エクシブ蓼科やエクシブ山中湖へのアクセスに利用される中央道。悩ましいのは、中央道で起こる渋滞こそが関東周辺の高速道路で起きるもっとも苦痛な渋滞であることだ。中央道上り線の小仏トンネルを先頭にした渋滞である。今日はどうしてそんなひどい渋滞が起きるのか、その謎解きをしてみたい。
小仏トンネルを先頭にした渋滞が苦痛なのは、ひどいとスピードが時速10キロを切るような、極めて遅いものだからだ。なぜそんなに遅くなるかというと、実はトンネルとは別の理由がある。まずは位置を確認しよう。
小仏トンネルは八王子ジャンクションと相模湖東出口(相模湖東はクォーターインターチェンジで、下り線出口しかない)との間にある。ここを先頭に渋滞が起きるのは、小仏トンネルはそれ自体がゆるやかな上り坂(勾配はおよそ4.5%)で、トンネルの八王子寄りが上り坂のピークになっているからだ。典型的な「サグ渋滞」が起きる個所である。
しかし、サグ渋滞だけでは時速10キロなどというひどい速度低下にはなりづらい。小仏トンネルを先頭にした渋滞は、最長で大月インターの近くまで25~30キロほどにも伸びるが、もっともスローダウンを引き起こしているのは上野原インターでの車線減である。
中央道はもともと全線片側2車線だったが、2003年に上野原 – 大月間で拡幅工事が行われ、上り線は3車線となった。これによって、大月ジャンクションを先頭にした河口湖線との合流渋滞は解消されたのだが、かえって小仏トンネルを先頭にした上り線の渋滞が伸びてしまうことになった。
上の写真は上野原インターへの出口部分だが、3車線が2車線になっていくのがよくわかるだろう。出口を過ぎるとほどなく車線は消滅。
混雑時にはこの合流で車速は大きく減速することになるのだが、さらにそのすぐ後に上野原インターから入ってきたクルマとの合流が発生して、流れのよどみに拍車をかけることになる。
以前、真鶴道路についても同じような記事を書いたことがあるが、要するに苦痛な渋滞の元凶は車線減少なのである。このため、上野原から西側の渋滞はクルマの停止を伴うものになりやすいが、上野原を過ぎたあとは車線減はなくずっと基本的には2車線だから、時速20キロぐらいは出て、気分的には相当ラクになることを覚えておきたい。
ところで、今月の28日(木)から1年余りの予定で、小仏トンネルの手前にある登坂車線が走行車線になるという、渋滞解消の実験が行われることになった。
相模湖東出口の先からトンネルの手前までの約1.8キロに、約10年前からの工事で登坂車線が設けられているのだが、これが走行車線になるというものだ。登坂車線ではなくて走行車線として部分的に3車線にするという話である。
上野原で一度2車線になったものが、相模湖東と小仏トンネルとの間だけ3車線になるわけだが、これでは焼け石に水で、小渋滞には効くかもしれないが、「渋滞削減実験」というほどに目立った効果は得られないのではないかと推測している。
こんにちわ。
なるほど! そういう事だったのですね。
いつもながら記事の建付もわかりやすく理解しやすいです。
中央道方面にはほとんど出かけない(状況がわからないので怖い?!)ですが、とても参考になりました^^
ありがとうございました。
渋滞の原因にはいろいろあって、リンク先の西成総研の話
によれば、小仏トンネルの場合、上り区間の速度の低下が次々と伝播してゆくことが主な原因らしいです。
このためには、車間距離を十分あけることが効果的とのこと
ですが各ドライバーがそれを十分理解しているわけでは
ないですよね。
数理的な解析によって、渋滞しやすい場所を集中して
道路を拡充してゆくことができれば渋滞のみならず、
CO2の削減にも寄与することができるかもしれませんよ。
みなさん、こんばんは
またまた東名高速の話に持っていくと
同じような理由で渋滞するのが大和トンネル付近
こちらは圏央道より東京寄りですから、圏央道が開通するとどうなるのか・・・
みなさんこんばんは。「渋滞学」は深いですねぇ。教えていただいたサイトをチョこっと見てみましたが、自分が工夫してやっていることが学術的に(?)裏付けられたようなところもあって、ちょっと自信を持ちました。今度はゆっくり単行本も読んでみたいです。
よくわかる渋滞学 (図解雑学)
対する東名の大和トンネルについても、現地取材済みです。また近いうちに取り上げますので、お付き合いくださいませ。
こんばんは
本日(2011/8/13)、中央道上りを走行したところ、渋滞と共に車線は戻っていました。
「戻した」ということは実験は失敗のはず。
実験結果は公開すべき。
これから毎日寝る前の10分間ぐらい、実験結果をネット上で探そうと思います。
もしも公開場所をご存知でしたら教えてください。
こんにちは。2011年3月いっぱいで実験は終了しています。やはり効果なし、ってなことだったんですかね?
実験が失敗ではなく、3車線化したことが失敗です。3車線で走ることのメリットより、3車線から2車線になる時のスピード減少から、渋滞を助長することになるからです(少し混雑した時、100km/sのスピードで分流は出来ますが、このスピードでの合流は危険すぎて出来ないということです。
素晴らしい分析ですね〜 要するに部分的な問題を部分的に解決しようとしてもダメということなのでしょうか。人間の体も同じと思っています。血管が部分的に通りが悪くなっているからといって、その部分だけ広げてもダメということなのでしょうか?