ランプライトブックスホテル名古屋

前回紹介した「ブックホテル」というコンセプトで出店を進めているのがソラーレホテルズアンドリゾーツです。今日はその実例として、同社が名古屋の伏見駅近くに開業している「ランプライトブックスホテル名古屋」を紹介します。

このホテルは、2018年の2月に開業した「ランプライトブックスホテル」ブランドの第一弾出店となるホテルです。ことし(2021年)6月には札幌に、また2021年末には福岡と、コロナ禍後に多店舗展開が進んでいます。おそらく、第1弾出店であった名古屋が成功したということの現れであると思いますが、その特徴とはどんなものなのかを取材しました。

Photo by resortboy

ホテルは名古屋市営地下鉄の伏見駅から歩いて3分ほどの便利な場所にあります。ホテルの向かいには「下園公園」が広がっていて、都会の中でもオアシス感のある立地です。

Photo by resortboy

こちらは近くのヒルトン名古屋から撮影した空撮画像です(右隅にちょっとだけ名古屋観光ホテルが見えます)。中央部分の黒いビルにあるランプライトブックスホテルのロゴが分かるでしょうか。このように細長いホテルなので、公園に面した客室の居心地が良さそうです。

シングルルームが主体で、客室は13平米から18平米。全70室のコンパクトなビジネスホテルです。参考までに各フロアの図面を掲載します。バルコニーがあり公園に面しているのはこの図面の左側の客室群になります。

このホテルでなんといっても特徴的なのは、ソラーレが直営するフロントと一体となったブックカフェの部分です。こちらの写真を見ると分かりますが、ホテルに入ってすぐ目に広がるのが、カフェのカウンターと一体となったホテルのフロントです。

Photo by resortboy

つまりこのホテルでは、カフェとフロントのスタッフが共通となっていて、ここにこのホテルの一番の特徴があります。このカフェは朝食スペースであり、一日中営業するラウンジであり(現在はコロナ禍の影響で時短営業中)、必要に応じて軽食やコーヒーなどを提供する場所でもあるという、ホテルの顔とも言える代表的なスペースになっています。

Photo by resortboy

ホテルの特色を飲食に持ってきて、そこにブックカフェという味付けをして、ホテル一階部分の一番いいスペースを与えてホテルの特徴とするというのは、とても新しい考え方であると思います。

都会のビジネスホテルによくある合理化のパターンとしては、ホテル内に路面店として飲食業者を誘致して、そこを朝食会場や付帯レストランとするケースです。都会では、ファミリーレストラン的なテナントを入れるケースが多いように思います。

しかしそれだとホテル側にスペースの主導権がありません。ホテル側がリスクを取って飲食店を直営で運営して、ホテル全体の顔とするというのは、なかなか珍しいのではないでしょうか。そこを運営の合理化でうまくまとめたところにこのホテルのブレイクスルーがあったように思います。

同社の発表資料を目を通してみると、このホテルは女性をターゲットに作ったと言います。3年前のプレスリリースには「感度の高い女性の旅行者・ビジネスパーソンを対象」とありましたが、実際にカフェだけですがこのホテルを利用してみると、僕以外のお客さんは全員単身の女性で、まさしく開発計画で表現した通りの結果となっているように見えました。

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最近の僕のブログの名古屋シリーズで紹介しているのと同じ条件でゴールデンウィークの明けの平日の客室参考価格を調べてみたところ、以下のように8000円台から1万円程度で販売されています。他のビジネスホテルよりもかなり高い単価が保たれていたようでした。

(画像出典:トリップアドバイザー。2021年4月21日調べ)

気になった点についても触れておきます。上述したように、ホテルのフロントとブックカフェは一体となった効率的なオペレーションが行われています。そのため、フード類に関してはオンデマンドで作るようにはなっていません。僕が訪れた際には、ショーケースの在庫分しか注文することができませんでしたので、食事のために訪れても目的とするものが食べられないケースがあります。ドリンクについては問題ないでしょう。

Photo by resortboy

また本好きの方をターゲットにしたカフェですが、網羅的なジャンルの本があるわけでありません。このホテルの場合は旅とミステリーを主なテーマにしていて、その数は約3000冊であるということです。

Photo by resortboy

逆に言うとそれ以外のジャンルの本は手薄ということになりますから、その点については承知しておく必要があります。気に入った本は買わなくても客室に持っていって読むことができ、客室は読書に向いたデザインや照明となっているということです。今回は宿泊はかないませんでしたが、機会があれば利用してみたいホテルです。

(参考)PICK UP TITLES | おすすめの1冊 | ランプライトブックスがおすすめする1冊をご紹介します

何しろこのようなコンセプトのホテルですから、騒がしいお客さんもいないでしょうし、仕事や学習、自己啓発などの内面的な活動の場としてホテルを選ぶならば、これほどのぴったりしたコンセプトのものはないかもしれません。

逆に、大浴場はなく、客室もシャワーだけでバスタブはありませんから、スパ的なリラックス要素(各種アメニティーなど)は期待できません。ホテル経営として非常にうまくまとめられていますが、ホテルの開発コンセプトが明快であるだけにホテラーが重視しがちなお得感には欠ける傾向があるでしょう。

前回の記事でも書きましたが、出張などの宿泊特化型ホテル(ビジネスホテル)のメイン需要が消滅した今のホテル業界では、ホテル自体がディスティネーションになり得るような、独特のコンセプトを持ったホテルが望まれる状況にあると思います。コロナ禍を期に、事業者には本記事で解説したようなさまざまな取組みが行われていくのでしょう。僕は利用者としてそうした変化を楽しみつつ、せめてこのような情報発信で応援できればと思っています。

(公式)ランプライトブックスホテル

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