「次は鬼怒川」と誰もが思っていたと思いますが、まさか名湯の代名詞である鬼怒川の名を捨てて発売するとは思いませんでした。それほどまでに恵まれている今回の物件。「売れすぎないようにした」のではないかと勘ぐるくらいに、開発の設定にはリゾートトラストの自信が垣間見えます。
立地は他の記事で話題にしていた通りで、旧「かご岩温泉旅館」の場所に2026年2月に開業予定です。そして発売は今日、2022年10月20日でした。
地図を見ると、日光というよりは鬼怒川と呼んだほうがふさわしい気がします。なにせ鬼怒川に面した場所で物件をデザインしているのだし。
しかし、「廃墟」によってしばしば悪いイメージで語られるこの大温泉地の名ではなく、世界遺産である「日光の社寺」や、中禅寺湖にある「ザ・リッツ・カールトン日光」などのこの地図で言うと東側のイメージに「寄せる」ように、「日光」の名を冠したのでしょうね(という意向を汲んで、トップには先んじて取材した東照宮の写真をあしらってみました)。
もちろん、鬼怒川温泉も日光市なので何の問題もないのですが、なんとなくエクシブ軽井沢にも通ずるズレ感がある気もします。ホテル自体はややローカルな場所なので、駅からの送迎シャトルバスは設定されるようです(日光駅?鬼怒川温泉駅?)。
さて、このホテルは新会員権シリーズ、サンクチュアリコートの第3弾となるわけですが、これまでの高山や高島(琵琶湖)のように、コンセプチュアルなタグラインは付いていません。ホテルの正式名は「サンクチュアリコート日光 ジャパニーズモダンリゾート」。
なんじゃこれ?という感じではありませんか。「ジャパニーズ」「モダン」「リゾート」なのは当たり前で、情報量ゼロというか、何も言っていないに等しいです。それにデザインも、突飛なものが続いたベイコート倶楽部に比較してかなりベーシック(日光国立公園の中にあるから?)。
しかしむしろ、そこに「別に何も言わなくてもこの物件は売れる」と言わんばかりの、同社の自信が見えるような気が僕にはします。
僕の論文や勉強会などでは、リゾートトラストの成功要因は離宮シリーズに見られる「高級旅館ホテル」路線にあったと、繰り返し様々な角度から説明しています。この高級旅館ホテルというのも、自分で言うのもナンですが、何も言っていない当たり前のネーミングです。それを同社がサンクチュアリコートの文脈に乗せて言い換えたら「ジャパニーズモダンリゾート」になった、ということですよね。
もともと美術館だった高山はともかく、高島(琵琶湖)は魅力のない土地ですから施設で頑張って、えらく充実した設備を備えたホテルとして設計されました。「かつてのオールドエクシブを彷彿とさせるオールインクルーシブな総合リゾートホテル」と、発表時に僕は書いています。
(関連記事)原点回帰に賭けたサンクチュアリコート琵琶湖|リゾートトラスト – resortboy’s blog – リゾートホテルとホテル会員制度の研究
しかし、今回の日光は違います。レストランは和と中華しかなく、なんと洋を省きました。プールはもちろんフィットネス系もありません。「高級旅館ホテル」なのですから、余計なものは省いていいんだよ、と言わんばかりに、運営面をスリムな設計にしてきました。
売りは一点しかありません。温泉です。全ての客室が温泉のビューバスです。これは強烈でしょう。それだけでみんな買いたくなります。要するにこれは「より高価な離宮」なわけです。
ですから、すでに高山や高島(琵琶湖)を買ってしまった人は、地団駄を踏んで悔しがります。
「おれが欲しかったのは会員制の温泉ホテルなんだ!」
リゾートトラストはそこをよく考えて設計し、そしてその気持ちを逆なでしないように名湯の名を捨てたのかもしれません。
同社の本音は、客室の構成バランスに現れています。
このホテルはロイヤルスイートが91室、ラグジュアリースイートが44室、クラブスイートが27室と、極端に最上級グレードの比率が高くなっています。これはなぜか、このサイトに来ている聡明な皆さんはすぐわかりますよね。
リゾートトラストの会員権販売手法の1つに「アップグレード販売」というものがあります。これは僕がそう呼んでいるものですが、公式(投資家向けの説明など)には、「ランクアップ需要に向けた販売」と同社は表現しています。
具体的には、かつてエクシブ有馬離宮の魅力を利用して、関西圏でエクシブオーナーに芦屋ベイコート倶楽部を販売したことが典型です。会員権を下取りして数百万円を上積みさせ、新しい会員権に契約し直してもらうのです。これをやり過ぎると、会員数の伸びが減速してしまいますが、ラグーナベイコート倶楽部の販売時には実際そうなりました。そのため同社は、投資家向けに説明をしなければならなくなり、上記のような言葉を使ったのです。
これはエクシブからベイコートへのアップグレード販売でしたが、今回は、「買ってまだ開業もしていないうちにより魅力的なものが出てしまったサンクチュアリコートのメンバー」に向けた、まさに「ランクアップ」の需要です。同社が薦めるまでもなく、買ってしまった側から「自然に」需要が出てきてしまうでしょう。
顧客の要求なのだし、まだ未開業なのだから、そのニーズには応えないといけないですよね。それを織り込んだ結果、客室の6割近く(面積比で言えば客室の大部分)をロイヤルスイートに設定するという、なかなかすごいことをやってきたわけです。ラグジュアリースイートは27%、クラブスイートは17%しかありません(いずれも客室数での割合)。
以下に、僕が使えるラグジュアリースイートの客室画像を参考までに掲載します(個人的事情ですみません。僕はエクシブのスイート持ちなものでして、ロイヤルスイートは利用できないのです)。
ともあれ、同じ会員権の中でのランクアップ需要があると見込んで、このようないびつなグレード配分になったのは明白です。
かつて、離宮シリーズの魅力を利用してより高額な会員権、ベイコート倶楽部を売りさばいた手法は、同様の構図でさらに進化して、販売中の同じ会員権の中でさらに高額なグレードが誘導されるようになりました。
しかもサンクチュアリコートは3物件ともまだ建築中です! 実体験ではなく、脳内の麻薬物質の分泌だけを頼りに高額なリゾート会員権がばんばん売れていく。恐るべきビジネスモデル、そしてスピード感ではありますが、ベイコート倶楽部が苦しむ稼働率低迷の問題は、サンクチュアリコート日光の発売でさらに深刻化するでしょう。
今はオールドエクシブと違ってグレードごとの共有で、グレードが高くても小さな客室もありますし、販売グレードと違って交換グレードは1段階ずれていますから、日光に関してはまぁまぁ客室は埋まるのかもしれませんが、ベイコート倶楽部や他のサンクチュアリコートの稼働率が…と心配になってしまいます。
(関連記事)エクシブの販売グレードと交換グレードの系譜|エクシブの活用術 – resortboy’s blog – リゾートホテルとホテル会員制度の研究
ところで実はいま、私事(本業の仕事面)でめちゃめちゃ多忙になってしまっていて、今日は雑感を書きなぐっただけの記事ですみません。価格などの諸元データは公式サイトをご覧くださいませ。ちゃんとした分析はまた今度ね。
プールもフィットネスも洋レストランも無い・・・コンセプトを温泉に絞った!
リゾートトラストなかなかやるじゃないかと思いました。
インテリアもきをてらうことをしないで良いです。
目線の高さの違いはあれ、全室鬼怒川ビューでぜいたくな建て方。
琵琶湖から採用されたバルコニーと多分開閉出来そうな部屋風呂の窓。
これは売れそう!
というか、買えないけど行きたい!
resortboyさん、こんにちは。
次は日光(鬼怒川)ですか。
公式HPを拝見し、鳥羽別邸に湯河原を少し融合させた?ような印象を受けました。
レストランが減るのは残念ですが、その分インルームダイニングを充実する等の検討して欲しいですね〜
サンクチュアリーコートは施設ごとにコンセプトが異なるので、見ていて飽きないです。
ともかく、関東の方はワクワクですね!
バブル期以前も、バブル期も、バブル経済崩壊後もしばらくは、リゾートと言えば、プライベートビーチの砂浜、プール、あるいはテニスコート、ゴルフ場、アスレチックジム、冬はスキー場など、「温泉」というワードは付属品で「あればいいよね」程度のものだった印象です。それとも、単に自分が若かっただけ?
いまやリゾートでもそうでなくても、泊まるなら「温泉付きの宿」というのが当たり前になって幾年月。
それにしても、ロイヤルスィートの割合が多いのには驚きですが、これはバブル期に販売された、ゴルフ場併設の「エクシブ浜名湖」がスーパースイートの室数が多いことを思い出させます。
なにしろ、初めて「スーパースイート棟」ができた施設です。
>今回は、「買ってまだ開業もしていないうちにより魅力的なものが出てしまったサンクチ>ュアリコートのメンバー」に向けた、まさに「ランクアップ」の需要です。同社が薦める>までもなく、買ってしまった側から「自然に」需要が出てきてしまうでしょう。
サンクチュアリコート日光に、仮に上記のようなねらいがあるとしても、果たしてそんなにうまくいくものでしょうか。高山、琵琶湖は主に中部、近畿地方在住の人向けに販売されていると思います。
でもその中でも、名古屋という交通の便が良い場所に住む私にとっても、日光鬼怒川という、東京より東にある温泉地はとても遠く感じれられ、リゾートとして気軽に年何回も出かけようという気にはなれません。
今は北関東、東北を旅する計画をしっかり立てて、一度くらいは行ってみたいなあという感覚です。
某エクシブのバーテンダーの方が、飲酒運転で死亡事故を起こされましたね。
事故後、現場を離れたようなので、飲酒ひき逃げ死亡事故となったようです。
14日のエクシブデーに起きた事故のようですので、客に強引に飲まされた
のではないといいのですが、、、。
東武線沿線居住なので鬼怒川方面の施設をずっと待っていました。
全室温泉付とのことで、楽しみです。
日光か下今市への送迎があると、なお嬉しいです。
朝イチの特急で日光へ行って一日遊んだあと宿へ行って温泉で癒される…とか、仕事終わったあと、特急に飛び乗って宿で美味しいご飯を食べたあと部屋の温泉でくつろぐ…なんてことができるなと想像してしまいます。
「サンクチュアリコート日光鬼怒川」を名乗らなかったのではなく名乗れなかったのでしょう。おそらく事前に日光市から指導があったのだと思います。「鬼怒川温泉」は地域団体商標として登録されているので勝手に使えません。鬼怒川に面しているから地名としての「鬼怒川」を使ってもいいじゃないかという主張もあり得ますが、最近の事例として有馬街道に面しているから「有馬源泉」だと名乗っていた有馬町外の旅館が訴えられて施設名を変更した事例がありました。開業後に施設名を変更せざるを得ないリスクを避けたのだと思います。
物件切り替えでサンク日光に乗り換える方はたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。サンク高島では販売開始後早々に切り替え分が完売したそうですから同じことが日光でも起こりそうですね。サンク高山は東京横浜両支店でも相当数の売り上げがありました。サンク会員でしたら開業前の切り替えとなりますので登記費用も発生していませんしリゾートトラストの決まりである下取り価格年間7.4パーセントの減額も適用されないのではないでしょうか。相当数が下取りで戻ってくるので関東の営業はもう一回サンク高山やベイコート横浜、場合によっては湯河原離宮をまた売らなくてはいけないでしょう。
皆さん、こんばんは。間の悪いコメント返しで失礼します。いただいたコメントに関しての雑感を書き留めておきますね。
会員制のホテルを利用することを「旅行」と呼んでいいのかについては議論があると思いますが、ひとまずここでは旅行としておきます。
コロナ前の2019年の調査ですが、「オレンジページくらし予報」の調査によれば、国内旅行の目的上位は「観光」が75.6%、「グルメ」が55.5%、「温泉」が54.3%でした(有効回答数は924人)。また、宿泊施設を選ぶ決め手は「料金」「温泉」「のんびり」が上位3つの回答でした。
国内旅行の目的1位は「観光」75.6% 宿泊施設の「ランキング、口コミを参考にする」93.3% 宿泊施設を選ぶ決め手は「料金」「温泉」「のんびり」
こうした一般的な現代の消費者の指向性からしても、日光はかなり「固い」案件なのではないでしょうか。
なお、先週発表になった決算説明資料においては、日光の支社別販売比率(10月の10日間だけですが)は、東京と横浜で93%、法人比率は82%でした。
琵琶湖(高島)はもう半分も売ってしまいましたが、東京と横浜で45%も売っています。これらの比率の変化も追ってみたいと思います。
> 「鬼怒川温泉」は地域団体商標として登録
これはまったく知りませんでした。権利者は「鬼怒川・川治温泉旅館協同組合」です。
商標登録第5315242号 鬼怒川温泉(きぬがわおんせん) | 経済産業省 特許庁
2007年7月27日に第43類(飲食物の提供、宿泊施設の提供)、第44類(医療、動物の治療、人・動物に関する衛生、美容、農業、園芸、林業に係る役務)で出願、2010年4月9日に商標登録されているので、割と最近の話なんですね。勉強になりました。
「東急ハーヴェストクラブVIALA鬼怒川渓翠」みたいな名前にするのはOKなんでしょうね。
ともあれ、次回の決算発表資料で、どれくらいの契約変更(高山や高島から日光)があったのかをレビューしてみたいと思っています。
11月20日頃より2月いっぱい白鳥が150羽から200羽
たぶんどの部屋より朝日の中でえさ場に飛び立つ姿と夕方帰ってくる姿が見えるはずです。