年会費って何のため? – 1

エクシブとベイコート倶楽部の運営管理費(いわゆる年会費)が2025年分より値上げになります。既に会員には個別に改定後の金額が記された文書が「特定記録」で発送されています。サンメンバーズについては値上げは見送られたようです。

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オールドエクシブでは25%の大幅値上げ

値上げ幅については個別の契約内容であり、ルームチャージのように一覧表などはないので一概に言えませんが、オールドエクシブにおいて25%程度であることを自分宛ての通知から確認しました。仮に年会費が10万円+税であれば、年間の負担増は27,500円ということになります。これは一般に、「大幅値上げ」と呼んでいい水準かと思います。

しかし、おそらく多くの会員の方々(一般に富裕層と呼ばれる方々)にとって、この金額は「大したことない」水準で、特に話題になることもないのではないかと思います。ただしこの数年、レストラン値上げ、ルームチャージ値上げ、年会費値上げと続けざまに費用負担を会員と利用者に求めることが続いていて、一部の会員の方々には警戒感が強まっているのも事実でしょう。

この年会費の問題は論点が多岐に渡りますので、何回かに分けて議論を進めてまいりたいと思います。まずは、年会費とは何か、という根本的な問いについてです。

年会費は「何に」使われるのか?

今日の記事の写真として、東京ベイコート倶楽部の窓拭きの様子を掲載しています。年会費とはこうした、客室利用と直接関係のない(直接関係するものはルームチャージで負担)施設の維持管理に利用されると、一般に(なんとなく)理解されているのではないでしょうか。

この年会費の使い道について、もう少し解像度を上げてみます。今回発送された文書と、ほぼ同文がホームページ上に掲載されていますので、それを公式見解として見てみましょう。

運営管理費は、主に施設管理・運営要員経費、共用部分の清掃費・水道光熱費、損害保険料、共用備品購入費、施設の保守・点検・補修費用などに充当するために、会員の皆様にご負担いただいているものです。

ベイコート倶楽部・エクシブ 2025年運営管理費改定のお知らせ|インフォメーション|ホテル|リゾートトラストグループ サービスサイト

僕なりに言い換えると、「施設管理・清掃・保守・点検・補修に関わる、人件費、水道光熱費、保険料、資材・備品などに充てている」ということになり、この会社説明に特に疑念はないように見えます。

しかし、この「施設」っていったいどこなのでしょう? エクシブやベイコートは「交換利用」してチェーンホテルを多彩に利用できる点にメリットがありますが、年会費はそうしたチェーン全体に使われるのでしょうか?

年会費は「どの施設に」使われるのか?

そこで、東京ベイコート倶楽部の契約書を入手して、それを見てみたのです。該当部分を引用します。

運営管理費の使い道については、「管理規約」の「第13条<運営管理費>」に明記されています。

<運営管理費>
第13条
本物件の維持管理および運営に必要な下記の費用に充当するため、各所有者は、施設利用契約書に定める運営管理費を負担するものとする。
1. 管理・運営要因経費
2. 管理共有物の清掃費
3. 管理共有物の水道光熱費
4. 本物件の損害保険料
5. 共用備品購入費
6. 本物件の保守、点検、補修費用(ただし、施設利用契約第22条に該当する費用は除く)
7. RCI年会費
8. ワンダーネット年会費(ただし、ワンダーネット会員のみ)
9. その他維持管理および環境維持に要する費用

RCIやワンダーネットなど、なくなってしまったサービス内容を除けば(その議論はまた別にありますけれど)、今回の公式告知文書と言っていることは同じです。

ですが、今回この契約書を読んてみて、僕は大変驚いたんです。この東京ベイコート倶楽部の契約書の場合、年会費は「本物件」つまり、東京ベイコート倶楽部について使うとしか読めないからです。

考えて見えれば当たり前で、何しろ「エクシブとは別の独立した(社交)倶楽部」でしたからね。だから、他のホテルとの相互利用やサービスが広がっているので会費の値上げも仕方ないよね、といった議論は、この契約からは成立しません。

入手したのは「スーパーエクシブ」に変更された後の契約書で、エクシブの利用価格表も含まれているものです。最新のものはまた別なのでしょうが、ベイコート会員の方はぜひ内容を確認して、その結果をコメントしてください。僕が持っているのが現在、無効なものなのであれば訂正したいと思いますが、何度かのエクシブでの契約経験から、再契約とか契約更新などをしたことがありませんから、原契約の内容は有効だと理解してこの原稿を書いています。

年会費の徴収目的は「契約施設の現状維持」

つまり、年会費の定義は、物件の分譲に張り付いたような、非常に不動産的な内容となっているのです。ホテルチェーン全体に対する参加費ではなく、会員が費用負担をしてピカピカの豪華ホテルを作り、その「開業ピーク状態」をなんとか維持するための費用のようです。

年会費は、レストランやルームチャージといった直接的なサービス対価とは別の、極めてディフェンシブな目的で徴収しているものですから、もしも、チェーンの魅力やサービスそのものの向上が年会費の値上げとともにうたわれるのであれば、それは「論点ずらし」として疑ってかからないといけないということが、ここからわかります。

例えば、会員のための利用時以外の接客業務はリゾート会員権で重要な要素ですが、年会費はその用途に使われるものではないと、東京ベイコート倶楽部の契約書からは読めます。

年会費は分譲された物件の維持管理目的であり(ハード的、分譲不動産的)、利用に伴う料金はルームチャージで別に考え都度徴収する(ソフト的、一般ホテル的)のが、日本のリゾート会員権(ガラ権)の大きな特徴なのですが、その「基本の部分」が契約内容とは別のものとして、けっこうあいまいに会社都合で運用されているのではないかという疑問を、改めて持ちました。

連休がすんだら、自分のエクシブの契約書を見てみることにしましょう。

(続きます)

年会費って何のため? – 2

2 comments

  1. ポイントバケーションリロも、今、プチ炎上してます。
    「車椅子だから階段なしで行ける部屋を」とか、「和室ではなく洋室を」といった希望を、今までは先着順で無料で受けていたのですが、そういうリクエストは1,100円の有料となりました。しかも必ずしもかなえられるとは限らず、その場合も返金はしないとのこと。
    その1,100円は、単に運営会社の懐に入ってしまうだけで、リクエストなしの他の会員に還元されるわけではなさそうです。
    錬金術ですなー。

  2. まさひろさん、情報ありがとうございます。

    リロについては、僕の守備範囲外でして、「ガラ権連載」でも対象としていません。預託金や区分所有を通じてホテルの建築に関与していないものを「会員権」と呼んでいいのかについては議論があり(ほぼ僕の中だけで。学者さんとの議論は無理でした)、いわゆる入会金制またはポイント制と呼ばれるものに関しては、パルアクティブのような詐欺事件も過去にありましたし、注意しなければならないと思っています。

    会員制リゾート破たん/200億円集め1万人被害/「パルアクティブ」

    つまり、消費者保護の仕組みがまったくない、ということです。預託金制のものについてはゴルフ会員権の多くの事件を通じて判例が確立していますし、共有制のものについては不動産取引にまつわるさまざまな法律が適用になります。

    今回、区分所有権をベースにした共有制リゾート会員権であるエクシブやベイコート倶楽部に関して、リゾートトラストはその法的枠組みをはみ出す「チャレンジ」を行ってきています。これは歴史的に画期的なことですし(なにしろ、業界トップの会社が、自ら長年守ってきた伝統=年会費の固定を捨てたのですから)、契約内容の変更についての手続きなしに通るはずがありません。

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