2023年5月15日に発表されたリゾートトラストの新中期経営計画について解説するシリーズの2回目です。前回は今後5年間の開発スケジュールを見ましたが、実は今回の計画発表には、「今後10年間の成長イメージ」も含まれていますので、今日はそれを紹介します。
こちらが発表された「長期の利益成長イメージ」の図です。現在、同社の利益はホテル関連事業が2、メディカル関連事業が1、という割合になっていますが、これをそれぞれ成長させながら10年後に1対1にするというのが会社のグランドデザインになっています。
グラフには大まかな時期が記載されていて、大きな四角が3つあり、今後3年、3年、4年くらいのスパンで達成目標が記載されています。
2023~25年度あたりの達成目標キーワード
まず最初の3年(2023年度~2025年度)あたりの達成目標キーワードは以下になります。
SAC3物件の開業
SACというのはサンクチュアリコートのことです。同社はエクシブをXIV、ベイコート倶楽部をBCCなどと3文字で表現するのですが、サンクチュアリコートは社内ではSACと呼ばれているようです。言うまでもなく、高山、琵琶湖、日光は既に発売済みです。
価格改定等収益力強化
客室料金やレストランについては昨年に値上げしたばかりなので、ここで言う価格改定とは、今後発売される会員権の価格のことを指しているのかもしれないですね。
人財、IT投資の強化
これは当たり前のことを言っているのでスルーします。
営繕投資の強化
成長を表現するスライドに「営繕」の文字があることに驚きます。既存施設への再投資について昨日の記事で話題にしましたが、同様の観点で、既存の施設に積極的に手を入れていくと会社が公言しているのは、会員にとって大きな安心感があります。新規会員権が激売れしているわけですから、投資資金の裏付けもあります。
新機軸の立ち上げ
「新機軸」とは何でしょう。別のスライドから紹介します。
こちらは「成長戦略」を説明するスライドで、事業領域(サービス領域)の拡大が示されたものです。マルに囲まれてサービス内容が書かれていますが、暖色で示された下線の引かれたサービス分野が、同社の言う「新機軸」に当たるようです。
ここではその拡大予定のサービス分野について、ひとまず列挙しておきます。
ホテル関係としては1つだけで「海外クラブ(提携)」とあります。これについては別稿で検討するつもりです。
後はすべてメディカル分野です。「レジデンス」「漢方」「プライマリーケア」「訪問看護」「治療」となっています。このサイトではメディカル分野のことはあまり書く余力がありませんが、「レジデンス」に関しては不動産案件でもあり、同社の強みがストレートに活かせる可能性があると感じますので、別稿を書くかもしれません。それと「漢方」って何?(僕は漢方には相当詳しいですよ)。
2026~28年度あたりの達成目標キーワード
次の3年(2026年度~2028年度)あたりのイメージで記載されているのは以下の語群です。
継続的な会員増加
これは当たり前のことを言っているのでスルーします。
再投資物件の販売開始
昨日の記事で紹介した、既存エクシブに再投資をするという件がここに登場してきます。以下の「建替え」とは別です。既存ホテルをリニューアルした何かを、新規会員権と位置付けるのでしょうか? どういう形態を指しているのか、興味は尽きません。
新機軸を収益化
上記で紹介した新サービスを利益が出る状況に持っていきたい、ということですね。
XIV建替えモデル始動
来ました。建替えです。「モデル始動」ですから、このくらいの時期にはオールドエクシブのどこかを建て替えるという具体的な提案がなされる可能性があります。一方で、その対象となる施設のオーナーにとっては、気が気ではない面もあるでしょう。追加投資を求められるケースもあるかもしれませんし、それにノーを出したらどうなるのか…。ウォッチャーとしては非常に楽しみです。
メディカル100億突破
これは読んで時のごとくの、明確な目標設定です。
2029~32年度あたりの達成目標キーワード
さて、この辺りになってくると、未来過ぎて時期の予告という面は薄いと思いますが、イメージとして知っておきましょう。
会員制リゾート事業のサステナブル化
ここまで登場しているキーワードをつなげてみます。同社は、既存施設への「営繕投資の強化」をし、「再投資物件の販売」をし、さらに「建替え」に着手したいとしています。
これらを総合して、古いエクシブも永続的に(サステナブルに)同社ホテルラインナップとして活躍し続けるようにしたい。それが「会員制リゾート事業のサステナブル化」である。
おそらく、誰が読んでも同社はそう言っているように読めるのではないでしょうか。これは楽しみかつ、頼もしいビジョンです。ナンバーワン企業たるもの、こうでなくてはいけません。どうやるかは、想像つきませんが…。
それにしても、これが「成長イメージ」の最後のマスの一番上に来ているのはすごくないですか? オールドエクシブのオーナーさんは、みんなこれを見て喜んでいるのではないでしょうか(その喜びや戸惑いを、ぜひコメント欄へどうぞ)。
以下のキーワードは数値目標と読んで字のごとくなので、列挙するだけにします。
会員数(口数)25万人の突破
HM会員4万2千人の突破
シニアレジデンス利用会員2千人突破
海外、新機軸の拡大
以上のように、同社はホテル事業の成長に対して、既存施設への投資について、かなり踏み込んだ議論を行って、今回の発表に臨んだように見受けられます。これは非常に画期的なことです。
これを達成することができれば、ようやく会員制によるホテル建設というビジネスが、世の中一般で、真っ当なものとして認められるようになるのではないでしょうか。
ぜひそうなってほしいですね。僕ももう少し、研究家として頑張ってみようかな、なんて思ったりしてね。今は傍流も傍流で、誰も研究してないからなぁ。
まぁ現実的には、そうやって古いお客さん(オールドエクシブのオーナー)を喜ばせるのが、他の新規会員権販売や、メディカル分野の利益向上につながるという判断があるのかもしれないですけどね。同じお客さんに多重にビジネスを展開するのが、同社が得意とする独特なスタイルですから。
というわけで、次回はその辺りの絡みについて切り込んでみることにしましょう。ついに「看取り」まで登場しました。
記事と直接関係ありませんが、告知です。
来月、6月17日(土)の午後に、六本木で本サイトのオフ会をやります。KASAの会という勉強会を以前やっていまして、それを再起動するための準備の会みたいなものです。今後、お手伝いをしていただけるスタッフ数名の募集も当日します。
もう1カ月前なので、こんな場所ですみませんが、軽く告知をさせていただきました。参加表明は別のところでしていただくつもりなので、ここのコメント欄には書かずに、今後出す告知記事に注目していてください。
もちろん、準備の会だけだと来ていただいた方に悪いので、ちょっとしたトークライブもやろうと思います。funasanにも来ていただけると思いますので、2人で何かやるかもしれません(まったく未定です)。
5月16日決算説明会の資料が(おそらく今だけ)日経新聞社のサイトで閲覧できます。RT社のホームページの資料とかなり異なります。ホンネ満載でエクシブウォッチャーにとっては宝の山です。
https://www.nikkei.com/nkd/disclosure/tdnr/20230515573101/
ノラさん、情報ありがとうございます。こりゃすごい内容だ。もう一回、この話題(建替え関係)で記事を書かないといけないです。
というわけで、メディカル系の話に行く前に、もう一本書くかな(いつ書くのよ…)。
BNCT事業へ!?
加速器どうするんだろう・・・?
ご無沙汰しています。オールドエクシブのオーナーとしてはこの話、まずは大いに喜んだのですが、よくよく考えてみると鳥羽のようなリニューアルではなく、建て替えとなると相当な負担を求められるのでは?との不安の方が大きくなってきました。旧施設をまっさらにしてプレゼントしてくれるほどの太っ腹にも思えませんし・・・
相当な金額の出費を求められ、それが嫌なら旧施設を購入時の10分の一程度の金額でRTが買取る、みたいなプランが描かれているのではないかと、うがった見方をしてしまいます。それなら、鳥羽本館のように部分的なリニューアルで、オーナーの負担なく気持ちのいいお部屋にしてくれるほうが嬉しいのですが、虫が良すぎるでしょうか。
私も、さばとら様の不安同様、そう簡単に喜んでいいのかどうか、ひっかかりました。
私の保有する施設の管理規約には、
「この規約に定めのない事項については、「建物の区分所有等に関する法律」等、関係する法律により決定する。」
と書かれており、
かつ、
管理規約には建替えに関する規定はありません。
そうすると、建替えに関しては、建物の区分所有等に関する法律第62条乃至第64条の規定に従い、
①区分所有者により、、
一 新たに建築する建物(以下この項において「再建建物」という。)の設計の概要
二 建物の取壊し及び再建建物の建築に要する費用の概算額
三 前号に規定する費用の分担に関する事項
等が決議される。
即ち、我々区分所有者に対して取り壊し、再建築の費用の分担を求められる。
②上記①の建替えに賛成・同意しなかった区分所有者は、建替えに賛成・同意した者から、区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すことの売り渡し請求権を行使される。
③上記②が行使されると、当該建替えに賛成・同意しなかった区分所有者は、区分所有権及び敷地利用権を失う。
ということになってしまうのではないかとの危惧です。
この区分所有法に基づかないオーナーに優しい建替えだとよいのですが。
建替時に旧会員が請求される金額について、私見を。
このブログの2020年12月9日「リゾート会員権の「中身」を計算してみる」という記事に、新品の会員権価格は土地代・建物代・償却保証金・登録料の4つに分けられる、とあります。
横浜ベイコートのロイヤルスイート24泊タイプ4,100万円は土地400万・建物1,600万・償却保証金400万・登録料1,700万に分けられる(概算)とあり、今回はこれをベースに考えます。
旧物件の建替えにあたり、旧会員権保有者は新物件の建物代と償却保証金を当然新たに請求されるでしょう。もちろん、建物代にはRT社の(不動産会社としての)利益が含まれます。
これらを旧会員に請求しない、となれば大サービスですが、切羽詰まった問題(建て替えについて権利者の同意を得る事に難航してやむを得ず、等)でもない限りそうはならないと思います。
また、土地代は請求できないでしょうけど、問題は登録料です。
既にエクシブの会員なので登録料は不要?新シリーズへの登録料として請求される?それとも一定額のみ負担?建て替え時の追加必要額については、ここがポイントになると考えます。登録料は横浜の場合1,700万円、新規会員権価格の1/3以上ですから。
それにしても、上記例だと建物1600万と償却保証金400万だけで2,000万円。新規発売5年後に流通し始める中古会員権価格と比べると、建替反対派には「意に沿わない追加投資額」となり、割に合わないですね。追加投資額を負担できない会員は建替時の時価で旧会員権を売却せざるを得ないとなると、不人気物件の価格はどんどん下落することになります。
旧会員権の最終価格の下落を回避するには、建替時にはRT社が旧会員権を「土地代」として一定金額で買取り、同時に希望者には期間限定のホーム施設が無い会員権を発行する事を前もって宣言する事が有効でしょう。
この買取予定額よりも時価が下がる可能性は低いですし、買取時の時価と買取価格の差額は登録料の残高に相当し、これが期間限定会員権になりました、という説明も成立しますし。また、会員数の維持→他施設稼働率アップにもつながります。
皆さんこんにちは。EF66さんには専門的な見地からのコメントをありがとうございます。
ノラさんに教えていただいた情報をもとに追加の記事を書きましたので、続きはそちらで、という感じですが、僕がそれ以前に勝手に考えていたことは、balairさんのコメントにある「ホーム施設がない会員権」みたいなものでした。
ホテルの当初の建物が建て替えによってなくなれば、会員権の権利の源泉である区分所有権も建物については失われるので、土地の分を同社に譲渡することと引き換えに(土地はいま会員権に含んでいませんので)、「エクシブ卒業会員権=フローティング専用会員権」みたいなものに転換するのが現実的ではないかなぁ、なんて。
権利消化のない利用はサンクスフェスティバルなどで公式に数多く存在するので、その範囲で利用できればいいみたいな、「エクシブフェロー」(XIV fellowship)、年会費はサンメン並みで租税公課なし、みたいなものができたらいいと、勝手に思っていました。
リゾートトラストはそのようにはぜんぜん考えていないようなので、ちょっと残念だったりしますが…。
resortboyさんがわかりやすくご紹介下さったように、会員権事業とシニアライフ・メディカル事業を主力にしようとしているリゾートトラスト社。
そんな同社だからこそ、ぜひトライしてほしいものがあります。
ケアスタッフのいる環境でリゾート滞在が楽しめるサービスです。
現実問題、(小さい子どももそうなのですが)足腰に自信のない高齢世代が旅行に行こうとすると、動ける世代の家族親族がついていかなければ厳しいのが現実です。そして、動ける世代の1人は、ケアに専従せざるを得ず、せっかく来たのにリゾートをあまり堪能できません。
これだと、高齢の会員が家族の不安を慮って「もっと行きたい」を我慢したり、会員子世代が体力的に親を頻繁に旅に連れて行けなくなったりしてしまいます。
とてももったいないことではないでしょうか。
比較的裕福な高齢層又はその家族で、「業者任せなんて冷たい」と悩んだりしないタイプの方々は、旅行に帯同してくれる介護スタッフの人件費と旅費を負担して、自由に旅を楽しんでいます。私はそのスタンスに共感しています。
これに近いサービスが、慣れ親しんだリゾートトラストにより、エクシブ等で比較的リーズナブルに提供されたら、自分が年齢を重ねたときのリゾートライフの展望がさらに明るくなりますし、新規会員の掘り起こしにもつながるように思うのです。