東急式錬金術の系譜 – 1(寄生型会員権の販売)

引き続き、東急ハーヴェストクラブに対する「違和感」を、歴史を紐解きながら追っていきます。今日は、東急不動産に特徴的なリゾート会員権開発手法である「寄生型」の施設についてまとめてみます。

今回のメモは、研究仲間であるzukisansuさんとの連載企画会議における対話を下敷きにしています。氏は、東急ハーヴェストクラブ斑尾にはじまる同社開発済みリゾートホテルへの会員制ホテル追加建設を、「パラサイト型」と名付けています。

僕は今回、その概念を少し拡張して、既存ホテルへの預託金制会員権設定や、他社との合同事業、既存自社ホテル客室の分譲などを含めて「寄生型」と仮に命名して、事実関係を研究ノートとしてまとめます。

なお、Retreatと呼ばれる既存ホテルへの木造戸建て増設、またInタイプと呼ばれる既存ホテルへの会員権設定については、東急式錬金術としてかなりの存在感を持っているので、別稿でまとめる予定です。

また、続きものなので「錬金術」と題していますが、今回の寄生型リゾート会員権開発をすべて錬金術だと言いたいわけではありません。しかし、この寄生型ビジネスを理解せずして、現在、東急不動産が行っている錬金術的なリゾート会員権生産を理解することはできないのではないかと思っています。

軽井沢万平(1989年開業:期間満了)

蓼科に続く2つ目のハーヴェストクラブは、軽井沢の万平ホテルに設定された「東急ハーヴェストクラブ軽井沢万平」でした(1989年。勝浦より数日早い)。1963年建設の「欅館」を改装し、客室をニコイチにしてリフォーム。22室の預託金制ハーヴェストクラブとしてオープンしたものでした。2009年に20年の設定期間を終えて、クラブは解散しました。

会員制利用はあとわずか

静波海岸(1991年開業:現在公式販売なし)

静岡鉄道が静波海水浴場で営業していた「静鉄海の家」を、1986年に通年開業のリゾートホテルとして開業したのが「静波リゾート スウィングビーチ」。その後、増床が計画された際に「東急ハーヴェストクラブ静波海岸」が50室(500口)で分譲されました(共有制)。

ビーチまで1分

軽井沢高原(1997年開業:期間満了)

バブル期に鹿島建設が、北軽井沢(長野原町)の町有地245haを利用して、メガリゾート開発「浅間スポーツアリーナ」を計画しました。その第1期、1997年に「プレジデントリゾート軽井沢」を開業した際、ホテル100室のうちの90室がハーヴェストクラブとして販売(預託金制)されました。「プレジデントリゾートホテル軽井沢」としても一般営業され、クラブ設定期間を終えた(20年後)2017年7月以降は、全客室がプレジデントとして運営されています。

なお、浅間スポーツアリーナ構想は1999年にスキー場「軽井沢スノーパーク」を開業して終わってしまい、計画の多くは実現しませんでした。

斑尾(1997年開業:仲介で販売中)

スキーブームに沸く1989年に東急不動産が開業したスキー場「タングラムスキーサーカス」(斑尾東急リゾート)にある「ホテルタングラム」に隣接したホテルとして、1997年に90室900口が「東急ハーヴェストクラブ斑尾」として建設・分譲されます(共有制)。

なお、ホテルタングラムには2007年に「ビッグウィーク斑尾フレンズ」として東急ビッグウィーク(当時)の客室として会員権が設定されたりもしました(細かい話なのでスルーします)。

蓼科アネックス(1999年開業:仲介で販売中)

1999年に、東急蓼科リゾート内の蓼科東急ホテルの道を隔てた向かいに、600口(1室換算12口相当)で分譲されました(共有制)。やはり5室を東急不動産が所有し「ホテルハーヴェスト蓼科アネックス」としても平行営業。

このとき、プール・大浴場がスパ棟「鹿山の湯」として建設され、蓼科東急ホテルのみならず日帰り温泉としても解放します。開業当初から相当に会員制のプライベート感を度外視した施設であったことがわかります。

「温泉」プール

スキージャム勝山(1999年開業:現在公式販売なし)

斑尾に近いスタイルで蓼科アネックスと同じ1999年に開業(ただし勝山に斑尾のホテルタングラムに当たる既存ホテルはなく、寄生度合いは薄い)。総客室数100室のうち85室に預託金制会員権を設定。15室を根拠に「ホテルハーヴェストスキージャム勝山」としても営業されています。

zukisansuさんの連載で近く単独登場予定ですのでお楽しみに。

山中湖マウント富士(1999年開業:仲介で販売中)

1963年開業の富士急が誇る老舗リゾートホテル「ホテルマウント富士」を1999年に大規模リニューアルする際、増設した100室を東急不動産が賃借して、リゾート会員権が設定されました(預託金制)。

蓼科リゾート(2002年開業:仲介で販売中)

1981年開業の「蓼科東急ホテル」(客室数78室)内の20室を、2002年に預託金制リゾート会員権として販売。

暖炉を囲んで

裏磐梯グランデコ(2004年開業:期間満了前に解散)

1992年に東急電鉄が開業した「グランデコスノーリゾート」がうまくいかなくなり、2003年に東急不動産に譲渡されます。翌2004年に1992年にスキー場と同時オープンした「ホテルグランデコ」(後の裏磐梯グランデコ東急ホテル)の103室のうち、30室が東急ハーヴェストクラブとして販売されます(預託金制)。

2023年には東急不動産も耐えきれず、グランデコのリゾート開発のすべてを手放します。同時にハーヴェストクラブも契約期間満了前に解散となりました(東急不敗神話を否定する黒歴史)。

3 comments

  1. みな懐かしい施設です。京都にはトラスト京都アーバンステージ(1994年開業客室数は81室)がありました。京都の老舗薬屋(亀田六神丸)の所有物件でしたが現在はシンガポールの会社が購入してホテルノク京都として営業中です。
    万平はお部屋が広くて好きでした。ご指摘のように古い建築で床はブカブカたわんでいましたし(客室でボールが転がる)秋冬は室内にカメムシが大量に侵入するのが難点でした。子供も気に入っていたのでここは無くなったのが本当に残念でしたね。
    プレジデントリゾートホテル軽井沢はHVC契約終了後も相互利用施設となっていましたが今年度いっぱいで相互利用を終了することが決まっています。

  2. ハーヴェストクラブの相互利用施設として思い出されるのはプライムリゾート賢島(現 都リゾート 志摩 ベイサイドテラス)ですが、これはガラ権連載の方でそのうち取り上げられるのかなぁ?

    賢島側からはハーヴェストクラブが利用できると今でも以下のような立派な案内ページがあります。

    提携施設のご案内【公式】都リゾート 志摩 ベイサイドテラス

  3. 提携、という話で、例えば以下のような「社内提携」みたいなものもあるんですが、これはいったいどういった「クラブ」なのでしょうか? ご存知の方は教えてください。

    nolクラブのご案内|【公式】nol kyoto sanjo|京都三条

    ホテルハーヴェストや和風四文字旅館ホテル群などの一般利用や、上記やプリンスのような他社クラブ・自社クラブからの送客システムも用意されていて、その上メンバーシップ(入会金)がありえないほどの高騰。そしてタイムシェアではないので都度料金をそれなりに支払い、予約はそれなりの争奪戦。

    かなり一般の方が理解するのは難しい商品性のように思えてきました。

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