エクシブの平均利用単価を20年分振り返る

今日も、今回の値上げの本質をつかむために、データの整理を試みます。本来ならば、読者の皆さんと楽しくコメント欄でディスカッションを深めたいのですが、この話題は、いま集中してやるほかはないという気がしており、記事化を優先してコメント欄での返答などを後回しにしております。どうぞご了承ください。

今日は、エクシブの利用客が過去20年間、結果的にどのくらいの利用料を実際に支払ってきたのか、その実態を追跡してみたいと思います。リゾートトラストは投資家向けにホテル利用客の顧客単価を明らかにしています。また、ホテルブランド別に、宿泊、料飲、その他施設の売上がどれだけあったのかも公表しています。

それらのデータを使って、利用客が1泊につき実際にどれだけの宿泊費や飲食費を支払ったのかを推計してみたのが今回の記事です。お断りしておきますが、これは僕が「手を動かした過程」をご紹介するに過ぎず、同社の発表内容とは異なります。料飲の売上と言っても、宿泊を伴わない婚礼や宴会などもあるでしょう。ですから、あくまで参考値と考えてください。

具体的には、決算説明会や有価証券報告書に記載されているデータから、集計時点で存在する全エクシブの売上に関して、宿泊金額、料飲金額、その他施設の売上金額からそれらの売上シェアを求めて、発表されている顧客単価にそれらを掛け合わせて分野別に金額を推計しました。

集計の対象は過去20年間です、5年おきに5つのポイントを設定しました。各時期に特徴的な様子についてコメントすると、以下の通りです。

・2022年3月期…コロナ禍の中ながら、会員制の特色を活かして堅調な利用があった年
・2017年3月期…湯河原離宮開業直後で、全エクシブが既に存在。芦屋・ラグーナのベイコート倶楽部で「アップグレード販売」が問題視されていた時期(ベイコートは東京以外未開業)
・2012年3月期…開業直後の有馬離宮が通年で貢献。リーマンショック後で会員権の販売在庫が少ない時期(鳥羽別邸発売が2014年1月)
・2007年3月期…2004年10月のルームチャージ制導入と2005年4月のレストラン値上げの後。2008年6月のルームチャージ値上げより前。
・2002年3月期…オールドエクシブが完成し、グランドエクシブの販売時代。初期エクシブは利用実費制(パーソンチャージ)。

グラフはこちらです。

これを見ると、20年間のうち、コロナ禍の影響がある直近の22年3月期を除くと、きれいに5年で約1,000円ずつ、顧客単価が切り上がっています。直近のデータを異常値と考えるならば(コロナ禍以降導入されたロングステイプランなどによる単価下落の影響など)、この20年間、利用客にとってのエクシブは、平均すると、1人1泊年間200円ずつ値上げされた、また、そうなるように利用されてきた、と言うことができます。

そのように見ると、昨年来、特に今回(2022年秋)の値上げはその幅がいかにも急激である、ということが言えるでしょう。

これまでもたびたび値上げはありましたし、離宮シリーズなどの追加によるホテル自体の高級化・高額化もありました。しかし、このグラフを見ると、値上げのスピードは緩やかであったと感じる方が多いのではないでしょうか。

続いて、稼働率と利用料金の変化の相関関係を確認してみることにしました。

仮説として、利用料金が上がった分、稼働率が下がると考えてみます。例えば、1万円だった宿泊単価が1.5万円になって、稼働率が66%(3分の2)になったのなら、利用者にとっての出費額は維持されることになります。この単純なモデルを採用し、利用単価の上昇率の逆数を稼働率に掛け合わせたものをグラフ化してみます。

この考えで作ったグラフがこちらです。青のラインが実際のエクシブ全体の稼働率です(数値はパーセント)。赤のラインは2002年3月期を基点として(つまりドットは重なっている)、そこからの利用単価上昇率の逆数を基点の稼働率に掛けて求めた試算値です。

最初の10年はきれいにグラフが一致しており、この2つの数値には相関関係があることがわかります(もちろん、ホテルは老朽化しますし、一方で新規開業もありますから、話はそんなに単純ではありませんが)。顧客は集団としては概ね合理的な行動をしており、客単価が上がればその分だけ稼働を減らして、集団として出費を抑制する傾向があるように見えます。ざっくり言って、値上げすればそれに合わせて稼働率は落ちるようです。

2017年3月期になると実際の数値が多少、上ぶれしています。東京で開発が止まっていたベイコート倶楽部の開発が復活し、芦屋・ラグーナの両ベイコート倶楽部が開業前に契約高を伸ばしていた時期です(両ホテルは開業前。開業前でも契約すれば他ホテルの利用が可能)。それが影響して人気エクシブの稼働率向上に寄与したのが、2%のズレの要因ではないかと推測します。

また、2022年3月期は逆に実際の稼働率が大きく下ぶれしていますが、これはコロナ禍の影響で説明が付きます。

さて、今回の値上げですが、時期として「全国旅行支援」のスタートとほぼ一致することとなりました。つまり、税金からの多大なる資金が同社にも(間接的に)投入されることとなります。その結果、顧客の値上げへの感覚はまひすることでしょう。短期的、つまり2023年3月期決算に値上げの逆効果(=稼働率の低下)が現れる可能性は低そうです。

1 comment

  1. エクシブ/ベイコートの会員権を持ってる人が果たして全国旅行支援を活用するのかは疑問ですが…
    非常に興味深いデータです 稼働率が(コロナ前でも)50%程度というのは他のホテルもそんなもんなんでしょうか(閑散期の稼働率は低い?だとしたらもっと大胆なダイナミックプライシングが必要なのかも)
    また足元の値上げってどれくらいでしたっけ?

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