来春に迫った北陸新幹線の延伸に湧く越前エリア。それに沿う形で、この連載は石川県から福井県に入っていきます。派手な石川県の両隣、富山県と福井県は、地味ながら渋い魅力にあふれています。
今回取り上げるのは福井県。何と言っても、人生で一度は行きたいバケットリストに入れてほしい曹洞宗総本山、永平寺が、石川県との県境近くに鎮座しています。永平寺は歴史に甘んじることなく現代にも通用する改革も進めていて、門前の宿坊は「柏樹関 1」としてリニューアル運営されています。
前に流れる小川に沿った、まるでハーヴェストクラブVIALAシリーズかそれ以上と思えるモダンな施設。清水建設の手によって完全に建て替えられ 2、運営は藤田観光に委託 3。わずか18室の客室に東京の椿山荘からシェフを招聘し、ミシュラン2つ星を取得するなど 4、ユニークかつ最新鋭のホテルとなっています。
さて、ハーヴェストクラブの名前を出したところで、意外な場所にオールドハーヴェストのスキーリゾートがあり、今回のご紹介となります。
永平寺から山側の奥に車を進めますと、法恩寺山道路という有料道路があり(2022年10月に無料化)5、東急の経営する西日本最大級のゲレンデを誇るスキーリゾートに行きつきます。
スキージャム勝山 6、地元で「ジャム勝山」と呼ばれているそのスキー場は、全長5,800メートルものロング滑走ができる大規模スキー場ですが、関東では全く知名度がありません。このジャム勝山のゲレンデ中央にあるセンターハウスに併設される形で、「東急ハーヴェストクラブ スキージャム勝山」7 があります。
筆者が訪問した時は、法恩寺山道路はまだ有料でしたので、このホテルを見るためには、料金を現金で払わざるを得ませんでした。ガラ権を見るためだけに往復820円の道路料金を払うとは事前に調べておらず、料金所でUターンして帰ろうかと思ったところに、現れたのは超美人の料金収受スタッフ。筆者は喜んで料金をお支払いし、お気をつけてと言われて有頂天。まっしぐらにハーヴェストに向かいました。
スキー場は東急がバブル期に新設した新しいゲレンデ構成です。1988年にグランデコ裏磐梯(今は撤退)8、1989年タングラム斑尾 9、1992年ハンターマウンテン塩原 10 と続々開業した東急のスキーリゾートですが、このスキージャム勝山は1993年ですから、新設としては最も新しい部類となります。
「新しいゲレンデ構成」とは、センターハウスを中心に置き、そこからゴンドラ・リフト等を山全体に扇型に拡げるゲレンデレイアウトを指します。滑れる面積は大きいが、滑り下りた目的地が必ずセンターハウスとなるので、迷うことがなく、初心者から上級者まで共に楽しめる特徴があります。
東急ハーヴェストクラブは、1993年開業の伊東から先、バブル崩壊の影響を受けて4年間は新規施設開業がありませんでした 11。そこでそれまでと違う作戦で、既存の東急系列ホテルや施設に共用施設をゆだね、宿泊に特化し開発事業費を抑えたガラ権を開発します。
筆者はこのような形式を「パラサイト型」と名付けています。東急がバブル崩壊でガラ権を諦めなかったのは英断で(それで今の繁栄がある)、パラサイト型なくして続けられなかったでしょう。
パラサイト型は1997年斑尾(ホテルタングラムに寄生)から始まり、この好評を得て、1999年には一気に3つ(蓼科アネックス・スキージャム勝山・山中湖マウント富士)を展開しました 12。
スキージャム勝山はこの99年組の一員です。99年組の活躍なくして、21世紀以降、新設・大ヒット作となる旧軽井沢や箱根甲子園の誕生はなかったでしょう。
会員権コレクターであった筆者は、このパラサイト型のアイデアに感銘・賛同し、斑尾の発売時1996年に初めてハーヴェスト会員となりました。以降、ハーヴェストのファンとなり、旧軽井沢・箱根甲子園と次々に購入、一時は3口の会員であったのです(現在はすべて売却し、会員ではありません)。
本施設の売りはエントランスロビーからのゲレンデの眺望です。部屋は100室(うち15室はホテルハーヴェスト 13)と中規模で、各室はオールドハーヴェスト標準仕様。レストランには高級感はないがスキー場としては普通。敷地は広大なので、ゆったりとしたレイアウトの館内と露天風呂付温泉大浴場や室内プールなど、付帯施設は一通り完備しています。
オールドハーヴェストの一員であるスキージャム勝山ですが、現在、東急ハーヴェストの中古会員権案内ページには、寄生型の始祖とも言える静波海岸とともに、仲介情報が掲載されていません 14。スキーブーム衰退とともに、消えてなくなる運命なのでしょうか。
季節外れに行ったために、訪れる客も少なく、寂しい印象でしたので、そんな感じがしました。
永平寺 親禅の宿 柏樹関が「ミシュランガイド2021 北陸 特別版」に掲載されました。 | ブログ | 藤田観光株式会社 ↩︎
この間に開業した東急ハーヴェストクラブ施設には、預託金制で現在すでにクラブが解散しているものとして、小規模な箱根明神平(39室、1993年7月開業)、賃借物件の京都(後の京都アーバンステージ、1994年3月開業、81室)がある。
東急ハーヴェストクラブ発展史の草稿メモ – resortboy's blog – リゾートホテルとホテル会員制度の研究 ↩︎東急式錬金術の系譜 – 1(寄生型会員権の販売) – resortboy's blog – リゾートホテルとホテル会員制度の研究 ↩︎
スキージャム勝山は2024年3月までに他社に譲渡なんて話が出てきました。本土のスキー場は見限ったのでしょうか。斑尾と玉原はどうなるのか?
この記事の公開に合わせて(爆)、12月16 日にジャム勝山の今シーズンがはじまりました。
スキージャム勝山 福井県内最速オープン! 2023 年 12 月 16 日(土)よりスキー場営業開始 | 東急リゾーツ&ステイ株式会社のプレスリリース
そして時を同じくして、マウントジーンズ那須を閉鎖し、塩原に統合、みたいな感じです。
マウントジーンズ那須 2023-2024 シーズン営業予定と施設閉場について | 東急リゾーツ&ステイ株式会社のプレスリリース
というわけで、年度末を迎え、想定通りの展開となっております。
「スキージャム勝山」管理運営会社の全株式譲渡 東急不動産が米投資会社に | 経済 | 福井のニュース | 福井新聞ONLINE