「完全会員制」の理想と現実

今日、2024年3月25日に、リゾートトラストの新しいリゾート会員権ブランド「サンクチュアリコート」の第一弾施設、「サンクチュアリコート高山アートギャラリーリゾート」が開業しました。

モナークバー

リゾートトラストの社内通称にならって、以下ではSAC高山と呼ぶことにします(自分はあまり好きな表記ではありませんが、「サンクチュアリコート高山」というのはいかにも長いので)。

最初にお断りですが(見ればわかりますが)、冒頭の写真はSAC高山ではなく、ラグーナベイコート倶楽部のメンバーズバー「モナークバー」の入口部分です。

モナークバーとは、かつて東京ベイコート倶楽部が、単独の社交クラブ志向のリゾート会員権として開発された際に設けられたもので、ベイコート倶楽部のメンバー(及び同伴者)でなければ利用することができないホテルバーです。

いつの間にか現在のリゾートトラストの会員権では、その枕詞として「完全会員制」という言葉が使われるようになりました。それは東京ベイコート倶楽部が目指したものだったわけですが、その夢は破れ、いつしかコンセプトだけが残りました。

東京ベイコート倶楽部はスーパーエクシブとなって難局を乗り切りますが、その後の芦屋と蒲郡(ラグーナ)ではモナークバーが作られ、当初目指した姿は形式上、維持されました。しかし、一般ホテルと相乗りした横浜(横浜ベイコート倶楽部は一般ホテルのザ・カハラ・ホテル&リゾート横浜とパブリック部分を共用)ではモナークバーは廃止となりました。

「完全会員制」の旗

続くサンクチュアリコートでも「完全会員制」の旗は掲げられ続け、同会員権のホームページにもそのことがうたわれています。以下に引用します。

サンクチュアリコートは、完全会員制のホテルです。メンバー様とそのゲストの方以外、入ることはできないゲートを設置。極上のプライバシーが約束されます。

公式 - サンクチュアリコート|SANCTUARYCOURT|リゾートトラスト株式会社

しかし今日、リゾートトラストはこの新規開業ホテルの枕詞として「完全会員制」のワードを使うことをやめました。報道発表資料のタイトルは「当社初のホテルとアートギャラリーが融合した会員制リゾート「サンクチュアリコート高山 アートギャラリーリゾート」開業のお知らせ」でした。

当社初のホテルとアートギャラリーが融合した会員制リゾート「サンクチュアリコート高山 アートギャラリーリゾート」開業のお知らせ | リゾートトラスト株式会社のプレスリリース

ちなみに、横浜ではこうでした。「完全会員制リゾート「横浜ベイコート倶楽部 ホテル&スパリゾート」9月23日開業のお知らせ」

館内に一般美術館

理由は、館内に一般に開放する美術館を作ってしまった(物件取得の行きがかり上、作らざるをえなかった)、ことが大きいのではないでしょうか。

SAC高山のホームページから、以下の360度ビューのサイトにリンクが貼られています。エントランスと美術館ロビーのリンクを以下に掲載します。

[サンクチュアリコート高山|エントランス]
[サンクチュアリコート高山|美術館ロビー]

これを見るとわかりますが、入口を入って左右に廊下があり、片方はレセプション、片方は美術館ロビーにつながっています。サンクチュアリコートは館内に入るためのゲートが入口の外にあります。一般の美術館訪問者はどうするのでしょう。入場用に別の地下道などが作られているのかもしれませんが、ともあれ、現状公開されている上記データを見る限り、これらの空間はつながっています。

美術館部分、つまり飛騨高山美術館のホームページには、普通にSAC高山のゲート画像が掲載されています(それしかなかったのかもしれませんが)。そして、禁止事項として、以下のようなことが書いてあります。

以下の行為は禁止しております
(中略)
ご宿泊者以外のホテルエリアへのお立ち入り
※レストラン、ブティック、お手洗いをご利用のお客様はスタッフにお声掛けください。

飛驒高山美術館 Hida Takayama Museum of Art

なんと、美術館にはトイレがないのでした。スタッフに声掛けをしたうえで、SAC高山のトイレが観光客に使われることになります。ショップやレストランも一般利用できるようですので、現実的には誰でも入れるホテルということになります。美術館に行ったら、記念品を買うのは普通ですからね。

美術館利用にドレスコード

かつて東京ベイコート倶楽部では、OZIO(イタリアンレストラン)の入口だけメインゲートとは別の場所に作り、「完全会員制」を名実ともに実現しようとしました。しかしその後、モナークバーは維持されたものの後続のベイコート倶楽部ではレストランの外来利用もOKとなり、横浜ではモナークバーを廃止した上に多くの部分を一般ホテルと共用にしました。

飛騨高山はインバウンド客も多い観光地です。そこでパブリックな美術館を会員制ホテルと同居させるのは、一般客と宿泊客で美術館の利用時間を分けるだけでなく、別棟にしない限り無理なことではなかったかなと。

その苦しい感じが、以下に現れています。この美術館ではドレスコードが設定されたのです。

ドレスコードについて
お客様の館内ご利用にあたりドレスコードを設けており、カジュアルな服装(タンクトップ、ハーフパンツ、ビーチサンダル等、肌の露出が多い服装)でのご入館はお断りしております。

飛驒高山美術館 Hida Takayama Museum of Art

サンクチュアリコートでは完全会員制をうたって販売が進められてきましたが、結局のところ、それを部分的に放棄して開業し、今日の発表資料からは「完全」の文字が外されることになりました。

そして、最新会員権であるにも関わらず、同社はホテルブランドとしてサンクチュアリコートよりもベイコート倶楽部を上位と位置づけました(これは琵琶湖が開業すると変わるかもしれないですね。琵琶湖の施設はすごいので)。

総合案内|リゾートトラストグループ サービスサイト

というわけで、物語の1行目から、いろいろと不思議な感じがした、今日の報道発表でした。

2 comments

  1. モナークバー
    家族にとって大切なスペースとなっています。
    以前、営業の方からサンクチュアリーコート琵琶湖をロイヤルにバージョンアップしませんかと案内がありました。ロイヤルが使用できるのならと少し気持ちが動きましたが、
    モナークバーの利用条件の確認をしましたら、当時サンクチュアリーコートではモナークバーができるかわからない、また、相互利用についても決まっていないと言われた。
    今となってはバージョンアップしなくてよかったです。
    あとからバージョンアップされた方が、芦屋モナークバーの利用ができないことを伝えられトラブルになりかけたと聞いています。
    今もサンクチュアリーコート会員はモナークバーは使用できないと思います。宿泊時は必ずモナークバーは利用します。利用客も少なく、家族にとっては落ち着く場所となっています。東京、ラグーナ、芦屋すべてよい空間となっています。

  2. うららさん、コメントありがとうございます。

    高山の開業で、サンクチュアリコートの位置づけがようやく明確になりました。ベイコート倶楽部の発展型ではなく、むしろ格下であり、それを裏付け象徴するものがモナークバー、ということになりましたね。

    サンクチュアリコートは「完全会員制」を名乗ることを諦めざるを得ないのは、法人中心の営業活動からも明らかでした。発表資料で「完全」を削除したのだから、早く公式ホームページからも、この間違った表現を削除すべきですね。

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