会員制リゾートが世界一を目指したあの頃(後編)

「会員制ホテル今昔物語」は、35年に渡ってリゾート会員権についてウォッチされているzukisansuさんによる連載です。日本で独自の発展を遂げたリゾート会員権、すなわち「ガラ権」の歴史をたどることで、日本的文化とは何か、日本人とは何かを、過去に学び未来を見通す―そんな奥行きのある連載として、僕から特別にお願いし、zukisansuさんにしか語れないこのテーマでご執筆いただく運びとなりました。どうぞご期待ください。(企画・制作:resortboy)

前編では、かつてのアルファリゾート・トマムの、現在は星野リゾートが営業主体となっているエリアを見て歩きました。

会員制リゾートが世界一を目指したあの頃(前編)

以下に掲載するリゾート全体図をご覧いただければおわかりの通り、見て歩きでは駅からまず最も奥(現リゾナーレトマム)まで行き、だんだん駅の方面に戻る形でドライブ周回をしています。

星野リゾートエリアのその他施設

前回、最古参のホテルアルファトマム(現在ホテルは閉鎖。「ビュッフェダイニング hal -ハル-」としてレストランのみの営業)までを見て回りました。そのホテルアルファトマムに隣接する、バブル時代からあるウェディング施設「水の教会 1」は残っています。

このリゾートはほとんどすべてバブル期の遺産の再活用ですが、星野リゾートによって新規に設けられたものとして、これまでの途中、ヴィレッジアルファの裏手にあるスキーイン・アウトのバラエティ施設「ホタルストリート 2」があります。

リゾナーレ、ヴィレッジアルファ、タワー間はガラスで覆われた連絡通路で結ばれていますが、筆者の訪問時は、劣化により一部ガラスが割れており、広大なエリア管理を持て余している印象を受けました。

駅に近くなるエリアには、やはり元々あった日本最大級の造波プール、現「ミナミナビーチ 3」(旧「VIZスパハウス」を縮小して運営)が営業中で、そこから奥はクラブメッドのエリアとなります。

ホテルアルファトマムとミナミナビーチの前の広大な広場は星野によって「アイスヴィレッジ 4」が設けられ、冬の期間はアイスホテルが設営されます。クラブメッド手前の「リゾートセンター」からゴンドラで上がった先には、インスタ映えの話題性を狙った星野らしい企画「雲海テラス(冬は霧氷テラス)5」が展開されています。

これら、後から星野が作った企画群は、いかにも今風の写真映えするものではありますが、「仙台有力武将の見果てぬ夢」には遠く及ばず、鉄砲隊(=手強い北海道の山の現実)に向き合って逃げ惑う兵卒の幟が舞う、そんな感じを受けました。

クラブメッド北海道トマム

ここで星野を離れ、クラブメッドのエリアに進みます 6

こちらはかつての「ヴィラ・スポルト」(現NEMURO棟、YUBARI棟)、「ヴィラ・マルシェ・ホテル・アビチ」(現HIDAKA棟)をリニューアルして運営されています。

この「クラブメッド北海道トマム」は以前にサホロリゾートの紹介の際に書いた「オールインクルーシブ」リゾートですので 7、食事もアクティビティも中で完結するため、こちらの利用者が星野側施設を利用することはほぼなさそうでした。

閑散とした星野側に対し、クラブメッド側は多数の来客が来ていることがわかり、ここだけ活気が感じられました。

かつての輝きと日本人気質

筆者が20年ぶりに訪れた「アルファリゾート・トマム」は、星野リゾートやクラブメッドが頑張って運営を続けているものの、全国のスキーリゾート銀河系の中、「アルファ星」として輝いていた頃の活気を感じることはできませんでした。

クローズした施設の廃墟感と、開業している部分でも、細部には隠せないほどの経年劣化。全体としてリゾート内の殺伐とした雰囲気には、恒星爆発後のブラックホールを見るような悲しみがありました。

ワールドクラスのウィンターリゾートになれたかも知れないトマムは今や、不便な場所にある、普通の日本山村のスキー場となっていたのでした。そこには、熱狂はするが冷めやすい、日本人の気質が感じられます。

思えば、バブルに乗って不動産デベロッパーが次々と造ったスキーリゾートは、山を切り開き、長大な索道(リフトやゴンドラ)を掛けることが、まず先にありました。

スキーリゾートとは、その索道で登った頂きから、いかに見事に一気に滑り下りるか、というハードなスポーツ面だけで成立するものではありません。しかしかつてのスキーブームは、雪山の絶景を楽しみ、様々な雪アクティビティを時間をかけて楽しむという文化を醸成することなく、時が過ぎました。

日本の雪は世界的に深いと言われています。重装備が必要なスポーツとなると飽きられるのも早い。その後、スノーボードが盛んになりましたが、かえって往年のスキー概念から抜け出せない人との軋轢も生まれました。

結局のところ、索道乗り場の行列の中、いかにリフト券を無駄にせず、何度も早く滑り降りるかが私たちの問題であり、そこから抜け出すことがなかったのです。

トマムはスキー場(ゲレンデ・雪質)そのものでは、他の北海道スキー場と比べて優位性に欠けていましたが、広々とした場内は、雪アクティビティには向いていたと思います。その余裕を生かしきれなかった無念。インバウンドで来た余裕ある海外人が復活させてくれるのでしょうか。

スキーシーズンはもう少し違うのかもしれませんが、そんなことを考えながら、もう来ることはないかも知れないなと、トマムのリゾートエリアを出て、黄昏時に札幌方面に向かいました。

(この項、拾遺編に続く)

会員制リゾートが世界一を目指したあの頃(拾遺編)


  1. BCS賞第31回受賞作品(1990年, 関兵精麦 / 安藤忠雄建築研究所 / 大林組)
    水の教会 CHAPEL ON THE WATER | TOMAMU the Wedding
    水の教会 - Wikipedia ↩︎

  2. ホタルストリート|星野リゾート トマム【公式】 ↩︎

  3. ミナミナビーチ|星野リゾート トマム 【公式】Hoshino Resorts TOMAMU ↩︎

  4. アイスヴィレッジ|星野リゾート トマム 【公式】Hoshino Resorts TOMAMU
    アイスヴィレッジは星野リゾートがはじめた企画ではなく、1990年代より存在する(ただし場所と内容は現在とは異なる)。今シーズンは高気温に伴って営業期間が短縮された。 ↩︎

  5. 雲海テラス|星野リゾート トマム 【公式】Hoshino Resorts TOMAMU|グリーンシーズン
    霧氷テラス|星野リゾート トマム【公式】|ウィンターシーズン ↩︎

  6. クラブメッド・北海道 トマム(夏)|日本No.1ホテル受賞|北海道のオールインクルーシブ・リゾート
    なお、上記ホームページ冒頭写真左上に見える「オスカー・スイートホテル」は閉鎖され、クラブメッドとしても使われていない。中央のKITAMI棟はクラブメッド開業にあわせて増築された。なお、2015年に星野リゾート トマムを買収した上海豫園旅游商城とクラブメッドはいずれも、中国の復星集団の傘下企業。 ↩︎

  7. ラベンダーが美しい初夏の富良野からサホロへ|会員制ホテル今昔物語 – resortboy's blog – リゾートホテルとホテル会員制度の研究 ↩︎

文・撮影:zukisansu、企画・制作:resortboy。バックナンバーはこちら

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