ホテルのストーリーに寄り添って楽しむ – アンワインド ホテル&バー(3)

ビジネスホテルが見事なリニューアルによって生まれ変わった札幌の人気ホテル「アンワインド ホテル&バー(ホテルアンワインド札幌)」についての最終回です。今回は、元ビジホというプアな設備条件を逆手に取ったストーリーメイキングを支えるフードサービス関係についてご紹介します。

(第1回の記事はこちら)冴えないビジホが札幌ナンバーワンに – アンワインド ホテル&バー(1)
(第2回の記事はこちら)メリハリの効いたホテルリニューアルの実際 – アンワインド ホテル&バー(2)

チェックイン時のウェルカムドリンクや、お部屋のミニバーなどについては、第1回目の記事で触れていますのでご覧ください。時系列的に行きますと、まずは夕方のワインサービスです。

これは毎日17時から19時の間、10階にあるバーで提供されているものです。ビジホ時代は朝食レストランだった最上階には、現在「イグニス」というバーがあって、19時30分から23時30分まで、宿泊者に限らない一般営業をしています。そのバーがオープンする前の時間帯は、宿泊客限定で無料のワインサービスが行われているというわけです。

ワインは札幌の地ワイン2種類と、スペインワインでした。順当にスペインワイン(Merinas Tempranillo)が一番美味しいと思いましたが、北海道のワインを楽しむチャンスもなかなかないので、とてもよい機会だったと思います。気に入ればお土産に買ったりできるわけで。

17時から19時にホテルにいる、というのは、決して滞在型とは言えないこのホテルでは結構難しいように思います。一度出かけてしまうと夕食どきですから、ホテルに帰ってくるのは面倒です。

ですが、このホテルを選ぶ人は違うんですね。ちゃんとこのサービスを知っていて、バーは非常に混雑していました。グループが去ったスキを狙ってこの写真を取りましたが、後はお客さんでいっぱいで、バーの全景は撮影できませんでした。

というわけで、記事末尾にある関連サイトもご覧ください。また、バー自体の評価は食べログが参考になると思います。

Bar Ignis – 中島公園/バー [食べログ]

また、このバーには珍しいルーフトップテラスがあって、シーズン中は焚き火をやっていて、それがキャンプのようなムードをさらに盛り上げてくれるんですが、何しろ冬ですので、このようにクローズしておりました。ちょっと残念。

さて、ワインでいい感じに酔っ払ったところで夕食の時間ですが、このホテルにはレストランがありません。公式サイトにはこんなふうに。いわく「夕食は札幌の街で。」

メリハリが効いていていいと思います。自分も含めて観光客なら、すすきののグルメを味わいに街に繰り出したいですからね。我々エクシブ会員は時として夕食の予約を進める営業的なトークをウザいと思うわけですが、そういうのとは対象的なポジションを取っていると。

というわけで、順当にジンギスカンを食べに行きました。生ラム最高!

すすきのにも近いよい立地ですから、有名店が徒歩圏にいくつもあります。ただし、どこに行くにもシーズンは予約必須だと思いますので、ご注意ください。

お部屋に戻る途中でコンビニに寄ってピザパンを買いました。というのも、お部屋にバルミューダのトースターがあるので、これを使ってみたかったんですね。

いや、翌朝には自動的に使うことになるんですが、小腹減ることもあるでしょ。ふんわりパリッと、美味しくいただきました。

続いて翌朝です。指定の時間(チェックイン時に選びます)になると、このようなバスケットを部屋の前に運んでくれます。

特にピンポンされたりはしないので、寝ていたければ寝ていられます。ルームサービスのようでルームサービスではない。ここはキャンプがコンセプトですから、あくまでセルフサービスです。

メインは北海道らしい地産地消のスープ。メニューはいくつかあるようでしたが、日替わりで選択はできません。スープジャーを開けるとふっと漂うお味噌の香り。この日のメニューは「味噌ミネストローネ」でした。

パンをオーブンで焼いて、コーヒーや紅茶を入れます。コーヒーは札幌のリタルコーヒーで、しかも「UNWIND BLEND」というホテルオリジナルのブレンドコーヒーでした。さりげなくこういう技を仕込んでくる、いやらしいところがとても好きです。つい、ホテルオリジナルのTシャツとか買っちゃいそうになります。

というわけで、3回にわたって、札幌のちょっと変わったホテルをご紹介しました。最後にちょっと雑感を書いて締めます。

このようなコンセプトオリエンテッドなホテルは、これからどんどん増えると思います。日本らしい「旅館ホテル」は伊東園や大江戸温泉といったグループに集約されて個性を消す方向にあり、星野リゾートはその高級版でしょう。普通のホテルはAPAや東横インに代表される無個性なビジホと、そのアッパーラインとして国際チェーンがあります。

しかし国際チェーンは少し先を行っていて、マルチブランド展開の中で、ストーリー性を込めたデザイナー系・ブティック系のホテル経営を並行して進めています。これから日本に上陸する「W」やビジホに応用した「Aloft」、それに既に上陸済みの「Moxy」などがそうです(いずれもマリオット)。

このブログを通じていろいろなホテルを見ていて思うことは、価値観の逆転です。これまでは、ホテルが主で、そこに従たる自分がいるという価値観が主流だったように思います。だからホテルは豪華な方がよかったし、そこにいる自分も素敵に思えた。ホテルは豪華さという単一の基準で一直線に並んで評価されてきた。5つ星、といった評価軸はその最たるものでしょう。

しかし今や価値観が逆転してしまって、あくまで自分が主でホテルが従。この価値観の中で、ホテルの豪華さに価値を見出さない人がたくさんいます。むしろそういう人が主流になったのかもしれない。自分が居心地がいいと思うシーンやストーリーの中に自分を置く。あくまで主体は自分で、ストーリーとともに他人からの共感を得て安心できることが大切。だから豪華さは時に逆効果になる。

そんなことを考えたりしました(別に結論めいたものはありません)。

PS.
アンワインドが小樽に2号店「UNWIND HOTEL & BAR(アンワインドホテル&バー)小樽」を出すことが決まったので、その情報です。文章は公式サイトより引用。

北海道随一のクラシックホテルを現代的感性で再生

北海道で初の外国人専用ホテルとして昭和6年(1931年)に建築された「旧越中屋ホテル」。戦時中は将校クラブとして陸軍に、戦後は米軍により接収された歴史を歩み、小樽市指定歴史的建造物、経産省「近代化産業遺産群33」にも指定された歴史的建造物が、数年の月日を経て再生。

歴史を感じる建物の情緒や建築的美観はそのままに、長らく閉館していたからこその大胆なリノベーションを経て現代的感性で表現されたブティックホテルが誕生します。ただのクラシックホテルとは違うユニークな感性の世界観を是非ご体験ください。

開業は3月下旬だそうです。

(エクスペディア)アンワインドホテル&バー(公式サイト)HOTEL UNWIND SAPPORO | ホテルアンワインド札幌

4 comments

  1. 3回に渡って興味深いホテルを詳しくご紹介くださり、ありがとうございました。
    このコンセプトは素晴らしいと思いますし、泊まってみたいと思います。
    私は小樽が好きですので、小樽のアンワインドに大変興味があります。
    札幌のキャンプ風朝食もいいですが、小樽のモーニングハイティーもそそられます。
    宿泊料もリーズナブルですし、次回小樽に行く際にはアンワインドにします。
    ご紹介ありがとうございました。

  2. 冴えないホテルが、自分の欠点を嘆いているのではなく、それをそれと押さえながら、 新しい 自分ならではの価値・ストーリーを生み出し、お客をワクワク 喜ばせていく!ーーー すごい、面白い ですね❣️

    これからの日本にとっても、そして 私たち個々人にとっても この視点はとても重要ですね❣️

    3回の連載記事 大きな学びと刺激になりました(*^^*)。

    ありがとうございます❣️

  3. このホテルを運営しているグローバルエージェンツ社はインバウンド需要を見越して投資を行ってきたと思われますから、現状ではかなり苦境に面しているはずです。

    しかし、「危機」を「クライシス」と「チャンス」に分けて考えて、果敢に新しい策を打ち出しているところはえらいと思います。

    例えば、

    1)システム投資をしてチェックイン・アウトなどの手続きをすべてオンライン化(発表資料
    2)ベッドを取り払うなど、積極的なリモートオフィスへの転換(発表資料
    3)前売り券とECサイトを活用して、資金繰りを改善し、来訪なしでの顧客体験を創造(発表資料

    運営ホテルの価格もかなり安くなっているし、実はずっと利用機会を狙っているのですが、他のホテルを利用するのに忙しくてまだ行けていません。しかし、上記のように、宿泊業のDXを積極的に進めている企業としてとても注目しているところです。

  4. 「危機」をクライシスとチャンスに分けて踏まえて、新しい策を出し、実行していく! すごいことです!

    この混乱・端境期に それを冷静に分析されている resortboyさんも 素晴らしいです!

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