リゾート会員権売上はピークアウトせず絶好調継続

リゾートトラストは今日、2022年11月9日、2023年3月期第2四半期の決算を発表しました。会員権販売の契約高は上半期として過去最高を更新し、前年同期を上回るホテル契約高、405億円を記録しました。この好調を受けて同社は、通期の利益予想を従来の88億円から120億円へと大幅に情報修正し、前期からの減益予想を増益予想に変更しました。

今年5月の同社の発表を受け、このサイトでは以下のように、今期の同社業績が軟調に推移する見通しであると報じていました。しかし、本記事で解説するように、現実にはリゾート会員権売上はピークアウトせず、引き続き好調な業績が続いています。

(関連記事)ピークアウトしたリゾート会員権売上|リゾートトラスト – resortboy’s blog – リゾートホテルとホテル会員制度の研究

過去の記事で解説したように、同社の会員権販売高は、日本の株価の動きと強い相関があります。前回は日本の代表的な株価指数であるTOPIXと同社の契約高との関係を明らかにしました。その延長線で、今日はまず、昨年来の経済環境について振り返ってみます。

同社が5月に控えめな業績予測を出した背景には、昨年後半、特に岸田政権発足以降の株価(ここではTOPIXを指すことにします)の下落が背景にあったと推測されます。以下は、昨年8月から今年3月までのTOPIXの株価グラフです。

この間に最大で17%ほども株価が値下がりしていしたことから、この傾向が続くと同社は予測したのではないでしょうか。

実際はどうだったでしょうか。以下は今年の3月から10月のTOPIXの値動きです。一進一退を続けていますが、期間全体で見ればむしろ値上がりしています。

予測が外れた大きな要因は、急速に進んだ円安でしょう。こちらは菅前総理の退任判明後の昨年9月から今年10月までのドル円チャートです。前半からじりじりと円安が続いていましたが、春先から急速な円安トレンドとなり、現在までそれが継続しています。

円安によるプッシュ型のインフレが生じれば、持てるものは富み、そうでないものは貧しくなるでしょう。以下の記事にあるように、日本にとってよい面を強調する報道もよく目にするようになりました。こうしたトレンドに乗った富裕層が、円安で妙味を失った海外旅行の代わりに国内旅行に「投資」するようになった。そう考えるのは道理にかないます。

(参考)「歴史的円安」の陰で“ボロ儲け”…「日本復活」の大チャンスか | 幻冬舎ゴールドオンライン

そして、これから「安いニッポン」をめがけてインバウンド客が観光地に押し寄せるのは目に見えています。こうした経済環境の中で、相対的に魅力を増しているのが、「完全ドメスティック」な「会員制リゾートクラブ」なのかもしれません。

少し脱線しますが、これとは逆の立場で苦しんでいる企業があるかもしれませんね。ハワイのタイムシェアはどうでしょうか? 最大手のヒルトン・グランド・バケーションズ(HGV)の株価を、ドル円チャートと重ねてみたのが以下のグラフです。

こちらのグラフは、YTD(年初来)の値動きを年初を起点として相対的に示したものですが、見事に逆相関となっています(グラフで値上がりしているのがドル円、値下がりしているのがHGVの株価です)。

日本国内の「高級リゾート会員権」の売上が好調なのはわかりましたので、次にホテル稼働について見てみます。こちらがリゾートトラストが発表した4〜9月のブランド別稼働率です。

エクシブはコロナ前を3.4ポイントほど上回る好調さです。ベイコートは横浜の開業で室数が増えたこともあってか、コロナ前の稼働率にはあと一息といった状況です。

エクシブの好調さが目立つわけですが、これがどのように生じたのかを示したデータがこちらです。

いま、最もリゾートトラストのホテルを利用しているのは、「契約をしたけれど開業していないサンクチュアリコートのメンバー」です。「タイムシェアリングなのに交換されるべきホテルが開業する前から利用できるのはなぜか」という話題は、今日はやめておきましょう(これは理論では説明できません)。

サンクチュアリコートのメンバーは、上半期に4.7泊の利用があり、エクシブの利用の方がベイコートよりも6割以上、多くなっています。

また、ベイコート会員はこれまで、ベイコートとエクシブとを同程度利用しているというデータが幾度か発表され、このサイトでも記事にしてきましたが、現在はむしろエクシブ利用が上回るようになりました。コロナ禍前の2019年4~9月期においては、ベイコート会員はベイコートを2.26泊、エクシブを1.91泊利用していましたから、横浜の新規開業があったにも関わらずベイコート利用が減り、エクシブ利用が増えました。

(参考)ベイコート倶楽部の稼働率はなぜ低いのか|ベイコート倶楽部 – resortboy’s blog – リゾートホテルとホテル会員制度の研究

この傾向は今後も続き、ベイコート会員のベイコートの利用は、エクシブに比較して低調に推移すると僕は予想しています。日光を除くサンクチュアリコートでも同様でしょう。

また、エクシブ会員は相変わらずベイコートをほとんど利用していません(対エクシブ比でわずか6〜7%)。

今日のところはこんなところです。まとめます。

・円安で日本全体が貧しくなるトレンドは、むしろリゾートトラストに追い風となったようだ
・開業していないサンクチュアリコートの会員が、エクシブの稼動率を押し上げているようだ
・ベイコートの会員はむしろエクシブの方をよく利用するようになり、今後さらにそうだろう

2 comments

  1. resortboyさん、いつもながら詳しい分析記事、ありがとうございました。
    最後のまとめにある「円安で日本全体が貧しくなるトレンドは、むしろリゾートトラストに追い風となったようだ」は正しいですね。

    私の友人に海外のタイムシェアを所有している人がいますが「年会費の値上げと円安で以前の1.5倍くらいの金額になっている」と嘆いていました。海外旅行する場合、燃油サーチャージ代を含む航空代金の高騰、現地ホテル代金の高騰、入国・帰国の規制、それに、いまだに「よく分からないコロナの影響」等、(貧乏になった日本人にとって)海外旅行のハードルはとても高いです。

    一方で、インバウンド組がまだ本格的にもどってきていない今の日本のホテルは格安で快適です。そこに「全国旅行割引」が適用され、コスパ最大の旅が実現できます。実は先週、妻と2人で山陰・山陽・京都をドライブ旅行してきました。

    日本三景「天橋立」、日本のマチュピチュ「竹田城跡」、鳥取砂丘、備中松山城、倉敷美観地区、そして京都、と巡ってきました。宿泊したホテルはビジネスホテルが多かったですが、どこも快適で何も問題ありませんでした。特に朝食の充実には驚かされました。エクシブの朝食以上では?というホテルもありました。

    コロナが収束し、インバウンド組が大挙して日本に来るようになればホテル代金の高騰は目に見えています。シニア層にとって、コロナで海外に行けなかった3年間の心理的影響は大きいですね。海外のインフレと円安を考えれば海外旅行のハードルは金銭的に高いままで、もう「海外旅行やめようか?」という気分にさえなります。

    一方で国内リゾートクラブの宿泊代金はお安いです。私の愛する「セラヴィリゾート泉郷」のメンバー料金は1泊2食で8000円程度です。エクシブでもルームチャージ代金だけなら格安です。かくしてリゾートトラストに当分追い風が吹くような気がします。近況報告でした。

  2. funasan、コメントありがとうございます。チェーンのビジネスホテルはよく「練られて」いて、快適であることが多いと僕も思います。全国旅行支援は毒饅頭のような気もするんですが、2022年の今は観光業へのブースターとして必要なものなのでしょうね。

    まだインバウンドはぜんぜん戻っていませんね。10月の訪日客数は2019年同月比80%減の49万8600人です。出国した日本人も同様に79%減の34万9600人です(日本政府観光局(JNTO)の訪日外客数推計値による)。これからどうなるのか、人的リソースの不足を考えると、むしろ不安の方が大きいようにも感じます。

    ところで、「あのfunasan」が「海外旅行やめようか?」とご発言されるというのは、ちょっと重いですね。ハワイのタイムシェアは今後どうなるのだろう。リセール業者がむしろ活況になる?? ハワイの日本人市場は巨大なものでしたから、それがどう変わって行くのかも、日本の観光史の一側面でしょうね。

    例えば、Hyatt Regency WaikikiのSHORで朝食を摂ると、39.95ドル+税+チップで、約55ドルです。1ドル140円として7,700円ですから、「ちょっとな〜(汗)」だと思います。

    ところで、先日セラヴィの別荘事業(ReVOS)について取材しました。余裕ができたら書きたいと思います。

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