東急式錬金術の系譜 – 2(木造戸建会員権の販売)

東急式リゾート会員権による錬金術の研究、トピック別の2回目は、同社に特有の木造戸建をベースにしたリゾート会員権販売について、その系譜を振り返ります。東急ハーヴェストクラブ会員になったことがない研究家の取材経験からまとめたものなので、きっと読者の皆さんの方が多くのご経験をお持ちだと思います。ぜひ追加の情報をお寄せください。

と言うのも、東急不動産は縁故販売で会員権枠の多くのを売ってしまうため(その独特な販売戦略については稿を改めます)、公開された価格資料などが、IRを通じた情報公開の透明性が極めて高いリゾートトラストと比較して乏しいのです。

東急の会員権におけるコテージ利用の源流

東急ハーヴェストクラブに木造戸建(以下では一般名称として「コテージ」という名前で呼ぶことにします)が最初に登場したのは、おそらく、2006年開業の東急ハーヴェストクラブ那須ではないかと思います。

ただしそれ以前から、東急ハーヴェストクラブ蓼科リゾート(2002年に一般ホテル内に会員権を設定)の流れで、同クラブが設定された蓼科東急ホテルのコテージ棟がハーヴェストクラブ枠で利用できた事例があり、また現在は、その利用が公式にハーヴェストクラブでペット対応客室として運用されていますので、そちらが先、という見方もできます。

ともあれ、那須にしても蓼科にしても、分譲対象(会員権の対象物件)としてこれらコテージを販売したことは2018年までなく、あくまで試行錯誤的なものであったと思われます。

東急ハーヴェストクラブ那須

話を那須に戻すと、東急不動産は2006年に東急ハーヴェストクラブ那須を開業した際、同じ敷地の中にまるで集落のように12棟のコテージを建設します(冒頭の写真)。そのうち4室はハーヴェストクラブの客室として運用され(会員権分譲は行われなかった)、1室が東急電鉄の「ビッグウィーク愛犬家族」として、7室が一般の「ビッグウィーク」として会員制ホテルとして運用されました(これは開業当時の状況で、最新の情報は知りません)。

ビッグウィークは東急電鉄の運営なのであくまで別施設でしたが、敷地内にあるハーヴェストクラブの充実した施設が利用できました。セラヴィリゾート泉郷(八ヶ岳や女神湖)のような純粋な別荘とは異なり、温泉に入るのにセンターハウスまでクルマで移動、などというまどろっこしいこともなく、ホテルと別荘のいいところどりの素晴らしいリゾート会員権が誕生したと、当時の僕は感動したものでした。

ただしそれは、あくまで母艦となるホテルの施設充実があってのこと。この那須のコテージ群は単なるホンカジャパンのログハウスであり、単体では価値をそれほど訴求できるものではなかったように思います。

東急ハーヴェストクラブ那須Retreat

その11年後(2017年)、その東急ハーヴェストクラブ那須の隣地に、「東急ハーヴェストクラブ那須Retreat」が開発分譲されます。木造平家が10棟、木造2階建が2棟で、客室面積は81平米と108平米でした。この12室を共有制で144口分譲し、第1次会員募集価格は715.8万円(税込)でした。

これが現代における木造戸建会員権のスタートであるという見方もできるでしょう(もちろんシェア別荘のようなものは他の地域にありましたが、それはリゾート会員権とはまた違うように思われます)。木造であるため、会員権の設定期間は共有制ながら35年の有期に定められました(事業用定期借地権)。

以下に、那須Retreatの当初価格を記載しておきます。単純計算した1室あたりの販売価格は、およそ8600万円程度でした。当時はこれでも高いなぁと感じたものでした。

東急ハーヴェストクラブ那須Retreat7,158,000円
入会金1,296,000円
土地権利金850,000円
建物等代金4,212,000円
会員資格保証金500,000円
営繕充当金300,000円
会員権の種類共有制
分譲後の敷地の権利形態貸借権準共有(事業用定期借地権/開業日より35年間)
総募集口数144口(1室換算12口相当)

東急ハーヴェストクラブ軽井沢

那須Retreat開業の翌年、軽井沢の塩沢湖の脇に、傑作、東急ハーヴェストクラブ軽井沢が開業します(2018年)。この時も、敷地の端に3棟だけコテージが建設されました。

これもオリジナルの那須同様に、本体ホテルに対するオプションというべきもので、会員権としての分譲対象ではないと思いますし(塩沢は50年の一般定期借地権)、また公式サイトにも記載がなく、どのような運用になっているかが外からはわかりません。

プリンスホテルとの提携

この塩沢の開発中、東急不動産はプリンスホテルと提携し、プリンスに東急ハーヴェストクラブのノウハウを注入してリゾート会員権販売を行います(販売はプリンスホテルと東急不動産の双方で担当)。

こうして生まれたのがホテルタイプの「プリンスバケーションクラブ軽井沢浅間」と、コテージタイプの「プリンスバケーションクラブ ヴィラ軽井沢浅間」でした(2019年)。このとき、一部のリゾート会員権マニアは腰を抜かして驚いたのです。

それは後者のコテージタイプがあまりにも高額であったからです。開業当時、2019年の第4期販売の価格が以下です。2000年ごろ、僕はKASAの会でリゾート会員権の現在の売れ筋は1300万円であると解説していましたが、まさにその価格帯です。

プリンスバケーションクラブ ヴィラ軽井沢浅間13,334,000円
会員権利金5,292,000円
土地権利金168,000円
建物等代金7,074,000円
会員資格保証金500,000円
営繕充当金300,000円

この会員権では、81~82平米の戸建てを15棟建設し、180口を分譲します(1室12口)。つまり約80平米の木造建築物をおよそ1.6億で販売したのでした。これは旧軽井沢の話ではなく、一般的な軽井沢から相当に離れた、碓氷軽井沢インターチェンジ近くにできた木造平家群です。

これに呼応するように、東急不動産は自ら手掛ける中古ハーヴェスト会員権販売の価格も調整し、那須Retreatは現在1,320 万円(税込)で販売されることになります。

そして1室2.6億へと躍進

この流れをさらに推し進めたのが「東急ハーヴェストクラブVIALA軽井沢Retreat garden」です。新築時の最終販売価格は2,144万円で、木造戸建て14棟をやはり1棟12口で分譲。1棟あたりの平均単価は約2.6億円です。

東急不動産の価格コントロールシステムについては、大枠の取材を終えました。もう少しデータを集めて12月のオフ会前に別稿を発表するかもしれません(僕の余裕があれば…)。

オフ会では、このような短期的な会員権価格高騰がどのようにして生じたのか、皆さんとのディスカッションで明らかにしていきたいと思います。

4 comments

  1. 東急ハーベストクラブの仲介価格の推移はe会員権さんが記録してくれています。
    http://www.e-hvc.com/list.html
    これを見ると塩沢開業前後の2018年あたりに価格グラフの変曲点がありそうです。それまで価格が高騰していたのは熱海伊豆山VIALAだけでしたが旧軽HVCが1000万円を超えたあたりからそれまで価格が低迷していた旧施設も含めて全施設が値上がりに転じています。エクシブの場合はコロナ禍をきっかけに中古価格の上昇が始まりましたが、東急会員権の価格上昇はコロナ以前から始まっており東急の価格形成のポリシーが変更された可能性があります。

  2. ノラさん、コメントをありがとうございました。

    ご指摘の通り、塩沢開業(2018年7月)と時を同じくして2018年4月、プリンスホテルと提携する際に、リゾート会員権事業とは何なのかを、彼らなりに改めて考えたのではないでしょうかね。教える立場になってはじめて自らを見つめた結果、錬金術にまい進するようになったと、外部の僕には見えるのです。

    株式会社プリンスホテルから「プリンス バケーション クラブ」会員権販売の一部を受託|ニュースリリース 2018:東急不動産

  3. resortboyさんに指摘されるまで忘れてました。ざりあらためノラですのでよろしくお願いいたします。健忘が始まっているようでお恥ずかしい次第です。ハンドルネームがくるくる変わるのはいけませんので以後気をつけます。
    そういえばプリンスバケーションクラブは放置が続いていて会員はちょっとお気の毒です。スタート時点では投資額2000億円で年間1施設を開業、全部で20施設をつくる計画と報道されていました。2008年に閉館した日光プリンスホテル跡地にもホテル建設が決まっていたのですが全て白紙になっています。この事業を推進した荒原さんは西武プリンスホテルズワールドワイドを経て西武リアルティソリューションズに移られ役員をされています。新たな事業展開が待たれます。

  4. ノラさん、コメントありがとうございます。

    プリンスバケーションクラブに関しては、こちらの記事で、zukisansuさんはじめ皆さんにコメント追加いただいておりますが、おっしゃるとおりに話が立ち消えみたいになっていて残念ですね。

    プリンスホテルが会員制リゾートに参入へ|番外編 – resortboy's blog – リゾートホテルとホテル会員制度の研究

    やはりコロナ禍を経た2021年の経営計画の大幅変更で、リゾート会員権事業は追いやられてしまったんでしょうか。KASAの会でもこの西武の話題を取り上げたことがありました。

    KASAの会 Online #1、ホテル投資に関する資料|KASA Community – resortboy's blog – リゾートホテルとホテル会員制度の研究

    というわけで、既にして連載「今昔物語」のネタみたいになっています。この「ウルトラ・ガラ権」が東急の軽井沢イケイケムードの源流となっているのなら、このサイトできちんと記録しておきたいと思います。

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