宿泊システム改変の先にあるもの

まずは3枚の写真を見ていただきましょう。大浴場のパウダールームの写真です。まず冒頭は、エクシブ京都八瀬離宮。2006年開業です。続いてエクシブ箱根離宮、2010年開業。最後は今年開業のエクシブ湯河原離宮です。

はじめに断っておくと、僕は湯河原をdisりたいわけではありません。最近になって、エクシブの宿泊システムそのものが変更になったような、大きな制度変更が相次ぎました。具体的には、プラン料金が普通の「旅館ホテル」のような体系に変更されたことと、権利日を使用しないで宿泊できる「サンクスフェスティバル」が拡大したことなどです。

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これらの先にあるものは何なのかな、ということを少し考えてみたいわけです。そのヒントになる取材記事が日本経済新聞の電子版に掲載されました(2017/7/28付け)。

リゾートトラスト、余暇の開拓者、健康耕す(ナゴヤが生んだ名企業):日本経済新聞

この記事でリゾートトラスト社の伊藤勝康社長が次のように語っています。

 ――日本国内と海外で、どのような成長戦略を考えていますか。
 「リゾート事業は2つの戦略を考えている。1つは『2泊3日』ベースから『1泊2日』に変えた商品を開発し、従来より多くの人数で、高級志向の広い部屋を共同所有する。もう一つは、ハワイや東南アジアなどで1週間程度の長期滞在型の商品を開発する」

自分はこれを読んで、なるほど、いろいろつながったな、と思いました。言葉を変えれば、「XIV」の名の由来である、1室を14分割または28分割してホテルの建築費用を会員に負担してもらうという現在のスタイルを、さらに半分にして売り出すと話しているわけです。

なぜ商品設計を大幅に変えるようなことをしなければならないのか、その理由は2つあると思います。

1つは冒頭の写真から理由が分かります。この10年、特に2011年の大震災後の建築費の高騰で、リゾートトラストが求めてきた「ハイセンス、ハイクオリティー」なホテルが作りづらくなってきた、ということです。

湯河原離宮もお金をかけていないわけではありません。有価証券報告書を参照して開業直後のリゾートトラスト持分の「建物及び構築物」の簿価を調べてみると、箱根離宮の2010年3月末の簿価は28億4800万円、湯河原離宮の2017年3月末の簿価は38億1500万円でした。

湯河原離宮では共用部分にあまりお金をかけられなかったような印象を受けますが、実際にはそうではありません。それ以上に建築費が高騰してしまったのです。参考として、東京地区の建築施工単価を示したグラフを掲載します(出典:季刊「建築コスト研究」 第89号)。

もう1つの理由は、数が多くなった既存施設です。自分も含めて、多くの会員は新しい施設を中心に特定の人気施設を集中的に利用する傾向があります。古い施設は稼働率の低下を避けられません。

その結果、固定費、特に人件費を削減するために、例えばエクシブ淡路島ではラウンジを無人ドリンクバー化し、客単価を効率よく上げるためにレストランは8,000円のブッフェと11,000円の和食に絞るといった極端な施策まで行われるようになりました。

誤解を避けずに率直に言えば、多くのエクシブでは「会員なら誰でもいいから利用して欲しい」という状況になっているのを感じます。このように考えてみると、サンクスフェスティバルが一気に普及して、権利日なしの利用が既成事実化したことにも、ある程度、納得がいくのではないでしょうか。

さて、インタビューでの社長の発言に戻ります。今後の会員権商品は、より持分を細分化して1室あたりの収入を向上させることで、かつてのような利用者をハッとさせるような豪華なホテルづくりを復活させることでしょう。それが創業者の理念であり、同社をここまで推進してきた原動力だからです。

またエクシブでは一般客を受け入れていませんから、既存施設の稼働率を上げるには、必要以上に施設を増やさないで会員を増やすか、既存会員の利用率を上げるしかありません。口数を倍(倍まで増やすのかはわかりませんが)に増やした会員権の発売は、この面でも妥当性がありそうです。

おっと、長くなってしまいました。以上、事実の検証、ファクトの整理をしたところで、今日はこの辺で。その先にいったい何があるのかは、皆さんからのコメントとともに考えてみたいと思います。

というわけで、続きます(たぶん)。

9 comments

  1. すばらしい投稿です!

    トラスト社のターゲットの変更?は理解出来ます。今の会員権の一次取得者と思われる中小企業の経営者や大企業の中堅以上のサラリーマンは、所得は上がったけど超多忙。バージョンZでも、持て余す始末。
    だからこれからの新しい施設は、安近短ならぬ高近短デスね!
    それから、今後のベイコートはプールとフィットネスは標準になりそう。

  2. resortboyさん、こんばんは。

    大変興味深い記事をご紹介頂き、ありがとうございます。日経電子版は読んでいますが、うっかり見過ごしていたようです。リゾートトラストの現況や今後を見通すには絶好の資料ですね、そして resortboyさんの検証、私も納得です。この「つづき」を楽しみにしております。

    ところで日経の記事には、タイムシェアリング方式について「希望日を分け合いやすいように14人に制限。週末の利用が多いとみて2泊3日を1単位とし、あらかじめ年間で13回分の日程を割り振る」とあります。つまり14人のシェアリングは1単位2泊3日をベースにしているということですよね。それが今後「2泊3日ベースを1泊2日に変えた商品を開発」するということは、いわばバージョンZをメインにしていく構想のようにも読めるのですが、いかがでしょうか?

  3. 皆様こんばんは。
    豪華志向、高級志向で、ベイコートような施設に注力しそうですが、ベイコートは使いにくいです。
    まず、室料が高く(今回の新料金でも値上げ幅が大きい。)、エクシブと違って、そこにサービス料を(10%)が必要です。
    また、これもエクシブと違って、スパ利用料が、メンバーで1080円必要で、メンバー登録者以外はたとえ宿泊同伴者でも、5400円もかかります。これでは同伴者はおろかファミリーも誘えません。
    レストランでは、言わずもがなで料金が高く、消費税が加わり、さらにそこにサービス料(10%)。
    無駄に高すぎて、エクシブに慣れている人にとっては使いにくいです。

  4. resortboy様

    いつも興味深い記事をありがとうございます。
    今苦戦している(?)湯河原で考えてみると、完売のためには約4000名(2700~5500)の新規会員を募集しなくてはならず、ここが苦戦の原因とも思えます。
    そこにきて、バージョンZの半分(仮にですけど)の会員権の販売は、買い求めやすい(とは言え、庶民には高い)半面、その販売数も増えることになります(7000名くらい?)。
    売れ行きはロケーションや、そのほかの問題もあるでしょうけど、ここも大きな問題だと思うのです。
    上記を行おうとすると、ターゲット変更をすることになり、今の営業スタイルでどこまでいけるかも問題ではないでしょうか?

    さて、上記にも関連してきますが、私のところにも、営業がしつこく湯河原の購入を勧めてきます。
    その際には、当方所有の会員権の下取りを提案してきます。(私の場合、流通価格の約3倍の提示でした)
    この提案に乗った場合、下取りされた会員権はどうなるのでしょう?おそらく再販するとすれば大赤字なので、そのままRT所有になるのでしょう。(結構な数がそうなっているのではないかと思います。特にオールドエクシブ)
    こういったことも、既存施設の稼働率低下につながっているのではないでしょうか?

    この推測が当たっているなら、新規施設で下取りをバンバン入れて、ある程度の数が集まったら、その施設のリニューアルを行って、会員権の再販売を行う。なんていう手もありそうです。
    そうならないかな?(最後は願望)

    乱文失礼しました。

  5. 湯河原はまだ完売してないんですね。評判が悪いと益々完売は難しいですね。
    下取りして200万位出すと買えますか? 私にはそんな感じの勧誘が前に有りましたが 5年後には200万で中古が出て 持ってる権利は中古で売れる事を考えると お得な提案では無いと思いました。
    試しに泊まったらがっかりの湯河原でした。
    首都圏在住者は湯河原に期待が大きかったですから。リゾーピアのリニューアルが出来ない分 湯河原に期待しました。
    熱海の花火だって隣ですから電車で見に行っても良いな なんて思ってました。
    伊豆山の計画も楽しみにしています。湯河原の失敗は繰り返さないと思います。プール付きで家族向きになる事を期待してます。リゾーピアは海が近くて夏や花火が堪能出来ますが伊豆山は海遊びは遠いです。花火は伊豆山の花火と熱海の花火が見えると思います。熱海がドンドン良く成ってますよね。なんだかんだ言ってもエクシブファンです。
     

  6. >なんだかんだ言ってもエクシブファンです。
     この一言に尽きますね。だから、ポンパレファンがあーするよりこーしたほうが安いだの、自分ならこうするなんの言うと無性に胸糞悪くなるんですよね。

  7. みなさんこんにちは。コメントありがとうございます。benさんにいただいたご指摘について、ちょっと考えてみたいと思います。

    > ところで日経の記事には、タイムシェアリング方式について「希望日を分け合いやすいように14人に制限。週末の利用が多いとみて2泊3日を1単位とし、あらかじめ年間で13回分の日程を割り振る」とあります。つまり14人のシェアリングは1単位2泊3日をベースにしているということですよね。それが今後「2泊3日ベースを1泊2日に変えた商品を開発」するということは、いわばバージョンZをメインにしていく構想のようにも読めるのですが、いかがでしょうか?

    僕の意見も同じなのですが、バージョンZのさらに先があるように思うのです。

    日経の記事には以下のようにあります。

    会員権の価格は退職金で支払える500万円台から、富裕層向けの3000万円台まで幅広い。「絶妙な価格設定も受けた」と社長の伊藤勝康(74)はみる。

    リゾートトラスト社はこの「価格レンジ」を、販売ニーズからして変化させたいと思っていないように思うのです。エクシブ湯河原離宮で見ると、一番安いCBのバージョンZが約612万、売れ筋のSEノーマルが約2,788万円です。Sだと3,798万円になってしまい、高すぎるせいか、SEが先に完売しました。

    実はこの価格水準はすごく値上がりしていて、10年前、エクシブ京都八瀬離宮では、BのバージョンZは約406万円から(当時はルームシェアだったのでお部屋ごとに値段が違いました)、Sのノーマルが約3,038万円からでした。

    このようなことから考えてみると、毎月1回宿泊の年間12泊商品で最高レベルを3,000万円、その半分の6泊(2カ月に1回宿泊)を500万という設計がなんとなく見えてきます。販売中のもので一番新しいラグーナベイコートの12泊タイプ、ロイヤルスイートが約1,926万で、ベイスイートが約857万円です。ですから、12泊で3,000万で贅を尽くす、ローエンドは6泊で500万を切って値ごろ感を、というのが同社の狙いではないかと、日経の取材記事から思ったんですね。

    以上は記事として続きで書こうかなとも思いましたが、単なる僕の推測に過ぎないので、コメントとして書いてみました。

  8. 年間六回の為に大金払いますかね〜〜。
    サンクスプランで補うんですかね。
    4月から暇人になったのでエクシブだけでは間に合わないので 逗子マリーナが多くなってます。
    8月は15泊の予約しました。湘南住人みたいに暮らしてます。部屋はハーベスト並みで、朝昼晩部屋で食べられます。目の前に高級レストランのAOが有り、カジュアルレストランのシーサイドカフェ有り、ロンハーマンカフェ有り、魚食べさせる店がいくつか有ります。出前も取れるし。逗子マリーナファンでも有ります。

  9. > サンクスプランで補うんですかね。

    ええ、そういうことなんじゃないかと思います。もともと会員権の本質である占有日利用のコンプライアンス重視のために従来の平日権利不要ルールを一度撤回したのに、手のひらを返したように全社的に「サンクスフェスティバル」をエクシブ全体で推している理由は、この記事とコメントで書いているような流れの中で理解することができるのではないでしょうか。

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