この3月末で事実上の終えんを迎えるユニークなビジネスホテルチェーン「ホテルトラスティ」。リゾートトラストの撤退劇の中で疑問だったのが、タイトルにある「なぜ心斎橋を捨て阿倍野を残したのか」という点です。それを探るべく、現地を取材しました。
ホテルトラスティの中で残るホテルは3つです。
ホテルトラスティ東京ベイサイド。これは東京ベイコート倶楽部と一体化していて売却が不可能です。
ホテルトラスティ名古屋白川。これはヴィア白川という商業ビルの中にあり、また同社発祥の地であることもあり、売却が不可能です。
そしてホテルトラスティ大阪阿倍野。これは上記の2つとは違ってテナントとしての入居ですから、手放すことは容易だったはずです。
大阪には売却されるホテルトラスティ心斎橋があります。これはリゾートトラストが開発し所有する堂々たる1棟建てのホテルで、中には同社が注力するメディカル会員権の拠点「ハイメディック大阪」があります。
なぜ自ら手掛けた心斎橋を売り、単なるテナント入居の阿倍野を残したのか。
ホテルトラスティ大阪阿倍野に行ってみましょう。このホテルは2012年3月にホテルトラスティの6番目のホテルとして開業しました。天王寺駅に地下通路と歩道橋で直結する好立地。「あべのnini」というエリア再開発事業でできた複合ビルの3~11階に入居しています。
ホテルの上の高層階、13〜24階はマンション(コンドミニアム)で、建物は見るからに普通のタワマンです。
ホテルに行ってみようとするのですが、まず、入口がどこにあるのかがわかりませんでした。うろうろと迷って、ようやく銀行の脇にある小さなエントランスを見つけ、ホテルの中に入ることができました。テナント入居とはこういうことなのかと思わされます。
ホテルは全202室となかなかの規模です。心斎橋が211室ですからあまり変わりません。内訳はシングル40室、ダブル145室、ツイン17室で、それまでのトラスティに用意されていたスイートはありません。この辺りにもテナント感があるように思われます。
フロントやロビーもかなり狭く、心斎橋とは違った作りで、タワマンの中をトラスティ風にデコレーションした、という感じがします。
ロビー階には写真のテラスカフェバーと、奥に鉄板焼があります。
では、なぜ心斎橋を売ったのか。
同社のメディカル会員権は検診が2日に渡るため、対応する宿泊施設が必要になっています。メディカル会員権は東名阪で展開していますから、それぞれの都市にトラスティを残して、会員権のための宿泊施設を維持する必要があったのは理解できます。
しかし、トラスティ心斎橋にはメディカル会員権のクリニックであるハイメディック大阪まであるのです。
心斎橋を売ったのは、ハイメディック大阪の移転先があるから、としか考えられません。そうでなければクリニックを備えた自社所有のホテルを売るはずがない。
その答えはこの写真の中にあります。
これはコンラッド大阪から見た中之島の景色です。中央右にひときわ高いビルが見えますが、これは関西電力の本店でもある関電ビルディングです。その後ろ側には現在、「未来医療国際拠点」と呼ばれる先端医療を提供する医療機関や企業が入居する施設が建設中です。
リゾートトラストは、その未来医療国際拠点内の「未来医療MEDセンター」の中に、メディカル会員権の検診拠点を開設し、一般健診クリニックも併設します。オープン予定は2024年の春。そうなればハイメディックはこちらに移ればよいわけです。
(公式)未来医療国際拠点とは | 一般財団法人 未来医療推進機構
この決定があったからこそ、堂々たる自社物件の心斎橋を手放し、単なるテナントの阿倍野を残したのでしょう。
そこには、「どうしても自社物件を処分してビジネスホテルから撤退したい」という、強い意志のようなものを感じずにはいられません。
存じ上げないのですか?
撤去のために必要な違約金を支払えないため
しぶしぶ阿倍野は残しただけです。
敬語の間違え方が、いい具合に”中の人”っぽい気がしますね…
こちらのコメント、ちょっとどうしようかなと思って(荒らしの類とみなして削除するかどうかを検討)、迷っておりました。
このサイトは多くの方に見ていただいていて、もちろん業界関係の方も多いので、間違っていれば正しい情報を書いていただければよいわけですし、訂正の情報が入ってこなければ真実である可能性もあろうかと思いまして、今のところコメントはそのままにしています。
ものが言いやすいサイトであることも大切と思っていますが、後日削除する可能性もあります。