゾート会員権がどのようなルールで運用されるのかを説明した部分です。

まず、エクシブ箱根離宮の募集要項にある利用規程の最初の行を以下に示します。

オーナーは、26日の占有日により、エクシブ箱根離宮が、ご利用いただけます。その範囲であれば、交換利用により、エクシブ、サンメンバーズリゾートホテル、RCI加盟の海外施設もご利用いただけます。また、別途リゾネットもご利用いただけます。

利用規程でまず述べられているのは、リゾート会員権による利用権に対する、端的な説明です。利用日数が26日であることを最初に示した上で、①契約施設である箱根離宮の利用、②エクシブの利用、③サンメンバーズ(リゾート)の利用、④RCIによる海外利用が利用できると述べられています。さらに、26日の利用日数とは別に⑤リゾネットが利用できると書かれています。

リゾネットというのは権利日(占有日)外の利用であり、会員権利の「外枠」に属するものなので、この稿では取り上げません。

ここからわかることは、RCIによる海外施設交換利用権について、エクシブの交換利用と同列に占有日の行使対象として位置付けられているということです。

次に、東京ベイコート倶楽部の募集規程にある利用規程の1行目を見てみます。

東京ベイコート倶楽部(以下「本倶楽部」という)の登録メンバー(以下「メンバー」という)は、24泊タイプは24日、12泊タイプは12日の占有日により、本倶楽部がご利用いただけます。また、その範囲であれば、RCI交換利用により、RCI加盟の海外施設もご利用いただけます。また、別途リゾネットもご利用いただけます。

東京ベイコート倶楽部はエクシブとはまったく別の会員権として当初販売され、その影響から、利用規約の冒頭にはエクシブ利用に関する記述がありません。一方で、占有日の行使対象としてRCIによる海外施設交換利用権については明記されています。

では、東京ベイコート倶楽部のエクシブ利用について、当初どのような説明のもとで募集が行われていたでしょうか。東京ベイコート倶楽部の募集要項には「エクシブ施設の交換利用について」という項目がありますので、そこを見てみます。

メンバーは占有日を交換することにより、エクシブ施設をご利用することができます。なお、24泊タイプは年間6日、12泊タイプは年間3日のご利用が可能で、この場合は事務局へお申し込みください。

このように、東京ベイコート倶楽部では当初、占有日の4分の1をエクシブと交換利用できるとしていました。そして、その交換利用は「事務局」が担当すると明記されており、RCIが関与することにはなっていません。

その理由は、RCIでは「同じ運営会社の会員権同士での交換はできない」というルールになっていたからです。

当時のRCIジャパンのホームページにも記載があり、そこには「同一会社が運営するホテル同士の交換はできません」と書かれていました。ベイコート倶楽部の利用規程で社内の「事務局」を通じてエクシブとの交換を行うとしていたのは、当然のことでした。

エクシブ箱根離宮も東京ベイコート倶楽部も、募集要項には「RCI海外施設のご利用について」というセクションを設けて、これらリゾート会員権が提供する海外施設交換利用権について詳しく説明しています。

そのセクションでは海外施設交換利用権はRCIジャパン(アール・シー・アイ・ジャパン株式会社)を通じて提供される旨が細かく説明されており、RCIジャパンの連絡先住所と電話番号も記載されています。RCIジャパンはリゾートトラストの子会社でしたが、上記の「事務局」とは独立した表現です。

募集要項から少し離れますが、当時のエクシブ側からベイコート倶楽部への交換利用がどのようなものだったのかについて触れておきます。

前述のように、東京ベイコート倶楽部はエクシブとは異なるリゾートクラブとして設立されたため、発売当初は、エクシブ会員は東京ベイコート倶楽部を使うことができない、という営業トークが行われていました。

しかし一方で、ベイコート倶楽部会員は会員権ネイティブの機能としてエクシブを使えるとして発売されました。ベイコート倶楽部の交換カレンダーには色の概念がありませんでしたが(募集要項にはタイムシェアカレンダーが掲載されていますが、色は塗られていません)、エクシブを使う際には「レッド」として取り扱われるというのが、当初からのルールでした。

これに対して、当初のエクシブ会員(つまりベイコート倶楽部の見込み客)からは反発が起きました。エクシブの交換カレンダーでレッド(土曜日相当)は一般に7日に1つしかありませんから、週末利用だけを考えた場合、エクシブ26泊とベイコート倶楽部24泊に「予約パワー」の相違はないことになります(エクシブ13泊とベイコート倶楽部12泊も同様)。

同社はむしろそのようにこの制度をデザインしたと考えられますが、ベイコート倶楽部からエクシブが(週末に関しては同様に)使える一方で、その逆(エクシブ会員のベイコート倶楽部利用)はできないとしたわけですから、エクシブ会員がおかしいと思うのも無理はないことでした。

なぜなら、ベイコート会員が「交換」でエクシブを利用できるのなら、その「交換」されたベイコート側の権利はエクシブ側で利用できないとつじつまが合わないからです。同社の自ら運営するリゾート会員権に対する権利意識は、東京ベイコート倶楽部発売の段階で歪んでいた(都合のいいように軽視されていた)と言うほかありません。

この反発を受けて同社はすぐに方針を転換します。以下は東京ベイコート倶楽部開業1年前の2007年に同社の会報誌「MY RESORT」に掲載された告知です。

文章を引用します。

「東京ベイコート倶楽部」は独立した会員制クラブであり、「エクシブ」および「サンメンバーズ」会員の方は原則としてご利用いただけません。ただし、アメリカに本部を置くRCI(アール・シー・アイ)の加盟施設ですので、RCIを通じて交換申し込みが可能です。つきましては、交換お申し込み等についてご案内いたします。

会員権のネイティブな機能としてエクシブとベイコートは交換できないけれども、海外施設交換利用権を担う外部組織であるRCI(ご丁寧にアメリカに本部を置く、とまで書かれています)を通じて、「交換申し込み」が可能だとしました。

RCIでの交換には占有日の預け入れが必要です。ベイコート倶楽部からエクシブに交換するにはRCIを使う必要はなく、上述の通り、会員権のネイティブ機能として位置付けられていました。しかし、エクシブからベイコート倶楽部に交換するにはRCIへの預け入れが必要です。これでは交換が成立するはずがなく、説明が付きません。しかも、RCIにおける同一会社非適用のルール(上述)に反しています。

苦し紛れの「嘘」のはじまりです。以後、同社はこの嘘を嘘で塗り重ねることで、自縄自縛に陥っていきます。

東京ベイコート倶楽部は、エクシブで成功した小口分譲を利用した豪華シティホテルとして日本ではじめて誕生した、ホテル開発史に残る歴史的プロジェクトです。同社もそのことを踏まえ、周到な計画を立て、エクシブとは相容れない世界を「完全会員制」というキャッチフレーズのもとに作ろうとしました。

しかし、それは残念ながら、それほどまでには受け入れられなかった。時代が早かったのでしょう。そのため、ベイコート倶楽部はエクシブとの相互利用に活路を見出そうとした。今回の記事はそのとば口に触れただけですが、その後、同社はさらに大胆に制度を改変していくことになります。

(振り返ってみてもあまりにでたらめで憂鬱になってきました。まだこの話題は先が長いのですが、続きは反響があれば執筆します)

その改変の道具として使われたのがRCIであり、同社の会員権から海外施設交換利用権が失われてしまったのは、こうして積み重なった嘘のツケでもあるのです。そして一方的にそのツケを何万人もの会員が払わされたのです。

今回のまとめです。エクシブ箱根離宮でも、東京ベイコート倶楽部でも、RCIによる海外施設交換利用権は、占有日の行使対象として交換利用と同列に位置付けられて販売されました。

一方、ベイコート倶楽部のエクシブ利用は当初から会員権の利用対象であり、それはRCIと関係なく、社内の「事務局」が担当する仕組みでした。RCIは同一会社間での交換を認めていなかったからです。

反対に、エクシブはベイコート倶楽部の利用ができないと当初されていましたが、ベイコート倶楽部の売れ行き不振やエクシブ会員からの苦情等の理由で、なし崩し的に「交換」利用を認めることとなりました。

そしてそのときの方便として、海外施設交換利用権を担うRCIが使われることになりました。しかしそれは、RCIの交換ルール(同一会社の交換は取り扱わない)を逸脱したものであり、同社は自己矛盾に陥り、そこから抜けられなくなります。

これが後に大問題となる、RCI/RTCC事件の源流です。

冒頭の写真は今年2022年の臨海副都心チューリップフェスティバルの様子です。タイミングが合えば桜とチューリップを同時に楽しめますので、ぜひ来年、トライしてみてください。

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