年会費って何のため? – 3

連載の3回目です。初回では東京ベイコート倶楽部、2回目ではエクシブ箱根離宮の契約書を見ながら、このほど2025年からの値上げが発表された「運営管理費」、いわゆる年会費について、その内容を検討してきました。ここまでで、年会費とはホテルチェーン全体や都度の客室利用とは関係がなく、会員が所有する契約施設の維持に使われることを確認しました。

(番組の途中ですが告知です。3月30日にオフ会を5年ぶりに名古屋で開催します。東海地方の方、この機会に是非ご参加ください)

[募集中] 3月30日名古屋オフ#2 – 達人に学ぶクルーズ旅の極意

同時に、これらリゾートトラストの共有制リゾート会員権において、年会費がマンションにおける管理費と類似したものとして定義されていることから、今回の値上げについての問題点を指摘しました。またその背景として、リゾートトラストがかつてマンションデベロッパーであったことを挙げました。

今回は八瀬離宮を舞台に

今回はさらに解像度を上げ、管理費がどのように使われているのかを「物件の維持管理・運営に関する報告の件」なる、会員への告知メッセージから紐解いてみたいと思います。前回の記事のコメント欄で、ちょうどこの話題について、エクシブ八瀬離宮の具体的なデータを教えていただきましたので、今回は八瀬離宮を舞台にお送りします。

連載1回目はこちらです。舞台は東京ベイコート倶楽部。写真は窓拭きの様子ですが、このような共用部分の清掃は年会費でまかなわれます。

年会費って何のため? – 1

連載2回目はこちら。エクシブ箱根離宮の日本料理レストランエントランスです。こちらは分譲していない売主専有部分ですので、年会費で清掃されることはありません。

年会費って何のため? – 2

今回の記事のトップ写真は、エクシブ京都八瀬離宮のロビーエントランスです。ここはホテルとしては共有部分ということになり、年会費で清掃することになるのでしょう。

物件の維持管理・運営に関する報告の件

さて、皆さんはこの見出しに挙げた「物件の維持管理・運営に関する報告の件」という文書を見たことがあるでしょうか? かつてはワンダーネットにログインするとひっそりとこの文書が存在しており、また現在においては、RTTGアプリのマイページのメッセージ機能を使って、全会員に告知されているのではないかと思われます。

PCですと、以下のリンクになります。どうぞログインして、ご自身への告知をご確認ください。

Resorttrust | MY PAGE

ログインすると、右上に封筒のアイコンがあり、その中にメッセージとして「物件の維持管理・運営に関する報告の件」が送信されているのではないかと思います。というか、案内もなしにこんなところにこっそり重要文書が置かれていることには、会員としてとても嫌な感じがします。

以下、いただいた情報からエクシブ八瀬離宮の事例としてご紹介します。

【エクシブ京都八瀬離宮】物件の維持管理・運営に関する報告の件(2022年1月1日から2022年12月31日まで)

エクシブ京都八瀬離宮につきましては、当社と各オーナー様との間の契約等(不動産売買契約、施設相互利用契約及び管理規約)に基づき、当社が各オーナー様よりその運営・管理を直接受託させていただいており、運営管理費等も直接収受しております。

エクシブ京都八瀬離宮の運営・管理業務は各オーナー様から直接受託した当社が行っているため、エクシブ京都八瀬離宮管理組合自身は特に具体的な活動を行っておりません。そのため、エクシブ京都八瀬離宮管理組合の活動内容としてご報告すべき事項はなく、また、エクシブ京都八瀬離宮管理組合の収入及び支出はともにございません。

当社が各オーナー様から直接の委託を受けて実施しておりますエクシブ京都八瀬離宮の運営・管理業務の主な内容は末尾表のとおりですが、以下ではその概要も含め運営・管理業務の遂行状況についてご報告させていただきます。

(以下省略)

運営管理費は誰のもの?

この報告書(実際はアプリ内メッセージ)の文言より、以下のようなことがわかります。

最初の文で「当社が各オーナー様よりその運営・管理を直接受託させていただいており、運営管理費等も直接収受しております」とあり、続く部分でも「運営・管理業務は各オーナー様から直接受託した当社が行っている」、「当社が各オーナー様から直接の委託を受けて実施」などと、繰り返されています。

同社の年会費(正式名は運営管理費)は、区分所有者(エクシブの場合「各オーナー様」)から「直接」「委託されて」同社が収受していると、何度も書かれているわけです。

なぜ「直接」「委託されて」と、受動的な説明になっているのでしょう。理由は、同様に繰り返し登場する「管理組合」という言葉にありそうです。

区分所有法に基づき、管理組合は自動的に形成されます。つまり、エクシブやベイコート倶楽部を購入し、区分所有者になった時点で、自動的に管理組合の組合員となります。管理組合の存在を法律上否定できませんから、その存在を認めつつ、実際には組合員から「直接」収受しているという説明になっています。

このようにリゾートトラストは、区分所有法に基づいた契約を結んでリゾート会員権を販売し、かつ上記のように管理組合の存在も認識しています。つまり同社は、オーナーの集合体である管理組合から管理を委託された管理会社であることを自認しているようです。

この同社の説明の文脈においては、当然に「運営管理費は管理組合のもの」になりますし、運営・管理のために支出した後に剰余金があれば、それは管理組合(=区分所有者の総体、つまり会員それぞれ)に帰属します。

細かく議論できませんが、このように運営・管理を委託されたと自認するリゾートトラストには、受任者としてさまざまな法律上の義務があります。はたして同社は合法的に該当の業務を遂行しているのでしょうか。

13 comments

  1. 皆さん、こんにちは。

    やはりここにお集まりの皆さんは、「この程度の値上げは問題ない」「細かな契約内容は知りたくない(どうでもいい)」と、お考えでいらっしゃるでしょうか?

    そういう感じでありましたらば、この連載を続けるのは、他の話題を取り上げる機会を奪うことになるので、予定を切り上げて、早期に中断しようと思います。

    あまりはっきりしたことは書けませんが、いま起こっていることは、リゾート会員権という商品の根幹を揺るがす大問題であると僕は認識しており、これまでの値上げとは根本的に意味合いが違うと、考えている次第です。やんわり書いてるために伝わっていないのであれば、筆力の不足をお詫びします。

  2. Resortboy さまこんにちは。年会費についての連載を読みましたが今まで気づかなかったことが多くて咀嚼中です。まず東急HVCとの違いについて。「区分所有物件なので管理組合は自動的に結成される」なるほど法律はそうなっているのですね。HVCの場合会員は管理組合が存在するのかどうかも知りません。東急に払う年会費については使途や決算報告を受けたことはありません。他方営繕積立金については毎年使途と使用金額が報告されており積立金が不足した場合は追加で徴収されます。客室の修繕補修やテレビの交換、温泉施設の機材交換や玄関敷石の補修などが項目に上がっています。私もエクシブ契約施設のお知らせを確認してみましたがHVCでは営繕積立金から支出される駐車場の照明LED化とか中央監視板の交換などが運営管理費として年会費から支出されているのを知りました。両者の違いの意味などどう位置付けていいのか考え中です。

  3. Resortboy さま

    この問題は、「値上額がたいしたことがないからかまわない。」という問題ではなく、契約、規約、法律を正しく運用しているのかどうかという重要な問題だと思います。

    これまで、私は本件に関する契約書、規約なんて、ろくに読みもしなかったです。
    Resortboy さまがこの問題を提起してくれたからこそ、改めてこれらを読みましたし、
    RTTGアプリのマイページのメッセージに「物件の維持管理・運営に関する報告の件」
    が掲載されているのを知った次第です。

    このブログを読んでいる他の方々も同じではないでしょうか。

    しばらくこの問題について掘り下げていく必要はあると思います。
    この問題を提起してくれたResortboy さまに感謝します。

    因みに「建物の区分所有等に関する法律」第3条は「区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。」
    となっています。

  4. ここでの議論を興味深く読ませて貰っています。
    私は、今手放してしまったものも含めてWTS,東急ハーベスト、HGVC,エクシブを使ってきましたが、エクシブの管理費は安いという印象です。
    これらのうち、東急ハーベストは、営繕充当金があって、これは、建物の計画修繕のための積立金で、各施設ともに開業15年後以降は5年に1度のタイミングで修繕費用を積立てており、5年毎に20万円~30万円と結構高く負担です。
    HGVCの管理費は、ハワイは税金が高いこともあって高いです。ワイキキの物件の高いものは年約6000ドルです(エクシブと違って使っても使用料はありません。宿泊税は掛かります)。ラスベガスのHGVCの物件は大改修の時にマンションのように負担金を求めた実例があります。
    このようなことと比較するとエクシブの管理費は極めて安いという印象です(適正・適法という意味ではないです)。
    下衆の勘ぐりですが、ここは、新規の権利の売却で多額の利益を上げる一方で、古い物件の管理にいい加減にも用しているので、修繕積み立て費がなく、結果として安いのかな、と思っています。
    パンドラの箱を開けて何が出てくるか。
    なお、建物の区分所有等に関する法律第3条は、区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。となっていて、管理組合を置かないことは自由だと思います。マンショで管理組合がないところは多数あります。
    なお、上記とは別に、値上げの通知が手紙だけは問題であることはその通りです。

  5. 更に蛇足ですが、
    東急ハーベストは電子レンジがあり、食品持ち込みは自由。
    HGVCはフルキッチンがあり、飲食サービスがまったくないところもある。
    エクシブは、食品持ち込みは原則ダメで、なかで飲食をすることを前提にしている。
    レストランの利益があるところは管理費が安く、ないところはきっちり管理費を取る、という構図になっているように思います。

  6. resortboyさん

    ノラさんがおっしゃっているように、皆さん咀嚼中なのではないでしょうか?タイムシェアの様な会員制のサービスに於いては当たり前のように年会費が発生します。何処にどのように使われるかは、RT社に全幅の信頼をおいた上で、皆さん支払っているのではないでしょうか??私は会員でもないしがない傍観者の一人ですが、resortboyさんがおっしゃるように、本件はTrustの根幹を揺るがす大きな問題です。法に則り、健全に運営できているのか。
    議論が湧くことに期待しております。

  7. resortboyさま

    確かにHGVC38さまのおっしゃるとおり、管理組合の形成は、任意です。

    ただ、管理組合が形成されずとも、法第31条は、規約の改正には集会の決議が必要としています。

    従って、仮に「運営管理費」の定めが規約の一部であるなれば、同条の適用を受けるのだと思います。

    そして、管理組合があろうとなかろうと、運営管理費が当該施設(共用部分)の維持管理のための費用であるならば、剰余金は、区分所有者の共有になるのだと思います。

    そうすると、結局は運営管理費の性質、内容が問題となるのではないでしょうか。

    それと、管理の委託を受けたリゾートトラストは商人です(会社法第5条)。
    商人の場合、特約がなくとも報酬請求権があります(商法第512条)。
    ですから、受任者として、運営管理費の一部は報酬として受け取る権利はあるのではないでしょうか。
    尤も、その報酬額が社会通念上相当かどうかは法理論としては、検討の余地があるところなのかもしれません。

    すみません、専門家でないにもかかわらず、出過ぎた発言をしてしまいました。

    ここは、区分所有法に詳しい法曹の方にお聞きしたいと思います。

    よろしくお願いします。

    区分所有法
    第31条 規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によつてする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。

    会社法
    第5条  会社(外国会社を含む。次条第1項、第8条及び第9条において同じ。)がその事業としてする行為及びその事業のためにする行為は、商行為とする。

    商法
    第4条 この法律において「商人」とは、自己の名をもって商行為をすることを業とする者をいう。
    第512条 商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる。

  8. resortboyさん

    自分にとって未知の分野の深い話、咀嚼中+確定申告で頭がいっぱいでした。
    1〜3と回を追う毎にresortboyさんの危機感が盛り上がりを見せており、どこに着地するのかな?と興味を持って拝読しております。特に法律面において。

    会計分野の話をすると、個人的には事後検証される可能性が無い公表数値は信頼性が低いと考えており、自分にその分野(修繕費の適正価格等)の知見が無いため思考停止に陥っている観があります。

  9. resortboyさん

    こんばんは
    非常に有意義な議論の提供をありがとうございます。私も箱根離宮の契約書を読み返してみました。
    ところでこの議論に入っていく前に、まず一つ確認させてください。
    甚だ勉強不足で恐縮ですが、同施設契約書施設相互利用契約約款第22条第二項のある規定いついて、これをどのような解釈をしたらいいのでしょうか?
    文言通り解釈すれば、リゾートトラストは、独断で運営管理費等を変更することができる(合理的な金額の範囲内においては当然として。)と読めますが、resortboyさんは、そうではないというお考えでしょうか。

  10. ののです。
    HGVC38様の仰るとおり、エクシブの管理費は、HVCと比較して極めて安いと感じています。恐らく色々な工夫をされてこの価格に留めているのでしょう。その曖昧さこそがRTの魅力であり、厳密さを追及することは、会員の利益をもたらすことにならないと危惧しています。
    HVCも郵便のみで年会費、営繕積立金の値上げを通知してきます。
    1年の猶予を持って通知してきたRTの進め方に、私は違和感はありません。

    パンドラの箱はお開けにならないことが肝要かと存じます。

  11. 皆さん、週末にも関わらず、多くのコメントをありがとうございました。EF66さん、HGVC38さんには、僕の認識不足や誤解している部分について、専門的な見地から正していただき、感謝しております。

    他のスレッドでもご意見がありましたが、ののさんのご意見は僕も懸念してきたところでして、公開議論は難しく、勉強会などで専門家の方に僕が質問しながら読み解いていく、というようなことをイメージしてきました。

    今回の、個別契約に基づく年会費値上げの話は、今後も一連のコメント欄でご意見等をお願いできればと思いますが、僕が契約内容について公開の場での議論の司会をして、「パンドラの箱を開ける」ことがないようにしたいと思います。

    最後に、masaさんのご質問にお答えしますと、実はこの連載ではまだ「施設相互利用契約」については検討していないのです。

    「管理規約」に書かれている年会費の規程についてご紹介してきましたが、この管理規約は区分所有者相互間の権利義務を定めたものであって、運営管理費(年会費)は、区分所有者が管理組合に支払うものだと解釈しています。一方、相互利用契約の「甲乙は…」というリゾートトラストとオーナーの間の関係について定められていて、この2つの契約は、僕のような素人が読んでも、当事者の関係がまったく異なっています。

    というわけで、後はパンドラの箱を開けないように、オフ会でお話しいたしましょう。

    連載自体は、別の切り口から継続したいと思います。

  12. エクシブには、区分所有者が結成した管理組合は存在しません。管理組合の規定や総会についての通知がありません。HGVCは、管理組合の総会の通知が来ます。各所有者が、管理業者に個別の契約して言われるがままに管理費を払っているだけです。私の解釈ですが。
    管理組合を新規に結成し、管理業者を変更することは、法律上は可能であるともわれます。ハワイのコンドテルでは前例があるかもしれません。これは、うまくいくとは思われませんし、もちろん相互利用は出来なくなります。
    HVCが必ず何室か所有しているのはこの視点があると思っています。日本にもあったダイアモンドリゾートは、HGVCが買収しました。いきなりHGVCになったりしたら面白いでは済まないですが・・・。ハワイと交換出来ますね。オーランドも。

  13. 本来は記事本文に記載すべきでしたが、漏れておりましたので、コメント欄にて補足します。

    以下は最新の会報誌「MyResort VOL.128」に掲載の、「区分所有者集会」の報告です(2023年12月4日発行)。

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